新たな局面を迎えた香港~台湾との連携も
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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(11月11日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。活発化する香港の抗議活動について解説した。
香港でゲリラ的な抗議活動
香港で9日、抗議デモに参加していて死亡した大学生の大規模な追悼集会が開かれ、およそ10万人の市民が参加した。香港市民の怒りは強まる一方で、10日にはゲリラ的な抗議活動が行われ、各地で警察との衝突が発生。また香港の九龍地区や新界地区では10日、一部デモ隊が地下鉄駅の改札口や親中派とみなす飲食店を破壊した。
飯田)11日も学生の追悼集会が行われる他、通勤の妨害、ストライキが呼び掛けられているということです。
須田)デモ参加者に対する警察の攻撃によって、初の死者と言われていますが、これまでも不審死は多いのです。警察に拘束されて所在が不明になった人、帰って来ない人、何らかの事情で警察の拘置所のなかで亡くなられた方などを含めると、香港市民の間では別に初の死者ではない。これまで数十人の死者が出ているのです。それが初めて公式的に認められた死者になり、これまでの経緯もあって怒りが爆発している。香港は新たな局面を迎えたのではないかと思います。燎原の火のごとく数も広がって、香港政庁あるいは中国サイドはどういう手を打つのか。中国国内と違って、香港では情報統制が効かず、すべてガラス張りになっている。世界が監視しているなかでは、下手な手は打てません。ここへ来て、香港市民と台湾との連携がかなり目立っています。これが台湾問題に飛び火しかねないというところで、決め手になるような手が中国政府も打てない。そんな状況に置かれているのだと思います。
飯田)先週でしたか、習近平国家主席と香港のトップである林鄭月娥氏が会って、治安の回復が第1だという話もした。香港の担当の韓正副首相とも会い、締め付けが強まるきっかけになるのではないかと言われていましたけれども、そうなって行く感じですか?
日本だけが中国に対して融和策を取っている
須田)韓正氏という人はトップ7の1人ですから、習近平国家主席の側近中の側近ということもあって、これは国家主席の威信にも直接関わって来る問題です。そうは言っても、一体どうしたらいいのか。香港の状況を見ているのは日本以外の先進各国です。日本だけが中国に対して融和策を取っている。しかも来年(2020年)、国賓待遇で迎える予定になっています。これは世界的にも異質な対中国対応です。ヨーロッパ各国、アメリカは中国に対して非常に厳しい対応で臨んでいる。そういう国際的な包囲網が敷かれているなかで、中国としても身動きが取れない状況になって来ています。国際社会のなかではチベット問題にまで飛び火しているわけですから、習近平国家主席としては次にどういう手を打つのか。この次の一手を強行策に打って出ると、また大変なことになると思います。
飯田)いい加減、国際社会も見ているだけではなく、となるのでしょうか?
香港から米での貿易上特恵国待遇がはく奪されるとダメージの大きい中国経済
須田)アメリカ議会において、香港人権・民主主義法案が成立しました。あとはトランプ大統領の署名があれば、法律は有効になります。香港はアメリカから、貿易上の特恵国待遇を受けています。中国本土はそうされていません。これがはく奪されるという状況になると、中国経済にとっても大きなダメージになります。
飯田)特に外国からの資金流入の窓口に、いままでもそうだったし、いまもなっている。例えばドルの供給が止まることになると、中国経済はたまらないですよね。
須田)ドルの供給が止まることに加えて、香港に進出している外資が一斉に香港から逃げ出すという状況になれば、大きなダメージになると思います。
飯田)ただ、その外資も退いてしまって香港のメリットがなくなると、北京にとっては潰しやすくなるのではないかと指摘する人もいますが、どうでしょうか?
中国共産党の特権階級にとっても特別な香港の存在
須田)香港という特殊な存在を利用していたのも、北京なのです。中国共産党の特権階級は、香港に蓄財をするという形を取って来た。これは習近平国家主席ですら例外ではありません。それがなくなってしまうと、香港に蓄財したお金はどこに行くのかという話にもなります。
飯田)そうすると、潜在的なエリートたちの習近平氏に対する不満も高まって来るし、体制が揺らぐことにもつながる。
須田)そうですね。中国経済、金融システム含めてクローズなシステムになっています。フルオープンな香港があることによって、うまい具合に使っているわけです。その役割をなくしてしまうとなると、確かに金融センターが上海などに移っていますけれど、香港の存在というのはそれだけではないですからね。
飯田)ある意味で清濁併せ呑むから、香港の使い勝手がいいと。
須田)必要だということですね。
飯田)先ほど台湾の話も出ましたが、台湾は総統選の真っ最中です。2020年1月11日には、もう投開票を迎えるということですが、いまは蔡英文さんが有利になるという感じですかね。
須田)そうですね。台湾のなかの一定勢力、少数派ではありますが、台湾独立を標榜しているグループもいるわけですから、その辺も含めて香港との連携・連帯の動きが出て来ている。台湾と香港が連携し始めると、台湾としても、香港で抗議デモをしている人たちにとってもウェルカムですよ。そうなると、新たな局面を迎えることになります。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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