目黒女児虐待死事件~初公判から見える「虐待」と「DV」の問題

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月1日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。目黒虐待死事件の初公判、事件の背景について解説した。

目黒虐待死・初公判~父親大筋で認める

東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5歳)が両親から虐待され、死亡したとされる事件で、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた父親の裁判員裁判初公判が1日、東京地裁で開かれた。父親は起訴内容を大筋で認めた。

森田耕次解説委員)2018年3月、東京都目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5歳)が虐待されて死亡した事件。保護責任者遺棄致死や傷害などの罪に問われた、父親の雄大被告(34)の裁判員裁判での初公判が1日に開かれまして、起訴内容を大筋で認めています。結愛ちゃんの体に危険が及ぶと認識した時期が「3月1日ごろだと思う」と話し、実際に3月2日に肺炎による敗血症で結愛ちゃんは亡くなっています。この直前に危険が及ぶと認識したということで、弁護人は、危険を感じたのは亡くなる直前だったとして、「適切な刑の重さを決めて欲しい」と話しています。一方で検察側は、冒頭陳述で「死亡したときに非常にやせ細っていて、全身に新旧170の傷があった」という指摘をしています。

目黒女児虐待死事件~初公判から見える「虐待」と「DV」の問題

東京都目黒区のアパートで5歳の女児が暴行され、死亡した事件で、傷害容疑で父親逮捕 暴行を受けた現場アパートの前には、花やお菓子が供えられていた=2018年3月4日、東京都目黒区 写真提供:産経新聞社

しつけという名の暴力は許されない

森田)岩手県紫波郡の“ザウチのホシ”さん、50歳男性の方からいただきました。「船戸結愛ちゃんを虐待死させたとして、父親の雄大被告の初公判が開かれました。公判の中身を見聞きすると、我が子を人形か何かと勘違いしていないかと思いました。暴力を正義だと思い込むと、暴力も正しいと勘違いするという研究結果がありますが、暴力を伴うしつけは虐待事件になっているケースが多いと思います」というメールをいただいています。

野村)いまのメールにもありましたが、しつけの名を借りた暴力は絶対に許されないことです。いままで数々の事件のなかで、これはしつけでした、ということを主張する人はいましたけれども、これは明らかに虐待と位置付けた上で、適切な処罰をすることが大事だと言えます。

森田)体罰防止も、改正児童福祉法などでは盛り込まれていますものね。

野村)こういった事件を踏まえて、しつけと体罰は別物だということがはっきりしましたし、法制度を変えることにもつながりました。今回の事件で弁護側は、「死亡するかもしれないと認識した」のは直前だったと主張していますが、客観的に見るとかなりやせ細っていたわけですから、そのことを含めて罪を検討することが必要です。検察側は、保護責任者遺棄致死罪だけではなく、傷害罪でも起訴しています。この2つの事件は別々のもので、事前に傷害事件を繰り返していたということも追及されていますから、それらを総合的に踏まえた上で量刑を決めることが大事だと思います。

目黒女児虐待死事件~初公判から見える「虐待」と「DV」の問題

所管が異なる「DV」と「虐待」~一体のものとして守る必要

森田)それから、元妻で結愛ちゃんの母親である優里被告に対して、雄大被告のDVがあったとほぼ認定されていますよね。

野村)そうなのです。ここが今回の事件で、社会に問いかけられている部分だと思います。虐待事件だと捉える部分と、夫婦間での家庭内暴力(DV)が一緒に起こっているということです。これらをトータルで守って行かないといけない。これが今回の教訓として浮かび上がっていると思います。実はDVに関しては、内閣府の男女共同参画というところが所管しているのです。児童虐待については厚生労働省が所管しています。それぞれ保護すべき施設も別々になっていて、一時保護というものはあるのですが、どちらかに寄せた形で「これは児童虐待のケースだ」ということで処理してしまったり、「これはDVだ」ということで処理してしまうと、一体のものとして守って行くことがなかなかできなくなってしまうわけですね。確かに、制度上は相互に連携するようにという通達が出ていて、役所の方々は一生懸命に連携を図ろうとしています。ただ、実務的に上手く行っているのかをきちんと検証して、このような事件を起こさないようにすることが大事だと思います。

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