イスラエル総選挙の結果がアメリカとイランにとって重要である理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月20日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。イスラエルの総選挙で勝利した反首相派がネタニヤフ首相との大連立を拒否したニュースについて解説した。
イスラエル総選挙、反首相派が勝利宣言~ネタニヤフ首相との大連立を拒否
17日に投票が行われたイスラエル総選挙で、反ネタニヤフ首相派の中道政党連合「青と白」は19日、勝利を宣言した。一方、敗れた右派政党「リクード」の党首を務めるネタニヤフ首相は、「青と白」を率いるガンツ代表に大連立政権の樹立を呼び掛けたが直ちに拒否され、首相の続投を取り巻く環境は厳しさを増している。
イランとの関係にも影響する~イスラエル総選挙の結果
宮家)ネタニヤフさんはもう10年もやっていますからね。でも、これは単にイスラエル国内で誰が首相になるかという問題だけではなくて、今問題になっているイランに対する有志連合をどうするか、イランとの関係をどうするかということにもつながる重要な問題になります。イランに対して最も厳しかったのは、アメリカのボルトンさんだけではなく、実はイスラエルのネタニヤフさんだったからです。イスラエルの反首相派の人々が必ずしも親イランだということではありませんが、彼が首相ではなくなる場合、今後微妙にイスラエルの対応が変わって来る可能性があります。その意味ではイスラエルの選挙で誰が首相になるかが、湾岸地域の安定にも影響を及ぼし得るということで、重要視するべきだと思います。
飯田)反ネタニヤフ派と言われる「青と白」代表のガンツさん、この人は軍のトップの経験があるということですよね。
宮家)そうです。イスラエル軍のトップは、これまでも多くが首相になっています。イスラエルで最も優秀な人たちは軍に行き、そのなかで参謀長になるということは、これはもうイスラエルのトップの一人だということです。もちろんピンからキリまであるのかもしれませんけれど、多くの元参謀長は政治家になっています。ですから、ガンツさんもそれなりに優秀な人だと思います。
飯田)日本のイメージだと、軍人は戦争をしたがるのではないかと言われたりしますが。
宮家)そんなことはないですよ。大体、軍人は勇猛果敢な人が多いというかもしれないけれど、戦争が始まったら、彼らは最初に死ぬのですよ。自分の部下を死なせるような指揮官は失格です。だから軍人で偉くなればなるほど、実は戦争を回避したいという気持ちがあるのは当然なのです。パウエル国務長官は統合参謀会議の議長でもありましたけれど、イラク戦争、湾岸戦争とも元々は反対でした。だから決して軍人出身の政治家が悪いということではない。
イスラエルの首相交代によるトランプ政権への影響
飯田)イランに対するイスラエルの対応が変わると、アメリカのトランプ政権もイランに融和しやすくなったりしますか?
宮家)話し合いという観点から言えば、それが動く可能性が出て来るかもしれません。
飯田)ではそれも見越して、イランの強硬派が攻撃をした可能性も。
宮家)それはどうでしょうか。ただ、ボルトンさんが解任されて、もうこれで反撃はないだろうとイランが思ったから、「試してみよう、やってしまえ」となったのでは・・・。そして実際に攻撃をやったら、やはりアメリカは反撃できないではないかと思っているかもしれない。そんなことをしたらイランがつけあがるだけですから、あまりよくないと思いますけれどね。
飯田)では、中東情勢がこれから動くかもしれないと。
宮家)そうかもしれないですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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