母である前に、ひとりの“人間”なんです!
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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第627回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、5月25日に公開された『パリの家族たち』を掘り起こします。
多様化する“女性の幸せ”を描いた群像劇
学校から見放された問題児たちの集まるクラスが、ベテラン教師の情熱によって次第に変化して行く様子を描いた『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』。マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督が手がけたこの映画は、カンヌ国際映画祭をはじめ世界各国で高く評価され、日本でも大ヒットしました。
彼女の最新作となるのが、多様化する現代社会での幸せのあり方を探る『パリの家族たち』。“母親”という存在を軸に、女性と社会との関わりを描いた群像劇です。
本作には、様々な職業の女性が登場します。職務と母親業との狭間で不安に揺れる大統領、思春期の子どもを持つシングルマザーのジャーナリスト、独身を謳歌し教え子との恋愛を楽しんでいる大学教授、幼少期の母との思い出がトラウマとなり子どもを産むことを恐れる小児科医、過干渉な息子から自由になりたい舞台女優、音信不通の恋人の子どもを身ごもってしまった花屋の店員…。
そこには、ままならない人生でも幸せに向かって奮闘する彼女たちの姿がリアルに描かれています。
そして、本作に登場する母と子の関係性も実に様々。自身も母親であるマリー監督によると「母親讃歌の映画を作るつもりはなく、母親との関係性の複雑さや母親業の難しさを普遍的な視点で描きたかった」とのこと。
「働く母親たちは、ある種の罪悪感を抱えているもの。私はこの映画を通して、その罪悪感は自分だけのものではない。みんな同じ気持ちを抱えているのだと(この映画を通じて人々に)伝えたかった」と、語ります。
ストーリーを追ううちに、自分自身と母とのつながりに思いを馳せる人も多いのではないでしょうか。この世に生を受けた者には、必ず母がいる。そういった意味では、女性に限らず、男性が観ても共鳴する部分がたくさんある作品です。
パリの家族たち
2019年5月25日からシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAにて公開
監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
出演:オドレイ・フルーロ、オリヴィア・コート、クロチルド・クロ、パスカル・アルビロ、カルメン・マウラ、マリー=クリスティーヌ・バロー、ニコール・ガルシア、ノエミ・メルラン、ジャンヌ・ローザ
©WILLOW FILMS–UGC IMAGES–ORANGE STUDIO– FRANCE 2 CINÉMA
公式サイト http://synca.jp/paris/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/