オスカー女優が出演を熱望した、美しくも切ない感動作
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第670回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。支配人の八雲ふみねです。シネマアナリストの八雲ふみねが観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、8月10日公開の『マイ・エンジェル』を掘り起こします。
愛し方が分からない母と、愛されたことのない娘~2人が紡ぐ、愛の形…
2007年公開の『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』でフランス人女優として49年ぶりにアカデミー賞主演女優賞を受賞した、マリオン・コティヤール。一躍、世界的なスター女優となり、その後も多くの作品において傑出した演技力でその存在感を示しています。
出演作を厳選するシビアさでも知られている彼女ですが、今作でコラボレーションした相手は、何と、これが長編映画デビューとなる新人監督ヴァネッサ・フィロ。夏が過ぎ行く南フランスのコート・ダジュールを舞台に、傷つきながらも愛を築いて行く母娘の姿をエモーショナルに紡ぎました。
シングルマザーのマルレーヌは、愛する8歳の娘エリーと共に、気まぐれなその日暮らしを送っていた。貧しいながらも幸せな日々を過ごす2人だったが、酒癖の悪さから再婚相手の男性との関係が破綻してしまったマルレーヌは、厳しい現実から逃れるように、エリーの前から姿を消してしまう…。
独りよがりにしか娘に愛情を注ぐことができず、常に自分を愛してくれる男性を必要としている“母親”マルレーヌに扮したマリオン・コティヤールは、劇中では一切描かれていないヒロインの“過去”への想像をふくらませ、この難役と一体化して行ったのだとか。
そしてもうひとりの主演女優とも呼べるのが、エリー役のエイリーヌ・アクソイ=エテックス。わずか8歳ながら過酷な世界を生き抜く強さや母への複雑な思いを見事に体現し、「アーティストの魂を持った女の子」だとマリオンも大絶賛するほどの熱演をみせています。
地中海に面した風光明媚なリゾート地、コート・ダジュール。そのきらびやかな世界の片隅にポツンと取り残された、ひと組の母娘の物語は、決して映画のなかだけのお話ではなく、今日も実際に世界のどこかでこのような出来事が起こっているのではないかと思わせるものがあります。
ちなみに本作は、10月をもって閉館することが決まっている有楽町スバル座の最後の洋画ロードショー作品。53年の歴史ある昔ながらの映画館の雰囲気と共に、是非、お楽しみください。
『マイ・エンジェル』
2019年8月10日(日)から有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ヴァネッサ・フィロ
撮影監督:ギョーム・シフマン
出演:マリオン・コティヤール、エイリーヌ・アクソイ=エテックス、アルバン・ルノワール
(c)PHOTO JULIE TRANNOY
公式サイト my-angel-movie.com
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/