台湾総統選挙は蔡英文氏が優勢~注目は立法委員選挙の行方

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月7日放送)にジャーナリストの有本香が出演。台湾総統選挙について解説した。

台北郊外の新北市で開いた選挙集会で演説する蔡英文総統=2019年12月1日 写真提供:産経新聞社

台湾総統選挙に向け蔡英文氏、中国への対抗を改めて強調

1月11日に行われる台湾の総統選挙を前に、各候補者が支持を訴えた。再選を目指す民主進歩党の蔡英文総統は「台湾の主権と民主を守る」と演説し、中国が掲げる台湾統一を拒否する姿勢を改めて強調した。

飯田)蔡さん有利ですが。

有本)これは圧倒的に有利ですね。この番組でも2019年の秋口から言い続けていますが、6月に香港でデモが起きてから、蔡英文さんにとっては追い風という状況になりました。高雄市長の韓国瑜さんが中国国民党の候補として出るわけですが、いまのところ支持率でも圧倒的に蔡さんに及びません。年末から大きなニュースが続いたこともありますが、そもそも日本の報道は台湾政局に冷淡です。でも、これは非常に重要なニュースです。蔡さんが有利で、総統選の大勢が決まったということだけではありません。高雄市はもともと民進党の地盤だったのですが、韓国瑜さんが勝ったのです。この方が中国寄りだということに反発して、主催者発表では50万人規模のデモが起きているのです。要するに、反韓国瑜デモです。

飯田)「反韓デモ」と書いてあったので何かと思ったら、韓国ではなく韓国瑜なのですね。

韓国瑜-Wikipediaより

若い人を中心とした新興政党「台湾基進党」の存在

有本)「韓国瑜から高雄を取り戻せ」というデモです。しかも従来の民進党の地盤だからといって、民進党の人たちが中心になったデモではありません。このデモの中心となったのは、ネットなどから若い人たちの支持を伸ばしている新興政党で、台湾基進党と言います。いまのところ全体では数%しか支持がないのですが、高校生や大学生から非常に高い支持率があって、10代をメインにした調査を行うと20数%の支持率です。

飯田)そんなに高いのですね。

10日、台北で開かれた双十節の式典で手を振る台湾の蔡英文総統(中央右)=2019年10月10日 写真提供:時事通信

もう1つの注目、立法委員選挙~民進党がどれだけの議席を獲得するか

有本)このリーダーは意気軒昂で、今回のデモもあって「将来は民進党と我々で二大政党を築く」と言っています。70年以上前に大陸からやって来た国民党が、いつまでも政権政党の一角だと言っている時代は古いと。この政党は、台湾の独立性を鮮明にしている政党です。これからどのように成長して行くかはわかりませんが、ヨーロッパなどで起きている新興政党と同じような流れを見せています。ですから、台湾政治はダイナミックに動いているのです。それと共に、総統選に関しては大勢がほぼ決まった感があるのですが、同時に立法委員の選挙が行われるのです。

飯田)日本でいう国会議員ですね。

有本)台湾の立法委員選挙は日本よりも若干複雑で、いろいろな枠があります。例えば、先住民族枠などです。比例の候補も日本の比例代表とは違う仕組みになっていますから、いろいろ複雑です。果たして与党である民進党が、どれくらいの票を取るかというところも見どころです。

飯田)前回は総統選で蔡さんが圧勝して、立法委員選挙でも民進党が勝ちました。政策はやりやすいということですね。

有本)ただ、民進党も世代交代の時期にあって、私の親しい人も立法委員の選挙に出ます。若くて外国留学帰りで、これからの台湾を台湾人の国としてどうして行くかと考えている世代が、初チャレンジするようなところへ来ています。選挙基盤としては強くないのだけれど、そういう人たちがどれだけ善戦して議席を取るのかが注目です。

