中東派遣~“独自派遣”の具体的な行動
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月13日放送)に自由民主党・参議院議員の佐藤正久が出演。中東への自衛隊派遣について解説した。
有志連合に入らず、独自派遣とする理由
政府は中東海域の情報収集強化を目的とする自衛隊派遣について、23日に閣議決定する方針を固めた。安倍総理がイランのロウハニ大統領と20日に会談し、自衛隊派遣の意向を説明する見通しとなる。
飯田)ロウハニ大統領は19日に来日します。この中東派遣については、たくさんの方からメールやツイッターで質問もいただいています。西東京市の“雪の渡り鳥”さん、65歳の方。「どんな見解なのか楽しみに聞きたいです」と。調査研究での派遣については、佐藤さんご自身も委員会で、自民党の部会や合同会議などでも発言されています。
佐藤)日本の油の8割がペルシャ湾、ホルムズ海峡を通って来ているということからも、日本が何もしなくていいということにはならないだろうと思います。一方で今回の自衛隊の派遣は、外交と連携しながら運用しないと、隊員の安全確保もままならない。なぜならば、イランがアメリカと対峙をし、また同じ湾岸のなかでイランはサウジアラビア、UAEと対峙をし、カタールもUAE、サウジと断交中という複雑な状況です。日本はイランとも伝統的な外交関係がありますが、アメリカは同盟国ですし、サウジは日本のいちばんの原油の輸入先であり、外交が複雑に絡んでいるところです。だから、日本には中立性という部分が求められる。そして、ロウハニ大統領が来ます。通常は大統領であれば、権限が強いと思うではないですか。ところが正規軍、革命ガード、警察は大統領の指揮下にないのですよ。
飯田)正規軍も含めてないのですね。
イランの正規軍、革命防衛隊は大統領ではなくハメネイ師の指揮下にある
佐藤)それは上に最高指導者ハメネイ師がいて、彼の指揮下にあるのです。しかも、正規軍よりもアメリカの制裁対象になっている革命ガード(革命防衛隊)の方が装備が新しく、予算も多いのです。今回のペルシャ湾、ホルムズ海峡は大統領の指揮下にない、最新鋭の装備を持っている革命ガードが担当なのです。
飯田)革命ガード、革命防衛隊などという言い方もしますが。
佐藤)よって、大統領の国内基盤が盤石ではないので、外交ではなく、もっと強硬な手段でやるべきだというグループもいます。そこはバランスがとても難しい。そういう観点から、閣議決定1つを取っても、イランへの配慮が隊員の安全確保につながりますし、アメリカの有志連合と一緒にやった方が効率がいいに決まっているのです。しかし、有志連合に入って「アメリカと一緒」という色がついてしまうと、イラン、特に革命ガードは面白くないでしょう。
飯田)敵方についたということに。
佐藤)そうなってしまうでしょう。しかも有志連合になると、日本の憲法上の制約もあります。お互いに相互防衛をするのが、有志連合の当たり前です。ところが日本は、集団的自衛権や武器使用の観点からできません。そうなると、有志連合に入らずに自主派遣、中立性を持ちながら安全性を確保した地域での活動となれば、ペルシャ湾やホルムズ海峡を外して、オマーン湾、アラビア海の北部、アデン湾の辺りが妥当だと思います。
飯田)ホルムズ海峡の、いちばん狭いところまでは入らずに。
日本の連絡員をアメリカの部隊に派遣して情報交換をする
佐藤)そこは有志連合の方に任せて、その外側をやる。その代わり情報については連携をする観点から、我々が得た情報も有志連合やフランスなど、いろいろな部隊に渡す。向こうの情報も我々がもらうという形が最もいい。そのために連絡員をアメリカの部隊に派遣して、そこでお互いの情報交換をします。そういう意味では、連絡員の役割はいままで以上に重要になると思います。
飯田)それも有志連合の司令部ではなく、アメリカの司令部に行かせると。
佐藤)有志連合には、メンバーではないので入れてもらえませんから。
調査研究から海上警備行動に切り替える
飯田)今回は調査研究で、まず派遣します。防衛省設置法のなかでやるということなのですけれども、これでやると武器使用ができず、ほぼ丸腰に近いという指摘をする人もいますが、佐藤さんはどうお考えですか?
佐藤)実は調査研究では、いままでもいろいろ出しているのです。インド洋でテロ対策をしました。あれは途中から新しい法律である、テロ対策特措法に切り替わりました。しかし、それまでは調査研究で部隊を派遣しているのです。
飯田)最初はそれで派遣していた。
佐藤)あるいは北朝鮮の瀬取り隊がいますよね、船から船へ油を売っている。あの監視も調査研究なのです。
飯田)なるほど。
佐藤)あと、尖閣で海上自衛隊が展開していますが、あれも調査研究なのです。
飯田)そうなのですね。
佐藤)ただ今回、そういう状況が発生したら、調査研究から海上警備行動に切り替える。中身は詳細には言いませんが、対象船舶によって、やり方が変わります。日本関連船舶といっても3つジャンルがあって、1つは日本船籍の日本関連船舶、2つ目は外国籍だけれども日本人が乗っている日本関連船舶。3つめは外国船籍だけれども積み荷が日本向け、または運営会社が日本という場合です。
隊員の安全確保のためにも細かい対応要領を事前に詰めて訓練する
飯田)この間、イランで穴をあけられた船もまさにそうでした。
佐藤)ただ、船籍が日本の場合と外国籍の場合では、海上警備行動の発令の仕方が変わって来るのです。国際法もありますから、日本船籍かどうかでその発動も、そんなに簡単にはできません。守り方も差が出る可能性がある。さらに、近くで日本船籍ではない完全な外国船籍から、SOSが来たというときはどうするのだと。海上警備行動では対応できないのですよ。ただ、シーマンシップということで救助はできるでしょう。武器使用を伴わない行動は、ある程度はできます。その辺りの細かい対応要領を、事前に詰めて訓練してから派遣をしないと、隊員の安全確保は図れません。そこはしっかり準備をしてから派遣すべきだと思います。
飯田)本来ならば、そこを全部決めて、特措法を作ってあげた方が現場としては動きやすい気がしますが。
佐藤)ただ、特措法というのは100%ではないのです。私もイラクに派遣されましたけれど、必ずグレーゾーンが出て来ます。そういうグレーゾーンが出て来たときにも、しっかり対応できる、最終的には国が責任を持つという体制を取ることが、現場の隊員がしっかり動けることにつながると思います。
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