愛猫の出産と指のない愛犬が、トリマーに教えてくれたこと

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【ペットと一緒に vol.149】by 臼井京音

愛猫の出産と指のない愛犬が、トリマーに教えてくれたこと
猫と暮らしながら、将来は柴犬を飼いたいと思っていた桑原梨子さんは、トリマーになり、トイ・プードルの保護犬を迎えることになりました。足の指が1本ないという愛犬とは、運命的な出会いだったと語る梨子さんが、ペットたちから教えてもらったこととは?


愛猫の出産と育児で知った大切なこと

「本来は完全な猫派でしたが、犬のトリマーになったんです」と語る、桑原梨子さん。幼稚園時代には母親が一目ぼれしたシマリスと、小学校時代には猫を飼うようになったそうです。

「知り合いが里親を募集していた猫でした。すっかり猫のかわいさにメロメロになった私たち家族は、さらに保護猫を引き取り、自宅での出産も経験しました」とのこと。生まれた5匹の子猫を、母猫を手伝いながら育てた日々は、梨子さんの動物に対する思いを強めた貴重な財産になったそうです。

愛猫の出産と指のない愛犬が、トリマーに教えてくれたこと

梨子さんが初めて飼った母猫と父猫

「ほとんど睡眠も取らずと言っていいほど、母猫は一生懸命授乳をして子育てをするんですよね。そして、小さくてか弱い子猫は、必死で生きようとしていました。その姿が忘れられません」と、梨子さんは語ります。ところが、元気に成猫まで育った子猫たちでしたが、猫エイズに感染するなどして2匹は命を落としたと言います。

「猫をとおして、動物が寿命をまっとうすることは実は大変なことなんだと知りました。だからこそ、命は本当に尊い」と、梨子さんは語ります。

愛猫の出産と指のない愛犬が、トリマーに教えてくれたこと

桑原家で生まれた5つ子ちゃん


トリマーだからトイプーの保護犬を探すと……

動物に関わる仕事を希望した梨子さんは、トリミングスクールを卒業して、都内のアニマルクリニック併設サロンで働き始めました。「依然、猫派のままでしたが、犬とずっと触れ合える仕事に魅力を感じました」。

アニマルクリニックでは、保護犬や保護猫を預かって新しい家族を探す活動もしていたそうで、梨子さんはクリニックで預かっている犬のトリミングや世話をしたことに影響を受け、自身の仕事の技術向上につながるトイ・プードルの保護犬を探すようになったとか。

所沢にある愛護団体のインターネットのホームページを見て、あるトイ・プードルに梨子さんは興味を抱いたと言います。そこで、休日を利用して会いに行くことに。

「ところが、お目当ての子に会う前に、ちょうど当日施設に来たばかりというトイプーを1時間ほど抱っこすることになって。すっかり情が移ってしまい、その子を家族にしようと決めました」。

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保護団体のシェルターで出会い1時間抱っこしたトイ・プードル

そうして、まずはペットが飼える実家への引っ越しを終えた梨子さんは、出会いから2ヵ月ぶりに、生後5ヵ月になったトイ・プードルを迎えました。

「名前は、生きる希望という意味を込めて、希生(きい)にしようと。でも、何だかいざ迎えてみると大げさに感じてしまい、ひらがなで表記する“きい”にしました」とのこと。

きいちゃんは、ブリーダー宅で生まれた際、へその緒と間違えられて左前足の小指を母犬に食べられてしまったのだそうです。「母猫の出産に立ち会った経験があるので、このような状況になってしまうことも想像がつきました。だからこうして無事に育った命を、何とか私が幸せにしたいと思って」と、梨子さんは語ります。

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現在のきいちゃんの元気いっぱいの姿


愛犬のおかげで広がった縁と人生の喜び

梨子さんはトリミングの腕を、きいちゃんのおかげで磨けたと言います。「きいには、新しいデザインカットを試すことが多いんです。すると、看板犬としてショップにいるきいを見て、『わぁ、かわいい。うちの子も同じようにしたい』と言ってくださる飼い主さんもいて、うれしいですね」と、梨子さんは微笑みます。

ショップに来る犬たちとは、どんな犬とでも仲良くできるというきいちゃんとの生活は、まさに梨子さんにとっては思い描いていたとおりのものだったと言います。

「猫派だったのに、気づけばすっかり犬派に(笑)。ところがそんなある日、お客様から子猫3匹の里親を探しているという相談を受けたんです。よく聞けば、子猫の誕生日が、きいと同じで。運命だと思って、家族会議の末に我が家で引き取ることにしました」(梨子さん)。

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トリミングサロンのお客さんのところから桑原家へ

実はその数ヵ月前に子猫2匹をすでに新しく迎えていたそうですが、こうして桑原家には、子猫2兄弟のほか、3匹が加わって猫が合計5匹に。「以前は最多で7匹いましたからね。5匹ではそれほど多いという感じもしません(笑)。猫も、やっぱりかわいいですね~」と笑顔をこぼす、梨子さん。

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5匹の子猫が勢ぞろい

職場では、飼い主さんに気軽に相談してもらえる存在であることにも、喜びを感じているそうです。

「夏バテで食欲がなさそうだとか、散歩で最近歩きたがらなくなって来たようだとか……。そうした生活の変化を、世間話のように話しかけられますね。私がわからないことは『今度までに調べておきますね』、『それは先生にご相談されたほうがいいかもしれませんよ』などと答えていますが、飼い主さんの悩みに共感できるのも、きいのおかげです」。

梨子さんは、きいちゃんのフワフワの毛を撫でながら、もっと動物のことをたくさん学んで行きたいと語っていました。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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