アメリカとイランの首脳会談~阻止したいイラン強硬派とイスラエル

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月6日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。アメリカ政府がイランに首脳会談を打診したニュースについて解説した。

アメリカがイランに首脳会談を打診

イラン核合意から離脱したアメリカ政府がイランに対し、ニューヨークでの9月下旬の国連総会に合わせて、トランプ大統領とロウハニ大統領による初の首脳会談の開催を打診したことが分かった。9月29日を軸に調整したい考えで、アメリカは会談の実施に条件を付けていないようだが、イランが求める制裁の全面解除には応じない方針と見られている。

飯田)1979年のイラン革命後、断交が続くなかで初の首脳会談だそうですね。

宮家)トランプさんは金正恩委員長とも会っているのですから、誰もやったことのないことをまた「やってしまおう」ということなのでしょう。新しい話題作り、もしくはパフォーマンスなのかもしれないけれども、彼なりのアピールをしようと思っているのでしょうね。彼には戦争をする気なんてないのですよ。

飯田)戦争する気はない。

宮家)イランとはこれまで合意した核合意があります。それをイランにも諦めさせて…自分がその合意から出て行ったのだから何を言うのかという感じなのだけれども・・・・とにかくアメリカは、新たにイランが核兵器を作れないような、もっと厳しい合意を結ばせようとして交渉したいのだと思います。恐らく大統領補佐官のボルトンさんは、それでは生易しいと思っているでしょうが、これはトランプさんが主導でやっているのだと思います。

ロウハニ大統領もアメリカと会談する方向か~イラン強硬派が首脳会談を潰す可能性

宮家)そしてもう1つ大事なことは、トランプ政権のなかでも意見が割れていると思うけれど、イランでも割れていると思うのですよ。イランのなかの強硬派の連中からすれば、ようやくアメリカをごまかして核合意を結んだけれど、本当は抜け穴があるのだと。ぎりぎりの細い小さな通路だけれども、イランにとっては抜け穴があるのですよ。それを死守したい。すぐに作るわけではないけれど、核兵器を作れる能力だけは維持しておきたいと思っているに違いないのです。そうなると、革命防衛隊だと私は思いますが、いちばん強硬なのは、そういう人たちの一部には昔の関東軍のような人たちがいる。そういう連中は「アメリカと話すなんてとんでもない」といって、米イランの対話を潰しに行ったのがあのタンカー攻撃だったのだと思います。安倍さんがテヘランに来たときに、トランプさんからメッセージがあった。ロウハニさんが血迷って「アメリカと話す」なんて言われたら大変だから潰してしまえと関東軍は考えた。これが僕の見方なのです。こうやって振り返ると、アメリカは交渉したい、イランの国内では強硬派が頑張っているが、ロウハニさんとしては米国とは少し話をした方がいいかなと思い始める可能性がある。イランだって、ガチンコでやって、アメリカと戦争になったら大変なことになりますからね。最高指導者のハメネイさんはバランスを取る人、自分が最高指導者で居続けることがいちばん大事ですから、もしかしたらある程度は米国と話し合いをしてもいいと思っているかもしれません。

アメリカとイランの首脳会談~阻止したいイラン強硬派とイスラエル

イランの最高指導者ハメネイ師(右)と会談する安倍晋三首相=2019年6月13日、イラン・テヘラン[ハメネイ師のツイッターより] 写真提供:時事通信

イスラエルもアメリカとイランの首脳会談を潰したい

飯田)ハメネイさんは強硬派なのではないかと、日本では報道されていますが。

宮家)たしかに強硬ではあるのですけれども、彼の目的は自己保身ですよ。私はそう思います。ですから、ひょっとするとひょっとするということがある。いまの段階で私が懸念しているのは、革命防衛隊の一部の人たちが、ニューヨークでのアメリカとイランとの会談なり接触を潰すために、何らかの軍事行動や挑発行動を、ペルシャ湾、中東でやる可能性です。更に、こうした対話を潰そうと思っている人たちは、何もイランの革命防衛隊だけではありません。これを最も潰したい勢力の1つは、実はイスラエルです。イスラエルはすでにシリアなどでちょっかいを出していて、イランが支持する勢力に対する軍事的攻勢を強めています。ここは10月くらいまでは目が離せませんね。

飯田)国連総会は9月の半ばから後半です。まだあと2~3週あるこのタイミングで、このリークが、しかも共同通信の原稿が手元にあるのですが、アメリア政府関係者によると、という。

宮家)そう、1つのシナリオが動いているのですよね。その裏にはもちろんフランスもいると思うのですよ。マクロンさんはマクロンさんで動いているし、日本だってやっているに違いないのです。日本だってイランとは話ができていますからね。方向としては戦争ではなく再交渉の方に動かしたい、というのが応援団の願いであり、それにアメリカも歩調を合わせつつあるのかなと思います。でも、いちばん困るのは革命防衛隊とイスラエルだから、その人たちが何をやるかがいちばん心配ですね。

飯田)なるほど。そこは角を突き合わす者同士が、奇妙な利益の共有のような。

宮家)各国の強硬派はお互いに、みなさんのおかげで私たちは仕事をさせていただいていますということ。要するに、イランに変な奴がいるから、自分たちの強硬論に意味があるという説明を、アメリカもイスラエルも強硬派はしているのですよ。各国の強硬派は共存共栄と言ってもいいですけれどね。

 

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