新型コロナ、東京五輪開催でも経済効果減~消費を促すには大胆な策を
公開: 更新:
ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月19日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。政府の検討する現金給付による緊急経済対策について解説した。
政府が緊急経済対策として現金給付を検討
政府は19日午後7時からの専門家会議に先立って、総理大臣官邸で同日午後5時30分ごろから新型コロナウイルスの実体経済への影響に関する集中ヒアリングが行われた。
安倍総理大臣)何としても雇用は守り抜かなければいけないと思っています。そのためにも個人あるいは中小規模事業者の皆様が事業を継続できる状況をつくり、その支援を徹底的に行っていきたいと思います。そして、いまの段階では感染の拡大防止や重症化の防止、これを収束するために全力を尽くしておりますが、その先には日本の経済が無事回復できるようにさまざまな対策を取り、思い切った経済政策を進めていきたいと思っています。そうした政策をつくっていく上においても皆様方にどんな困難があるのか、現状についてどのような政策を政府に望んでいるのかということを率直に皆様からお話をうかがいたいと思います。
森田耕次解説委員)こう述べて、緊急経済対策の策定に向けて総理官邸で企業や個人から意見を聴取して、その冒頭で総理は実際のニーズを把握しながら政策を練り上げていきたいと述べました。政府与党は緊急経済対策の柱ということで、国民に現金を配る現金給付を検討しているということです。2009年のリーマンショックの後に、1人あたり1万2000円の定額給付金を配りました。この額は上回りそうですが、給付の方向のようです。
佐藤)現金はやめた方がいいと思います。先行きが不安なので、少し余裕のある人は使わないで貯めてしまうと思います。
森田)リーマンショックの後も、貯蓄に回ってしまったのですよね。
現金給付では貯蓄されてしまう~期限付き金券にすべき
佐藤)雇用の確保もそうなのですが、重要なのは消費の落ち込みのなかどうやって経済に刺激を与えるのかということですから、これは金券がいいと思います。1年間という期限をつけて、限りなく貨幣に近い金券で、例えば公共料金の支払いや定期券の購入などにも使えるもの。それから、子どもの給食費や塾の支払いにも使えるような金券。その金券を出して1年くらいの有効期限を設けておけば、使わなければなくなってしまいます。そうしたらみんなが消費するから、消費させる方向で現金以外がいいと思います。貯め込むことができない方が底上げになると思うし、それだったらみんな使えます。
森田)確かに、地域の商店街でしか使えないと縛られてしまうと難しいのですよね。
佐藤)縛らないで一律に使えるもの。金券ショップに売る人がいるかもしれませんが、限りなくお金に近いものだから、割引率だって2%くらいにしかなりません。
森田)所得制限もつけずに、ということですね。
大胆な国債発行を行うべき~逐次投入では効果が薄い
佐藤)もちろんです。所得制限をつけると、社会の分断を生んでしまいます。全体の底上げをするのがいいと思います。そして、その先には財源の確保があるから、これは国債発行に踏み切っていいと思います。戦力の逐次投入をしないで、例えば1軒あたりに1人2万円の金券を配布する。家族3人だったら6万、4人だったら8万。そして財源に関しては国債を大規模に発行するくらいのことをしないと、逐次投入をしていたら効果が薄れてしまいます。大胆なことをして欲しいです。
森田)補正も20兆円規模という話も出てきていますが、アメリカは100兆円規模です。
佐藤)20兆円規模では少ないです。20兆円ということを役人たちが積み上げてきたら、それは政治判断で40兆円だったら何ができるのか組み立てさせるような政治主導のことをすべきです。
森田)それくらい引っ張って欲しいと。
佐藤)オリンピックが非常にファジーなことになっています。オリンピックをやるとしても、当初見込んでいた経済効果はありませんから、そこまで踏まえたところで組んで欲しいのですよ。この場合というのは国債を発行してでも経済を上向かせて、それを後で償還していく道筋を立てていく。いまは緊急事態ですから、やむを得ないと思います。
森田)景気が上向かなければ税収も伸びませんからね。
3連休、大阪-兵庫間での移動自粛要請
佐藤)政府の専門家会議に先立って大阪の吉村知事がテレビ会議で語ったようですが、新型コロナウイルス対策として20日からの3連休は大阪府と兵庫県との間で往来を自粛するよう大阪府民に呼びかける考えを示しています。
佐藤)大阪の状況からするとそれが必要だという行政の判断ですから、尊重した方がいいと思います。全国一律の話ではないですから、地域ごとにきめ細かく対応するのがいいでしょう。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。