ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月21日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。海上自衛隊のホルムズ海峡派遣について解説した。
海上自衛隊の護衛艦、ホルムズ海峡近海派遣へ
政府は18日、中東のシーレーン(海上交通路)での安全確保を巡って、国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合を総理官邸で開き、年内にも海上自衛隊の護衛艦を派遣する方向で調整を進めることを決めた。
飯田)派遣先はオマーン湾やアラビア海北部の公海など、ホルムズ海峡に近い海域ということです。前々から言われてはいましたが。
今回の派遣では日本の艦船の安全な航海は保てない
須田)どの程度の実効性があるのか疑問ですよね。これによって、日本の船舶の安全な航海が保てるのかどうか、首を傾げざるを得ません。なぜかと言うと、今回の派遣の法的根拠が、防衛省設置法の調査・研究の一環だということです。これはどちらかと言うと、海賊行為に関する調査を適応しているものです。ジブチに展開している海上自衛隊がホルムズ海峡に近い海域に着いても、「もしかしたら海賊行為があるかもしれないから調査しましょう」というところで派遣することになりますから、安全性を守るものではありません。この海域に、海上自衛隊の艦船が行くことそのものに意味があるとすれば、実績を積み上げるということで、ワンステップ目としては評価するべきなのかなと思います。ただ、ちょっと腰が引けているという感じがしなくもないですよね。
飯田)特に武器の使用をするかしないかで言うと、調査で行くということは、ある意味で平場の武器使用の要件で行くということになる。向こうから1発撃たれないと撃てないなど、そういう縛りはそのままになってしまう可能性がありますよね。
憲法改正も含めて議論をするべき
須田)緊急事態に対処できるかと言うと甚だ疑問というか、無理でしょう。現行法では、ホルムズ海峡で起こっている事態に対処することは難しいと言われて来ました。やはり法改正がいちばんスムーズなのですが、法改正をするとなると今度、憲法との整合性はどうなるのかという問題が起こる。現行法で対処するにしても、憲法の制約ということを考えなければならない。となると憲法改正も含めて、その議論をしっかりやらなければ身近に迫った危険性に対応できないという状況に、日本は置かれているということを考えないといけないと思います。
飯田)少し前ですけれども、集団的自衛権の一部容認を含めた安全保障法制の議論のときに、このホルムズ海峡という名前も出た。あのとき議論はしたはずなのですが、結局は調査・研究でしか出せないということは、いままでと変わりないということになりますよね。
須田)ですからこれは立法事実と言って、何か問題が発生していないときに法律を作るのは難しいのです。ところが実際上は、日本のタンカーが攻撃を受けたという立法事実がここで発生しているのだから、「2度、3度そういうことが起こったときにどうするのか」ということを政府がここできちんと考え、国会で議論することは義務だと思います。仮定の話ではない、現実に起こっている問題ですからね。
日本が自国の船舶を自衛することにイランも反対はできない
飯田)メールもいただいています。“やすゆき”さん、46歳、横浜の自営業の方。「日本の船舶を守るためという形なら、石油を外交的に頼るしかない我が国にとしては、産油国を怒らせない方法なのかなとは思いますが、アメリカとイランのそれぞれを立てるのがあちら側に理解できるのかどうかだと思います」と。イランに対して、どういう刺激になるのかというあたりですよね。
須田)ここで腰が引けているのです。とは言っても、イランのなかも荒れていて、日本が自国の船舶の護衛を図るということに関して言えば、イランだって反対することはできないと思います。
飯田)公の海であるということを考えると、イランの主権が100%及ぶところでもないし、自分たちの利害関係の船は自分たちで守らなくてはならないですからね。
須田)加えて、有志連合に参加しないということは、思い切った判断だと思います。それで十分メッセージは送られていると思います。ですからアメリカがどうだから、イランがどうだからでなく、あくまでも国内の問題です。こういう弱腰の対応しかできないという日本国内だけの問題で、イランに対する配慮やアメリカに対する配慮ということで、誤魔化せないと思います。
飯田)何と言ってもここは、原油の8割が通って来るところですものね。日本にとっては死活的な。
須田)生命線です。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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