英EU離脱 アイルランドと北アイルランドの国境問題が争点
公開: 更新:
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月15日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。10月末まで再延期されたイギリスのEU離脱(ブレグジット)問題と、合意なき離脱の可能性が高まっているというニュースについて解説した。
ブレグジット~10月31日まで延期も合意なき離脱のリスクは高まったとの説
イギリスのEU離脱が10月31日まで延期されるなか、イギリス市場では不測の事態に備えた影響で好景気に見えるという現象が起きている。一方で合意なき離脱も辞さない強硬離脱派とさらなる反発で、メイ首相の求心力が低下し離脱が遠のいたことで、最終的な合意なき離脱がむしろ高まっているとの見方も出ている。
飯田)一時的な好景気は在庫の積み増しをしているから、その分だけGDPの値などが水増しされている、という指摘もあったようです。
須田)先週10月31日までの延長が決まりました。一旦は合意なき離脱が先送りされましたが、そもそも何が問題で、何を揉めているのかが見えて来づらい。
飯田)分からないですよね。
最大の争点はアイルランドと北アイルランドの国境問題
須田)メイ首相とEU理事会の間で結ばれた協定書があって、この協定書を受け入れるかどうかでイギリス議会とのやり取りが行われています。その協定書は、580ページ弱にも及ぶ膨大なものです。この中身をキチンと見ていないから、日本国内ではうまく伝えられていないと思います。
私も全部の精査はできないながら読んでみると、合意ある離脱の協定書は、実質的にEUにとどまる内容になっています。ですからこれをイギリス議会の多数で可決すると、イギリスはEUに留まることを意味します。だから強硬離脱派がこれに反発する。
具体的に言いますと、イギリスがEUを離脱するにあたっていちばん大きな問題は、アイルランドと北アイルランドの国境問題です。かつてここに国境があり、人と金の往来が自由でなかったときはアイルランド統一という動きが起こりました。
飯田)IRA(アイルランド共和軍)の活動が盛んに報じられました。
須田)アイルランド共和軍によるテロ活動で混乱を極めていましたが、イギリスとアイルランドがEUに加盟して、この国境がなくなってテロが下火になって行ったという実態があります。つまり今度EUからイギリスが離脱すると、再び国境線が引かれることになって、またあのテロの悪夢が蘇って来てしまう。この国境をどうするのかが最も大きな問題だったのです。
協定書の中身をさらに読み進めると、1つはイギリス・アイルランド両国間できちんとした決着がつくまで、当面この国境は封鎖しない。その代わりイギリスはEUに対して負担金をきちんと支払いなさいということが書かれています。
2つ目には、イギリスが勝手にEU以外の国と関税及び貿易協定を結んではならない、ということが書かれている。つまり国境問題が解決するまでイギリスはEUに留まるということが、あの協定書の意味するところなのです。
合意なき離脱でもWTOルールという保険があるイギリス
飯田)離脱派が重いと主張している負担金は、出し続けなければならない。これではイギリス議会はまとまらず、本当に離脱できないですね。
須田)強硬離脱派は、あの協定書を呑めばイギリスは永遠にEUの植民地になると主張しています。これが揉めに揉めているポイントですから、私はいっそ合意なき離脱という選択肢があっていいのではないかと思っています。
飯田)合意なき離脱の場合、日本国内では経済がクラッシュする、と予測している人も多いです。
須田)イギリスは他の国々と関税協定も関税の交渉もしていないので、離脱後は大混乱に陥ると思われていますが、そんなことにはなりません。イギリスは世界貿易機関(WTO)に加盟していますので、貿易に関してはWTOの関税ルールが適応されるからです。
飯田)最終的にはWTOルールという、ある種の保険みたいなものが掛かっているのですね。
須田)ですからアメリカは腹のなかでは、むしろ合意なき離脱をしろというのが本音なのです。合意なき離脱になった場合、アメリカはすぐさまイギリスとの間でFTA(自由貿易協定)を結ぶ用意があると言ったのは、そこに理由があるのです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。