【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第680回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。支配人の八雲ふみねです。シネマアナリストの八雲ふみねが観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、8月30日から公開の『トールキン 旅のはじまり』を掘り起こします。
ファンタジー文学のジャンルを新たに切り開いた文学界の巨匠、J・R・R・トールキンの半生を描いた伝記映画
映像化不可能とさえ言われた冒険ファンタジー超大作『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』3部作の生みの親、J・R・R・トールキンの知られざる半生を描いた『トールキン 旅のはじまり』。
魔法使いにホビット、火を吐くドラゴンやエルフはいかにして誕生したのか。その秘密に迫った感動の伝記映画です。
3歳で父を失くし、母と弟ヒラリーと共に、美しい自然に囲まれたイギリスのセアホール・ミルで暮らすトールキン。生活は決して裕福ではなかったが、母は想像の翼を広げて物語を創作し、心を豊かにする術をトールキンに教えてくれた。
その母も、トールキンが12歳のときに急死。孤児となってしまった彼だったが、後見人のフランシス・モーガン神父のサポートにより、名門キング・エドワード校への入学を果たす。そこでトールキンは、かけがえのない3人の友人と出会うことに。
校長の息子で画家志望のロバート・ギルソン、劇作家を目指し詩作にも長けたジェフリー・スミス、そしてクラシック音楽の作曲家としてすでに作品を発表しているクリストファー・ワイズマン。
自分たちの集まりを秘密クラブ<T.C.B.S.>と名付け、何でも語り合える仲間に刺激を受けながらトールキンは、物語の創作力と絵の才能を磨き上げて行く。しかし第一次世界大戦が勃発し、トールキンたちの運命を大きく変えて行く…。
トールキンを演じたのは、ハリウッド超大作からアート系作品まで幅広い役をものにして来たニコラス・ホルト。「指輪物語」や「ホビットの冒険」を読んだことはあっても、原作者であるトールキンについては「全然知らなかった」と明かすホルトですが、“仲間を想う温かな心”を軸に、情感豊かなトールキン像を作り上げました。
そしてトールキンと恋に落ちるエディス役には、リリー・コリンズ。トールキンのミューズであり、エルフの王女のモデルになったと言われている女性をエレガントに演じています。
またアンソニー・ボイル、パトリック・ギブソン、トム・グリン=カーニー、コルム・ミーニイ、デレク・ジャコビらが脇を固め、物語に深みと奥行きを与えています。
ストーリーの細部に「指輪物語」や「ホビットの冒険」の世界を彷彿させるエピソードが盛り込まれており、伝記映画を観ているにもかかわらず、魔法世界に紛れ込んだような不思議な錯覚さえ覚えさせる本作。観ると、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ホビット』シリーズをもう1度観直したくなるはず。
愛と友情、そして勇気。トールキンが生み出した大切な“言葉”で紡がれた物語は、いまも時代を超えて私たちを感動の世界へ誘ってくれるのです。
『トールキン 旅のはじまり』
2019年8月30日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督:ドメ・カルコスキ
脚本:デヴィッド・グリーソン、スティーヴン・ベレスフォード
出演:ニコラス・ホルト、リリー・コリンズ、コルム・ミーニイ、アンソニー・ボイル、パトリック・ギブソン、トム・グリン=カーニー、デレク・ジャコビ、ハリー・ギルビー、アダム・ブレグマン、アルビー・マーバー、タイ・テナント
(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/tolkienmovie/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/