飯田)台湾はメディアの接し方によって支持政党も違うというか、メディアの中立性というところでは、新聞は中国国民党寄りが多いですね。

有本)既存の大メディアは中国国民党寄りです。ただ台湾に関して言えば、日本よりもある意味で選択の幅はあって、ケーブルテレビなどは民進党寄りです。民進党支持者はこのテレビしか見ないような局もあったりして、日本の地上波の論調が各局で近いようなものとは少し違います。しかし台湾の選挙にも問題はあって、政策の中身というよりは、やはり人気取り選挙なのですよ。そこも含めて、蔡さんは大勢を決めたけれど、立法委員の選挙がどちらに転ぶのかは予想がしづらいです。

飯田)人気取りの部分を使って、統一地方選のときには民進党が負けました。あのときは韓国瑜さんが台風の目になったけれど、それにも中国の工作が相当入っていたようです。

有本)今回の総統選にも入るだろうと言われていて、昨年(2019年)の夏に台湾へ行ったときも、民進党サイドは相当に警戒していました。既にフェイクニュースがどんどん流されていて、いろいろなシステムに中国側が入り込むことを警戒していたのですが、総統選に関しては香港のデモが有利に働きました。ここへ来て、台湾でも将軍が亡くなるという事態が起こりました。

飯田)参謀総長がヘリコプター事故で亡くなりましたね。

台北郊外のヘリコプター墜落現場に駆け付けた台湾の救助隊[台湾消防当局提供](台湾)=2020年01月02日 写真提供:時事通信社

不安定な情勢だからこそ蔡氏の支持が高まる“不安定の安定”

有本)これに関しては、蔡さんが選挙運動を中止して対応に当たりました。台湾で言うと不安定の安定、安定の不安定と言う人がいるのですが、つまり不安定な状況が見えたとき、人の気持ちは安定へ動くわけです。変に安定しているときは不安定な方向へ動くものですが、それが如実に現れると言われています。いま、周辺を含めて中国との関係が不安定感を増していますが、蔡さんが強いリーダーシップを見せることによって、安定している人に任せるべきだと。未知数の人に政権を任せるのは危険だという心理が大きく働きます。これが、立法委員選挙にどこまで影響するのかというところです。

飯田)それによって、台湾で起こることが日本に影響します。

有本)そういう意味で言うと、中国からのいろいろな工作を阻止するために、反浸透法案というものを可決しています。

飯田)大晦日に可決しました。

有本)前々から言われていたのですが、これを可決したのはかなり大きいです。この動きが日本に波及すればいいのですが。

飯田)それがIRの話などにもつながりますね。

有本)俗に言うスパイ防止法のようなものです。それから、外国のあらゆる工作を排除するための権限のようなものです。こういうものを特定の機関に与えて行く。それと、調査をする権限というもの。いままで公安などが緩やかにやって来たような事柄ではない、もっと強い形でいろいろなところへ調査をかけて行くことができるのかどうか、諜報機関をもっと充実させることができるのかどうかです。日本がむしろ影響を受けてくれるといいのですが。

台湾の立法院(国会に相当)が本会議で、「反浸透法案」を与党・民主進歩党の賛成多数で可決した。同法案に反対し、本会議場で座り込む野党・中国国民党の立法委員ら=2019年12月31日 写真提供:産経新聞社

外国の工作に対する更なる対抗手段が日本にも必要

飯田)ツイッターで“さばみそ”さんから、IRの話に絡めていただきました。「以前、現場系の人材派遣会社に勤めていたけれど、公安の人が何度か来ました。結局はスパイ防止法がないから、公安の人は緩やかな監視をし続けるしかなかったようです」。

有本)日本の公安や調査機関は、実はけっこう優秀なのです。北朝鮮関係に関しても、アメリカがびっくりするような金ファミリーに関する深い情報を、日本の調査機関が持っていたとも言われています。我々にも接触があります。彼らは相当いろいろなことを知っていて、その上で私たちと情報をすり合わせるような形で、さまざまなことを聞いて来ます。そういう仕事のやり方を見ていても、他の国だったらもっと踏み込める部分があるのだろうなということは感じます。これだけ日本を取り巻く情勢が緊迫しているなかで、いままで通りというのは、国の安全を守る上で非常に問題があります。日本もそこを1歩乗り越えるために、いまの台湾の姿が日本に波及してくれた方が、日本の安全保障のためにはいいと思います。

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