必要性の増す有志連合構想~日本がイランに気兼ねする時期は過ぎた
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月20日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。アメリカがホルムズ海峡の安全確保に向けた有志連合構想を同盟国・友好国に示したという報道について解説した。
有志連合構想、アメリカが同盟国に海上監視体制の計画を提示
イラン近海の中東ホルムズ海峡の安全確保に向けたアメリカ主導の有志連合構想を巡って、トランプ政権が11月に艦船55隻による海上監視体制の実現を目指す計画を、同盟国、友好国に示していたことが分かった。これまで有志連合に参加を表明したのは、イギリスやサウジアラビアなど5ヵ国にとどまっており、日本政府は態度表明を保留している。
飯田)16日からの1週間の動きを見ると、サウジアラビアの石油関連施設に攻撃がありました。イエメンの武装組織によるものか、アメリカはイランそのものが攻撃したと言っていますが、少しきな臭くなって来ました。
宮家)常識的に考えて、イランが知らないはずはないと思います。あれだけミサイルなどの残骸があるのですから。イランはあの地域で圧倒的な力があります。イエメンの武装勢力ホーシー派にあんなものが作れるはずがないので、少なくともイランが提供したことは間違いない。
攻撃が激化して来たイラン~より必要性が増す有志連合構想
宮家)有志連合の話が出て来たのは5月、6月あたりで、8月ごろから動きだした。その段階では、海のものとも山のものともわかりませんでした。そして、安倍さんがテヘランに行ったときに日本のタンカーが攻撃された。しかしその時点では、誰がやったかわからないという状況でした。しかし、ここへ来てサウジアラビアの石油施設が、サウジアラビアの生産量の半分くらいを止めるような、大規模な攻撃を受けている状況では、有志連合構想の意味も少しずつ変わって来ているのだと思います。
日本はイランに気兼ねしている場合ではない
宮家)これまで、日本はイランに気兼ねをしていたと思うのですけれど、それはそれで理解できます。しかしながら、最後は「日本の国益は何か」ということを考えなくてはいけない。日本の国益は何かと言うと、東アジアからインド洋を通って、ペルシャ湾まで行って、そこでエネルギー、特に原油の8割~9割を獲得し続けるということです。そこが万一、イランとサウジアラビアの戦争の場になって、両方が相打ちして石油施設が崩壊し始めたら、途端に必要な石油が日本に来なくなるのです。それを回避しなくてはいけないということが、今はいちばん大きな問題です。こんな状況で、はたしてイランに気兼ねばかりしていていいのかということです。
イランは否定するならばもっとはっきりと示すべき
宮家)イランは攻撃を否定するならもっとはっきり、そうではないということをもっとはっきり示すべきだと思います。それができないのであれば、少なくともフーシ派や他の武装勢力に対する支援も含めて、これまでの中東地域におけるイランの対外政策を見直すようなことを考えるべきです。何もしないでこのまま行くと、非常に不安定な状況になると思います。日本も本気でものごとを考えなくてはいけないのではないでしょうか。ただ、海上監視体制とは言え海は広いですから。イエメンの沖もあるし、必ずしもペルシャ湾に入る必要もないかもしれない。各国分担で55隻なら55隻で11月までにということであれば、日本は淡々と状況に応じてできることを行うべきです。イランとの関係よりも、あの地域における日本船舶の安全を最優先して見ながら考える時期に来ていると思います。
飯田)イランがここに来て船に穴をあけたり、今回の油田だったり、強硬になっているという感じですか?
宮家)私の持論はイラン国内に、強硬派、かつての関東軍のようなものがどこかにいて、それが悪さをしているのだと思います。もちろん証明のしようがないので何とも言えませんが、このまま行くと関東軍はどんどんつけあがる。アメリカはボルトンさんが辞めて、戦争をする気がないのだから、「やってしまえ」ということかもしれません。これは非常に危険だと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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