【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第728回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。支配人の八雲ふみねです。シネマアナリストの八雲ふみねが観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、11月22日公開の『決算!忠臣蔵』を掘り起こします。
誰もが知ってる「忠臣蔵」の、誰も知らなかった「お金」の話が明らかに…
これまでに幾度となくドラマ、映画、舞台、歌舞伎となり、日本の冬の風物詩としても知られる「忠臣蔵」。武士の矜持、主君への忠誠といった“武士の美徳”を描いた国民的ストーリーには、実は仰天のストーリーが隠されていた?!
原作は、江戸時代研究の第一人者である東大教授・山本博文による『「忠臣蔵」の決算書』。大石内蔵助が実際に残した決算書をもとに、赤穂浪士の吉良邸討ち入りをお金の面から描いた、涙と笑いの痛快エンターテインメントです。
元禄14年3月14日。江戸城・松の廊下で、清廉潔白な赤穂藩藩主・浅野内匠頭は、賄賂まみれの吉良上野介の態度に腹を据えかね、斬りかかる。通常ならば喧嘩両成敗となるはずだが、幕府が下した結論は、赤穂藩のお取り潰しと内匠頭の即日切腹という一方的なものだった。
これを受け、筆頭家老・大石内蔵助は、幼馴染の勘定方・矢頭長助の力を借り、ひたすら残務整理に励むこととなる。御家再興の道を閉ざされた彼らにとって、最後の希望は、宿敵・吉良邸への討ち入り。しかし討ち入りするには多額のお金が必要。にもかかわらず、使える予算は9500万!
生活費に食費に家賃、江戸までの旅費に武具の調達。討ち入るのか討ち入らないのか、迷っているうちに予算はどんどん減って行く。しかも仇討ちしないと、世間の風潮としても非常にまずい雰囲気に…。さぁ、どうする大石内蔵助!?
大石内蔵助を演じるのは、堤真一。これまで数多くの名優が演じて来たお馴染みの人物を、“金欠に悩まされるリーダー”というまったく新しいキャラクター像として体現しました。
そして勘定方・矢頭長助には、ナインティナインの岡村隆史。藩の現状を見つめながら大石内蔵助を支え続ける“そろばん侍”を凛々しく演じています。
さらに濱田岳、妻夫木聡、石原さとみ、荒川良々、竹内結子、阿部サダヲ、横山裕(関ジャニ∞)、橋本良亮(A.B.C-Z)と、夢のキャストが実現。また赤穂藩士役には若手からベテランまで豪華俳優陣に加え、大物芸人勢が顔を揃えているのも注目です。
現代に置き換えるならば、藩は会社、武士はサラリーマン。ある日突然、藩主を亡くし、路頭に迷ってしまった赤穂浪士の物語は、優良企業の倒産事件に例えることもできるでしょう。そして、彼らが再起をかける「討ち入り」も、お金をテーマにして掘り下げてみると、いかに予算がかかった一大プロジェクトであったかが窺い知れます。
理想は高く! と言いたいが、容赦なく突きつけられる厳しい現実…。これが300年以上前の話なのかと思うほど、現代社会とクロスオーバーしているのも、本作の面白いところ。彼らがいかに“決算”するかは、是非、映画館で。
『決算!忠臣蔵』
2019年11月22日(金)から全国ロードショー
脚本・監督:中村義洋
原作:山本博文『「忠臣蔵」の決算書』 (新潮新書刊)
出演:堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕(関ジャニ∞)、妻夫木聡、荒川良々、西村まさ彦、木村祐一、橋本良亮(A.B.C-Z)、寺脇康文、桂文珍、竹内結子、西川きよし(特別出演)、石原さとみ、阿部サダヲ ほか
(C)2019「決算!忠臣蔵」製作委員会
公式サイト http://chushingura-movie.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/