イタリアが参加~進めながら変化している中国の一帯一路
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月25日放送)にジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰が出演。中国の一帯一路について解説した。
イタリア、G7で初めて中国と一帯一路参加の覚書を締結
ヨーロッパ訪問中の中国の習近平国家主席は23日、イタリアのコンテ首相と会談し、習氏が提唱する一帯一路に関する覚書を締結した。G7主要7ヵ国が一帯一路に参加するのは初めてで、中国はEUの経済大国イタリアを抱き込むことでアメリカ主導の対中包囲網を突き崩す狙いがあると見られている。
飯田)ヨーロッパの国々、G7では初めてなのですが、EU加盟国だと既にけっこう加盟しているみたいですね。
富阪)特に先進国で無い国は、これに対して期待するものが大きいですね。結局物流から、ものを動かして活性化させようということで、浙江省の義烏から貨物列車を走らせているのですけれども、通り道になっているあたりは小ロットの貿易で随分動いていますから。何か向こうで騒ぎがあるから、皆それに乗ろうという感じで来ていますね。
実はどの国も一帯一路の正体は見えていないと思うのですよ。“一帯一路イニシアティブ”という言い方を中国はするのですが、構想ですから。「どこになったら成功」というものではない。「今後この辺りが経済発展するのではないのか」と皆で火を点けて、火が点けばそれで成功ということになります。
飯田)警戒心を露わに見る人は、お金を貸し込んで開発はさせるのだけれど、結局お金を払えなくなるからそれを借金のかたで持って行くのではないかとも言われます。
やりながら修正して行くのが中国のやり方
富阪)実際にそういうケースはありますよね。ただ中国はグーグル翻訳とよく言われていて、最初に入れると酷い翻訳が出てく来るのですけれど、しばらくしてやるとレベルアップしているところがある。
飯田)グーグル翻訳、精度が段々変わりますね。
富阪)最初は酷いと思っていたものが、数年経つと変わる修正力があるのですね。2018年の夏くらいには、中国・アフリカ会議という協力会議をやっているのですが、そこでは貸し込みではなく完全に援助に変えているのですよ。貸し込みはダメだということを見極めて修正して来ている。そしてこれも完成されたものでは無く、一帯一路はやりながら変えて行く。これは中国式ビジネスによく出て来るパターンで、はっきり言って手探りです。
目的は中国が自国の外側に1つ大きな成長エンジンを作りたいということです。例えば、アメリカ経済が成熟したときに中国という外のエンジンがあった。日本もそうだったように、いわゆる一定の成熟した経済が外に求めるものと一緒です。中国ほどの大きい体を支えてくれるエンジンとなると、一帯一路くらいのものになるという発想なのです。そこは受け入れ国との関係が上手く行っていないと難しい。だから2015年くらいから、中国は顕著に外の状況を整えています。南シナ海でいま喧嘩している国は無いですよね。
飯田)フィリピンとの間も突き崩して来たし。
富阪)インドとの間も一瞬、国境紛争が起きましたけれど、短期間の間に収束させましたよね。昔だったら有り得ないことです。日本との関係も良好になって来て、北朝鮮との関係も良くしている。全方位でそれをやろうとしているわけです。中国はいつの間にか変わっている。そういう意味で、イタリアを突き崩すという1つの方向性を持ってやっていることで、どんどん伸びて来る。一帯一路は日本では政治的に見られることが多いのですけれど、経済的なつながりなのです。EUは理念から結び付いていろいろな協定を結んで広げて行きましたが、中国の発想はまずものを通してしまえと。ものを通したら儲かる人が出て来る、儲かる人が出て来たら自然と障壁になっているものが無くなって行くでしょうと言うことです。実は各国の通関手続きは、一帯一路締結から50%くらい時間が削減されているのですよ。そのように先にものを通して、儲ける人を出してしまえという発想なのです。
飯田)一時期、日本との関係でも政冷経熱と言われたこともありましたが、それでいいと。まずは経済を熱するところからやってしまえというのが中国の発想。
富阪)そうですね。だから日本とも明確に関係を変えている。立ち止まって考えて貰うと分かると思うのですが、いま憲法改正の議論や、空母いずもの存在などがあって、10年前の中国だったら反日デモをやっていたと思います。
飯田)なるほど。確かにそのネタには絶対になっていましたよね。
富阪)しかも政府も一言も文句を言っていないですよね。これが知らない間に起きている変化なのですよ。
自分たちにエネルギーをくれる外のエンジンが欲しい中国
飯田)これまで一帯一路と言いながら、領土的な野心があるのではないか、と言われていたではないですか。ここも変わって来たのですか?
富阪)領土的野心はあまり考えていないと思います。それよりもただ単に利益を確保したい。国内経済が成熟して頭打ちになって行かざるを得ないので、そういう意味で言うとまだまだ利益をもたらしてくれる地域が足りないので、自分たちが行き詰った後にエネルギーをくれる若い地域が必要なわけです。10%くらい成長してくれるどこか外のエンジンが欲しいのです。
飯田)それで回して行かないと、自分たちの政権基盤とか国内の安定も保てない危機感があるわけですか?
富阪)そうですね。でも外のことに口を出すと、持ち出しが多くなるのですよ。自分の言うことを聞かせる国があれば良いですが、それにはある程度面倒を見なくてはいけないですよね。そんな面倒なことをするなら利益だけ欲しいということです。だから東西冷戦みたいなイデオロギーで縛って、その代わり経済の面倒を見るという形にはしないですよね。
飯田)そんな儲からないことはしない。
富阪)そうです。同盟関係が中国には無いですからね。もともとは米ソに対して、非同盟の第3グループという形ですから。だから伝統的にもそれは無いのですけれど、戦後の世界の潮流としてはそこまで深いコミットをしても、あまり良いことが無いというのは結論が出ていますから。
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