育てた犬が盲導犬に! 再会や別れを思い出して胸が熱くなる

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【ペットと一緒に vol.148】by 臼井京音

育てた犬が盲導犬に! 再会や別れを思い出して胸が熱くなる
盲導犬になれなかった犬を迎えたのち、盲導犬の繁殖ボランティア宅で助産をしたり、盲導犬候補生の子犬と1年間過ごしたり……。今回は、まさにラブラドール・レトリーバーまみれと言っても過言ではない長い時間を過ごして来た聖子さんの、いまでも思い出すと胸が熱くなるというストーリーを紹介します。


まずはキャリアチェンジ犬を迎えて

「街で盲導犬を見ると、盲導犬候補生などと過ごした日々が思い出されてなつかしい気持ちでいっぱいになります」と、聖子さんは語ります。いまはマンションでフレンチ・ブルドッグのそらちゃんと暮らす聖子さんは、以前は盲導犬になれなかった“キャリアチェンジ犬”や、盲導犬候補生として生まれた子犬の世話をする繁殖ボランティアを手伝っていました。

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繁殖ボランティアさん宅で

「もともとは親戚が盲導犬の繁殖ボランティアをしていたんです。でも、子犬の管理はとても大変。そこで、キャリアチェンジ犬を迎えました」とのこと。

盲導犬になるための最終試験に合格できなかったとは言え、あらゆる訓練を受けて来たキャリアチェンジ犬は、聖子さん曰く「とても利口で、どこへ一緒に行っても困ったことはありません。サイズは小さいのに、いまのフレブルのほうがずっと大変(笑)」だそうです。

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聖子さんの現在の愛犬そらちゃん

盲導犬とは縁があったようだとも語る聖子さんは、ごく近所でたまたま盲導犬の繁殖ボランティアをしている人と知り合ったことから、母犬や子犬の世話を手伝うようにもなったと言います。

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聖子さん家族が初めて迎えた盲導犬のキャリアチェンジドッグ


子犬たちとの別れで号泣

繁殖ボランティアにもともと興味を抱きつつ、仕事を持ちながらでは大変だとの結論から諦めていた聖子さんでしたが、近所の繁殖ボランティアさん宅に手伝いに行くという形で、ラブラドール・レトリーバーのかわいい子犬たちと触れ合えるようになりました。

「子犬が産まれそうだと連絡を受けると、駆けつけて助産を手伝います。1回の出産で7~8頭の子犬が誕生するのですが、最後の1頭が出て来るまで心配で。明け方に無事に全頭生まれたことを見届けて、一睡もしないで眼下にクマを作って会社に出勤したこともありましたね」と、聖子さんは当時を振り返ります。

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生まれて間もない盲導犬のパピーたち

繁殖ボランティアさんが子犬の世話をしている間、聖子さんは母犬を散歩に連れ出したりもしたとか。「えらいよね~、子育てをしばし忘れてのんびりしようね~、などと母犬に話しかけながら散歩しました。どんな犬でも、本当にかわいくて大好きです」(聖子さん)。

ほかにも、毎日ボランティアさん宅に通って、子犬と遊んだり、排泄物の片づけをしたり、離乳食を与えたりしたと言います。

「子犬たちとの幸せ過ぎる日々は、あっという間に終わりを迎えてしまうんですよ。生後2ヵ月を過ぎると、盲導犬の施設に一旦引き取られる日がやって来ます。1頭1頭、迎車に乗せるのですが、車が出発する頃には別れがつらくて号泣してしまいます(笑)」(聖子さん)。

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育児上手な母犬と元気な子犬たち

今年こそ泣かないですみそうだと思ったこともあったそうですが、そのときはふと見ると、母犬がいつの間にか子犬を追いかけて一緒に車に乗ってしまっていたようで、「それを見た瞬間、やっぱり号泣でしたね」と、聖子さんは言います。

部屋に連れ戻した母犬の横で、なおも涙を流しながら子犬用のサークルなどを片付けていた聖子さん。「それが、サークルがなくなると、母犬はまるで出産や子育てをしなかったかのように『わーい! 広くなったから遊ぼうよ』と、おもちゃを持って来たりして……。意外とあっさりしていて拍子抜けしたりもしましたね」と笑います。

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すくすくと成長した子犬たち


盲導犬パピー育てにも奮闘

聖子さん家族は、繁殖ボランティアさん宅から盲導犬の育成施設を経由して送られる、盲導犬候補生のパピーを約1年間育てるボランティアをしたこともあるそうです。

「パピーウォーカーというような名称で知られているボランティア活動ですね。子犬に1年間かけて、人のやさしさや愛情深さをたっぷり知ってもらい、あらゆるものに慣れてもらうんです」(聖子さん)。

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大切に育てた盲導犬候補生

盲導犬候補生のBちゃんが協会に戻って行ったあと、聖子さんは街での最終試験の様子を見に出かけたと言います。「かなり離れた、絶対に見つからないところからそっと見守っていました。やんちゃだったBが、頼もしく成長した姿を見て胸が熱くなりました」。

そのBちゃんは、無事試験に合格。現在は盲導犬として活躍をしているそうです。

育てた犬が盲導犬に! 再会や別れを思い出して胸が熱くなる

いまは盲導犬として活躍中のBちゃん

聖子さんは偶然に、目が不自由な中学生が街で隣に座ったことがあり、実感をしたことがあると言います。

「盲導犬は普通のペットドッグのような楽しい生涯が送れなくてかわいそうだとか、私も以前は人から聞いたり言われたりしました。そのたびに、盲導犬は信頼するユーザーの方と四六時中行動をともにし、お互いに支え合っているんだというエピソードや、オンとオフをきっちりと切り替えて、オフのときは家庭犬と同じように遊んだり甘えたり怠けたりするんだと紹介して、誤解を解いたりしていました。

でも、盲導犬は本当に必要なのかを深く考えて結論が出なかった部分もあって……。そんなとき、将来盲導犬を希望する中学生と偶然に居合わせたことで、盲導犬は目の不自由な人が、家族や友人に気兼ねせず自由に行動し、社会で活躍できるようになるためのパートナーなのだと腑に落ちたんです」。

そう語る聖子さんは、盲導犬や介助犬などの補助犬をはじめ、犬が社会の一員として広く受け入れられるようになるのを願っているそうです。

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写真右から母犬、子犬、祖母犬と3代が繁殖ボランティアさん宅に勢ぞろい

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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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