被災地・福島に新たな産業の基盤としてロボット・ドローンを導入

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(3月11日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。
東日本大震災から、2019年3月11日で8年が経過する。飯田浩司アナウンサーが福島ロボットテストフィールドを取材し、施設に携わる方々のインタビューなどを交えてリポートした。

福島の新しい取り組み~福島ロボットテストフィールド

本日2019年3月11日、東日本大震災から8年が経過する。福島の新しい取り組みの1つ、福島ロボットテストフィールドを飯田浩司が取材した。ドローンや無人の航空機、災害探査ロボットなどの研究開発、実証実験が行える施設である。福島県はここを新たな産業の基盤として、最先端技術の開発拠点を目指している。

飯田)福島原子力災害からも8年ということになり、私が取材した福島の新しい取り組みをリポートします。いま南相馬や浪江でも一部建設が進められている、福島ロボットテストフィールドについてです。インフラ点検や物流、大規模災害などにも活躍が期待されるドローン。無人の航空機や災害探査ロボット、水中探査ロボットなどの研究開発、実証実験ができる施設が、この福島ロボットテストフィールドです。
何と言っても広くて、50ヘクタール。東京ドーム10個分以上という広大な敷地に、ドローン専用の滑走路や、大きな水槽に家ごと沈められる設備もあって、水害のときに使える水中ロボットの実験もできるそうです。他にも、市街地、トンネル、橋なども作っている最中ということで、福島県はここを新たな産業の基盤として最先端技術の開発拠点を目指しています。試験用プラントの活用はすでに始まっており、私は3月2日・3日に取材に行きましたが、いろいろと実験が行われていました。地元の会津大学 復興支援センター准教授・中村啓太さんの実験グループにインタビューし、どんなことをやろうとしているのか伺って来ました。

被災地・福島に新たな産業の基盤としてロボット・ドローンを導入

建設工事が進む「福島ロボットテストフィールド」。右奥は住宅地=2019年3月1日、福島県南相馬市 写真提供:共同通信社

中村啓太氏インタビュー~大学内や工場では難しい実験が可能に

会津大学復興支援センター准教授・中村啓太)ここでは、模擬プラントのなかでロボットが実際に利用できるかどうかのチェックや、もしできなかったとしても、それをどう改良するかということを調査する実験を行っております。こちらはクローラー型のロボットで、2018年10月に『ワールドロボットサミット2018』という大会がありまして、実際にそこで使われたシステムが動くかどうかのチェックを行っております。

飯田)パソコンがくっついていて、キャタピラがたくさんありますね。

中村)そうですね。こちらのコントロールはプレイステーションのコントローラーがあるのですが、この命令を制御用のパソコンに動かして、実際にロボットが動くかどうかを実験しています。

飯田)これは、ある程度の段差も…。

中村)そうですね、階段も上ることができます。例えばこのプラントで使われている階段は割と急な場所ですので、ここをロボットが動けるかどうかなどをやっております。

飯田)会津大学は地元福島県の大学で、1993年に設立された日本初のコンピューター専門大学です。プログラミング技術や情報システムについて専門的に学べるところですが、加えてロボット研究もいろいろと行っています。ただ、大学のなかでロボットを動かすのは非常に難しい。
端的な例として、階段があります。実際このロボットはキャタピラみたいな小さいものがついていて、段差を上ったり下りたりできるようになっています。でも大学の階段で実験させてくれとお願いしたら、「それをやると階段が壊れるかもしれないだろう」と言われてしまった。特に階段の先端はゴムのようなものがついていますよね。あれをひょっとしたらキャタピラの部分が壊すかもしれない、税金で建っている大学でそんなことをさせられないと言われたそうです。工場の現場などで実験をしたくても、工場を止めるわけにはいかないのでなかなかできない。だからこういうところは非常に役に立つのだという話をされていました。

