イランがウランの濃縮度の制限超えをする本当の理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月8日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。イランが核合意で定められたウラン濃縮度の制限を超えて引き上げると発表したニュースについて解説した。

イラン~ウラン濃縮の上限越えに着手

イラン政府は7日、核合意で定められた濃縮ウランの制限を超え、原発燃料並みである濃縮度が5%前後のウランの精製に着手した。危機を演出することでヨーロッパなどの支援を引き出す狙いと見られるが、反発を招いてイランが孤立を深める恐れがある。

新行)さらにアメリカの制裁に不満を持っているイランは、状況が改善されなければ60日後に逸脱範囲を広げて行くと警告もしています。

イランがウランの濃縮度の制限超えをする本当の理由

制限を超えるのは「イラン産原油を買わないから」

須田)日本のメディアはイランの核合意に関して、正確に報道していません。そもそもイランはウラン濃縮度を3.67%までとどめるとしていた。そして、低濃縮ウランの貯蔵量の上限を300キロに抑えるとしていました。この2つの約束を守る代わりに、ドイツ、フランス、イギリスは一定程度のイラン産原油を買うということが、イラン核合意のそもそもの基本的なアウトラインです。ところがイギリス、ドイツ、そしてフランスがアメリカからのプレッシャーを受けてイラン産原油を買っていない。ですから、イランとしては約束を果たしていないではないか、だったら低濃縮ウランの貯蔵量も増やして行きますよということです。これはもう300キロを超えているのですが。そして、第2弾としては濃縮度も上げて行く。5%まで引き上げますということなのですよ。「濃縮度を上げたから、あるいは貯蔵量が増えたから原油を買わない」のではなくて、「買わないから上がって来た」というものが実態です。つまり、イラン核合意が事実上、空中分解してしまっていると考えていいのではないでしょうか。

イランがウランの濃縮度の制限超えをする本当の理由

共同記者発表を終え、握手するイランのロウハニ大統領(右)と安倍首相=2019年6月12日、テヘラン(共同) 写真提供:共同通信社

原油販売が半分に落ち込み、逼迫するイラン経済

須田)なぜ、そこまでイランが強行策に打って出たかと言うと、一部の新聞報道にありますが、イラン経済が非常に逼迫しています。私が調べたところでは現在、イランの1日の原油販売量が100万バレル程度です。これはピーク時の半分にまで落ち込んでいて、いまイラン国内は30%を超えるインフレ率になっており、かなり国民生活が圧迫されている。いちばん問題なのが、イランという国は原油を売って、それを国庫に入れて財政出動をするというスタイルを取っているのですが、政府収入が6割も減っているのですよ。ですから、国が予算を執行することが6割程度できなくなっている状況です。国民経済が大きくマイナスの影響を受けて、我慢の限界を超えて来ている。だから、イギリス、フランス、ドイツが買わないのならば他に売るよということで、シリアに売ろうとしたら船が拿捕されてしまった。

新行)そうですよね。

須田)イランからすれば、もちろんアメリカが悪の権化なのだけれど、自分たちが約束を破っているのではなく、約束を破っているのはヨーロッパ諸国ではないかということなのです。

新行)アメリカは去年(2018年)、イラン核合意を離脱して、ヨーロッパの立ち位置は今後どうなって行くのですか?

須田)マイナスのスパイラルに入って来たと思います。これ以上濃縮度、貯蔵量が上がれば、ヨーロッパも強行策に打って出る。強行策に打って出ると、貯蔵量も上がるという状況になると思います。そして将来的にはイランが核兵器を保有するという状況にもなりますから、そうなる前にどこで止まるかですね。

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