「万歳三唱」新幹線殺傷の被告~死刑求刑検討も無期懲役求刑となった背景

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(12月18日放送)に作家・ジャーナリストの河合雅司が出演。2018年に発生した新幹線殺傷事件の無期懲役判決について解説した。

「万歳三唱」新幹線殺傷の被告~死刑求刑検討も無期懲役求刑となった背景

【JR東海道新幹線、新横浜~小田原間を走行中の新幹線「のぞみ265号」の12号車内で男女3人が襲われた】小田原駅構内を行き来する警察官=2018年6月10日、神奈川県小田原市 写真提供:産経新聞社

求刑通り無期懲役の判決~刑法が抑止力になっていない

2018年6月、走行中の東海道新幹線の車内で乗客の男女3人が殺傷された事件で、殺人や殺人未遂の罪に問われた小島一朗被告(23)の裁判員裁判の判決公判が開かれ、横浜地方裁判所小田原支部は、求刑通り無期懲役を言い渡した。小島被告はこれまでに「有期刑になれば刑期を終えて出所し、必ずまた人を殺す」「無期刑になったら2度と社会に戻って来ることがないよう全力を尽くす」などと一方的な主張を展開しており、量刑が争点となっていた。

森田耕次解説委員)求刑通りの無期懲役だったのですが、驚きました。この小島一朗被告は判決言い渡しの後、証言台の前で立ち上がって「控訴はいたしません。万歳三唱します」と言い、両手を3回、高々と上げたというのですね。裁判長が控訴についての説明を終えて、自分の被告席へ戻るよう促すと、突然万歳を始めたということです。裁判長が「被告人は元の席に戻りなさい」と強い口調で制止したのに止めず、裁判長はすぐさま閉廷を宣言したということで、判決公判はおよそ10分で終わりました。判決理由では、「無差別殺傷をするために、走行中の新幹線という逃げ場のない場所を選ぶなど、計画的犯行だった。止めに入った男性を少なくとも78回襲っており、強固な殺意に基づく残虐で悪質な犯行だ。一生刑務所に入るためという動機は、あまりにも人の命を軽視し、身勝手だ」という判決理由だったのですが、死刑求刑ではなかったので無期懲役になるわけですよね。

河合)言い方が変になりますが、(被告の)希望通りになってしまったということで、これでは亡くなった人が浮かばれないですよね。(この被告にとっては無期懲役の判決が)罰になっていないということです。刑法が(犯罪の)抑止力になっていないということでもあるので、ある意味で司法制度に対する挑戦のような面がありますね。

「万歳三唱」新幹線殺傷の被告~死刑求刑検討も無期懲役求刑となった背景

JR東日本と宮城県警が新幹線車内で不審者対応訓練 刃物を持って暴れる乗客役を相手に対応する警察官=2018年7月25日、宮城県利府町の新幹線総合車両センター 写真提供:産経新聞社

パーソナリティー障害を考慮し無期懲役求刑に

森田)検察側も死刑求刑を検討したようですが、パーソナリティー障害が動機に影響したということで、無期懲役が適当という主張になってしまったのですよね。

河合)求刑が無期懲役だったということなので、これ以上やりようがないという話になってしまいます。

森田)「男だろうと女だろうと、子どもだろうと老人だろうと、人間だったらやりました」と公判中にも述べていたということですから、反省の態度もまったくないということですよね。

河合)刑務所に入りたいだけだったら、人を殺すやり方でなくても入れただろうに、ということですよね。亡くなった方が気の毒だし、遺族は判決と被告の(判決が下った後に万歳三唱をするような)態度そのものに激怒しているのだろうと思います。心情を察するに余りあります。

森田)重傷を負った女性の1人は、意見陳述でも「事件後は1人で外出できなくなった。新幹線も2度と乗れない乗り物になった」と述べたということです。新幹線もあれから防護盾や防刃ベストなど、護身用のものを備えたりはしていますが。

河合)警備の人も、(新幹線内を)巡回されたりしていますね。利便性と安全性は、なかなかうまく両立しないところがありますが、新幹線もある意味では密室の高速交通機関です。飛行機(搭乗時の検査体制)までは行かないにしても、荷物検査など、もう少し警備の体制を含めて考えなければいけない時代になって来たのだと思います。

ザ・フォーカス
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パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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