ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（12月18日放送）にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。大学入学共通テストについて解説した。

英語民間検定試験、延期へ 　大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入延期について記者会見する萩生田文科相＝2019年11月1日午前、文科省　写真提供：共同通信社

大学入学共通テスト～国語と数学の記述式問題を見送り

萩生田文部科学大臣）再来年1月実施の大学入学テストにおける記述式問題の導入については、受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは現時点において困難であり、記述式問題は実施せず、導入見送りを判断いたしました。

17日、2021年から開始される大学入学共通テストで、導入を予定していた国語と数学の記述式問題を見送ると発表した。見送りを決めた理由として萩生田大臣は、採点ミスの可能性や、採点結果と受験生の自己採点の不一致を改善することが困難と説明している。

飯田）メールもたくさんいただいております、台東区の“白猫”さんから。「コロコロ変更されるというのは、受験本番を見据えて逆算して、計画的に対策を講じている受験生のみなさんにとって、たまったものではないと思います」。一方で大阪の“まさちん”さんは、「入学時の学力に注力するだけでなく、大学に入ってから学力をつけて、それを確認することに注力するべきではないか？　入ったら勝ちという状態が、いまの学力低下を招いているのではないか？」というような指摘もあります。

国語記述式「導入中止を」 　大学入学共通テストへの国語記述式問題の導入中止を求め、記者会見した首都圏の高校生＝2019年11月13日午後、文科省　写真提供：共同通信社

アルバイトの大学生に採点能力があるか、採点基準の平均をどこに設定するかが問題

佐々木）記述式自体はやった方がいいと思うのですが、50万人もの採点を短期間で行わなければならないので、民間業者を1万人くらい雇って採点してもらわなければなりません。それは大学生のアルバイトであったりするのです。そもそも大学生のアルバイトにそういう能力があるのかという問題と、採点基準を平準化できるかが問題です。僕は大学で講義をしていますが、150人ほどの受講生のレポートの採点を、家に持ち帰って行っています。最初の20人くらいのレポートを読んで、「ここはこのレベルか」と思いながら採点して低い点数をつけると、実は全員そのレベルだったりします。そうなると、後から「最初の方は点数を低くつけ過ぎたな」と思って、採点し直さなければなりません。1人でやっていても、平均をどの辺にするか悩みます。ましてや1万人の採点者が、同じレベルで採点するのは難しいでしょう。これは時期尚早だったかなという感じはします。

記述式中止法案を提出 　記述式問題導入を中止する法案を、衆院の岡田憲治事務総長（右から3人目）に提出する立憲民主党の川内博史氏（同4人目）ら＝2019年11月14日午後、国会　写真提供：共同通信社

それでも記述問題は必要である

佐々木）AIが出て来て、リーディングスキル問題がクローズアップされています。国立情報学研究所の新井紀子さんが、全国で読解力を問うテストをやってみたら、中・高校生の3分の2の生徒が、読解力があまりありませんでした。日本の識字率は99%ほどですが、実際にそこから意味を読み取っているのは、60%～70%ほどです。今後、読解力を高めることは重要で、それを測ることは必要だと思います。記述式だから測れて、マーク式だから測れないということはありません。新井紀子さんのリーディングテストも選択式です。「（　）のなかに入るものを次の4つから選びなさい」というようなものです。こういうものでできるので、練り直した方がいいと思います。あるいは記述式の問題をAIに採点させるという方向も、十分にあり得ることです。

飯田）そうすると、「このくらい」というところをAIが統一で判断しますよね。

佐々木）全体を見渡して、そこから平均を瞬時に抽出するということならば、AIでもできます。もう1つ重要なのは、記述式に正解はないということです。模範解答から外れているのだけれど、面白い解答もあります。その解答をどう評価するのかが難しい。これは、いまのAIはできないと思います。そうすると最終的に人が判断しなければいけないのですが、50万人は難しいですよね。これでまた堂々巡りになる、難しい議論だと思います。どちらにしても、文部科学大臣や民間業者を叩いて済む話ではないので、大学の先生方も含めて議論すべきだと思います。

飯田）試験が入り口になってはいますが、高校でどういう教育をして行くかですよね。

佐々木）そういう問題だと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up！
FM93AM1242ニッポン放送　月-金　6:00-8:00