被災地・福島に新たな産業の基盤としてロボット・ドローンを導入

「福島ロボットテストフィールド」で行われたドローンの実証実験=2019年3月1日、福島県南相馬市 写真提供:共同通信社

北島明文氏インタビュー~住民の理解が高く熱心な福島

飯田)それ以外にも、もともと福島の浜通りでいろいろなことをやっていたそうです。震災以降ですが、長距離でドローンを飛ばすことをテストフィールドができる前からやっていた。ドローンを飛ばすには、上空を通過する土地の持ち主から了解を貰わないといけない。だから都心ではほとんどできないのですよね。これを1つ1つ持ち主に了承をとって、理解を得て行った。最初は3ヵ月くらい手続きにかかったそうですが、すでに活用開始から180件を越えるドローンの飛行テストを行っているそうです。
しかし地元に住む方にとって、ドローンなどは得体の知れないものですよね。自分の住んでいる町でそういった実験が行われていることに対して、地元の方はどう感じているのか、ロボットテストフィールドを所管する福島県ロボット産業推進室室長・北島明文さんにお話を伺いました。

ロボット産業推進室室長・北島明文)住民の方が、「新しいことにチャレンジして行かないと、土地の真の復興には至らない」という思いを根本に持っていらっしゃる方が多いので、非常に協力的です。「こういうことをやるのだったらあそこの方がいいんじゃないか」と逆に提案をいただいたり、「もっとこういうことをやったらいいじゃないか」という、無茶ぶりのような提案をしていただける熱心な方も多いです。もともとの理解の高さと、これまでの経験の積み重ねが相まって、広域飛行区域というものはドローンの試験を円滑に設定しやすい、かつ安全性も保障されているというエリアになっています。

飯田)すでに南相馬と浪江の郵便局の間では、国内初の目視外飛行によって荷物の搬送が定期的に行われています。およそ9kmの距離をドローンが荷物を運びながら飛んで行くということもやっていて、都心では絶対にできないことですよね。ロボットやドローンを核にして、福島を盛り上げようと様々な取り組みを行っているわけです。

被災地・福島に新たな産業の基盤としてロボット・ドローンを導入

復興支援イベント「ゆめあかり3・11」が開かれ、優しい明かりに包まれた会場ではステージで歌や楽器の演奏が披露され、訪れた人の心を和ませた=2019年3月9日 写真提供:産経新聞社

新しい福島のイメージをつくる

飯田)2020年の夏には、福島県で『ワールドロボットサミット』という世界中の技術者を集めたロボット競技大会が行われます。ロボットやドローンに関する企業、研究者の間では、すでに福島と言うと被災地ではなく研究できるところ、いろいろと自由にできるところだと。イメージを変えることで、いろいろな人を呼び込めるのではないかという取り組みをしています。ロボット産業推進室長の北島明文さんは、今後の展望についてこう語っていらっしゃいました。

ロボット産業推進室室長・北島明文)震災以降、南相馬と浪江に新しく事業所、何かしらの拠点を構えてロボットの研究開発をやっているという企業さんは、私が知る限りで14社あります。ですから、この地域はそれほど大きな自治体があるわけではありませんが、そこに14社も新興のロボット研究開発事業所が集まっているのは、いい意味ですごく異常事態だと思っています。ですから、ロボットの制度をここで作る、試験が多く行われる、その結果何割かの企業さんはここで腰を落ち着けてみようかなと思う。そうすると、ロボットやドローンの産業集積にも繋がるのだと思っております。テストフィールドは災害対応のための社会的貢献も大事なのですけれども、産業集積もやって行く。これも非常に重要なテーマでありまして、ここが制度のハブ(中心)になって行くことで集積が生まれるという未来を目指しています。

飯田)地元の雇用が生まれるとか、そこまで行くのはまだ先の話かもしれないですけれど、種を撒かないことには何も育たず、雇用にもつながって行きません。ロボットについては1つの例で、これ以外にも風力発電や太陽光、水素を使った新しい事業など、福島はいろいろなことにチャレンジしています。
どちらかと言うと復興はまだまだ道半ば、後ろ向きという報道が多いなか、こういった明るい取り組みもやっていて、福島は元気だということを伝えて行きたいと思っております。新しい福島像がこれからどんどん大きくなって行く、それを私も願っております。

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