黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、児童文学作家・那須正幹が出演。スランプについて語った。
黒木)今週のゲストは「ズッコケ三人組シリーズ」などで知られる、児童文学作家の那須正幹さんです。自分で原稿を持ち込んだことがないそうですね。「書いてください」という注文が来る人生だったとおっしゃいましたが、書くのは早いのですか?
那須)早いですね。ズッコケの場合は半年に1冊ですが、その半年の間にどういう話にしようかと考えます。2ヵ月で書き上げます。その間に他の仕事もしていました。
黒木)「もう書けない」というときはなかったのですか?
那須)先輩の編集者の方は、「那須さんは絶対にスランプが来るよ」と言っていました。ですので、いつ来るのだろうと思っていましたが、この51年間、スランプというものはまったく体験していません。書き終わると次の作品の構想を、夜寝るときに頭の片隅で考えていました。
黒木)那須さんの頭のなかは、物語の宝庫ですね。
那須)その点ではまったく苦労しませんでした。
黒木)閃くということは才能だと思うのですが、次から次へと書かれて223冊。この原動力は何だと思われますか?
那須)好きこそものの上手なれではありませんが、話をつくることが好きだったのだと思います。それと体力ですね。
黒木)息抜きはどうされるのですか?
那須)船を持っていたので、70歳までは船で釣りをしていました。あとはよく山に登りながら話を考えていました。
黒木)やはり頭のなかは動いているのですね。釣りをしながら、構想を練っていたのですね。
那須)釣りのときだけは、構想を練ることができませんでした。
黒木)魚に夢中なのですか?
那須)魚だけはね、魚と勝負をしなければならないので。いかにして釣ろうかということばかりを考えていました。山登りは歩くだけですので。
黒木)そうなのですね。では、釣りが唯一のストレス解消、気分転換になったのですね。
那須)次の作品の間というより、1週間に1回は行っていました。
黒木)釣りに出られると、どのくらいの時間釣っていらっしゃるのですか?
那須)丸1日です。本当の釣り師は朝3時くらいからなのですが、私は9時くらいから出て、4時くらいまで釣っていました。
那須正幹(なす・まさもと)/児童文学作家
■1942年、広島市生まれ。
■島根農科大学林学科(現在の島根大学生物資源科学部)で森林昆虫学を専攻。
■卒業後、東京で自動車の営業マンとして働くも、2年ほどで辞め、広島の実家に帰省。実家の書道塾を手伝うかたわら、広島児童文学研究会に入ったのをきっかけに児童文学の創作を開始。
■1970年、『首なし地ぞうの宝』が第2回学研児童文学賞佳作に入選。1972年に学研から刊行され、作家デビュー。
■1978年からは『それいけズッコケ三人組』に始まる「ズッコケ三人組」シリーズを発表。その後、3人の40代を描いた「ズッコケ中年三人組」シリーズも執筆。全61巻は累計2500万部という大ベストセラーとなり、2015年に完結した。
■現在までに出版された単行本は220点以上。ノンフィクションからSF・ミステリー・ユーモア・時代物・冒険物・文芸物など、さまざまなジャンルで作品を発表された。
■2019年度JXTG児童文化賞を受賞。
◎「ズッコケ三人組」シリーズ(1978~2015年)
■全61巻、累計2500万部の大ヒット児童文学。
■元気いっぱいだけどおっちょこちょいの「ハチベエ」、物知りなのにテストは苦手な「ハカセ」、体が大きく動作がスローモーな「モーちゃん」の小学6年生3人組が、短所を補い合って、探検や事件解決に活躍する物語。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