サウジ石油施設攻撃~日本が考えるべき今後のエネルギー問題
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月17日放送)にジャーナリストの有本香が出演。イエメンの反政府勢力フーシがサウジアラビアの石油関連施設を攻撃した報道について解説した。
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無人機の攻撃を受けたサウジアラビア東部アブカイクの国営石油会社サウジアラムコの施設から上がる黒煙(ビデオ映像より)(サウジアラビア・アブカイク)=2019年9月14日 写真提供:時事通信
サウジの石油関連施設の攻撃を巡ってトランプ大統領が報復を示唆
アメリカのトランプ大統領は15日、イエメンの反政府勢力フーシがサウジアラビアの石油関連施設に攻撃したことについて、「我々は犯人を知っていると信じるだけの証拠がある。検証結果によっては臨戦態勢をとる」とツイッターに書き込んだ。アメリカは攻撃についてイランが関与したとの見方を示しており、報復措置も辞さない構えを示唆している。
飯田)イランが巡航ミサイルを撃ったのではないかという話も出ています。
有本)ドローンだけではなくて、ということですよね。イエメンの反政府勢力のフーシは犯行声明を出しています。
飯田)犯行声明も出して、具体的に「ドローンを10機使った」と言っています。
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イランの最高指導者ハメネイ師(右)と会談する安倍晋三首相=2019年6月13日、イラン・テヘラン[ハメネイ師のツイッターより] 写真提供:時事通信
イランの影響がどのくらいあるのか
有本)それはほぼ間違いないのでしょうが、そこにイランの影響はどのくらいあるかというところです。日本としては、これで原油価格、あるいは石油製品にも直に影響が出て来るのではないでしょうか。
飯田)足元の取引価格、WTI、これはシカゴのマーカンタイル取引所での先物ですが、1バレルあたり61ドル90セント。イギリスの方の北海ブレント原油の指標は68ドル01セントとなっています。
有本)いきなり来ていますよね。
飯田)そうですね。湾岸戦争の時点に近いレベルだという報道も、一部ではされています。
有本)こういうことが起こると、中東のことは「遠いところで起きている。我々には関係ない」とは言えないということを、改めて思います。それともう1つは、トランプ大統領はそれでも「イランとの戦争は望んでいない」ということを言っています。ぜひそのようにお願いしたいです。今回の攻撃と少し話は違うのですが、ホルムズ海峡での有志連合について、日本としてはどのように加わって行くのかというスタンスは決めておかなければいけないですよね。
飯田)憲法9条のしばりなどもあり、実際に行ったときに何ができるのかという部分の整理ができていない。海上警備行動とは言われていますが、それではできることが限られる。
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イラン学生通信(ISNA)が13日、AFP通信に提供した、オマーン湾で黒煙を上げるタンカーの画像=2019年6月13日 写真提供:時事通信
中東からのタンカーで運ばれる石油は日本の1日分でしかない
有本)そう思いますね。先ほどの原油価格の話に戻りますが、菅原大臣が会見でおっしゃったように、約230日分ほどの備蓄が日本にはあるようです。それを聞いて安心する人もいるかもしれませんが、そういう問題ではないのです。1日に日本のタンカーが相当数、ホルムズ海峡も通りますが、8割以上が中東から来ます。では一体どのくらいの量をまかなえるのかと言うと、タンカーで運んで来たものは、日本全体に換算すると1日もつかどうかです。
飯田)常に入れ続けなければ回らない。
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千葉停電54万戸、断水続く 台風15号のため、停電が続く千葉市緑区。県内では鉄塔2基が倒壊するなどしており、復旧は多くの場所で11日以降になる見込みだ=2019年9月10日午後6時42分(共同通信社ヘリから) 写真提供:共同通信社
日本のエネルギーをどう確保するか、そのためにシーレーンをどう確保するか
有本)その備蓄を使うような事態になると、本当はどうしようもないのです。そういう点でも日本は、エネルギーに関して言うと非常に脆弱なところがある。先ほどの南シナ海の話ではないのですが、これは石油だけの問題ではありません。日本と台湾も含めて、この辺りの東アジア諸国。特に島国である日本や台湾はエネルギーという点で、海をふさがれてしまうと大変なことになってしまう。これを機に、エネルギーをどう確保するのか、海上交通路をどう確保するのかという意味での日本の安全保障を、国民の共通理解のもとに、10月から始まる国会できちんとした議論を行っていただきたいと切に思います。
飯田)千葉の停電がいま大きなニュースになっていますが、油が入って来なくなると原発は動いていませんし、発電は当然できなくなる。
有本)小泉進次郎大臣の言動ばかりが注目されているのですが、その中身ですよ。小泉大臣はご自身のいろいろな考えがあるので、その整合で発言にも苦労されているように見受けられますが、エネルギーの問題は原発の問題も含めて、情緒で語ってはいけない分野です。
飯田)福島第一原子力発電所の、いわゆるトリチウム水、処理水の問題。あれを海に出すかどうかという話も、結局は原子力全体をどう考えるかということにそのままつながって行きますし。
有本)そのようなことも含めて、もう少し広く俯瞰した議論が必要だと思います。一部の外国メディアが伝えていますが、先ほど飯田さんがおっしゃったように、巡航ミサイルを撃っているのではないかという話がありますよね。
飯田)イランが。
有本)しかも攻撃を受けた場所というのが、イランに近い方角から攻撃されているというようなことがあります。これはイラン政府もいろいろな形で、もう少し国際社会に向けて説明をしないといけないのではないかと思います。安倍総理が6月にイランに行かれました。いろいろなことが言われたのですが、イランと北朝鮮との関係などを踏まえたものだったということが、ここに来て少し情報が出ています。一方で日朝の首脳会談についても当然、日本側は望んでいるわけです。日本とイランの間には伝統的に強い絆がありますし、北朝鮮問題で日本はアメリカを介してという部分もありますが、イランともいろいろなコミュニケーションを取らなければいけないという、少し複雑な関係になっています。
飯田)連立方程式を解かなければならない。
有本)そういう点で、国際情勢というものは常に複雑怪奇なのです。そのなかで何よりも大事に、日本の最大の課題として常時考え、かつ国会等で議論しなければならないのは、やはりエネルギー確保の問題ですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00