新型コロナ経済対策~自民党内で崩れ始めた“安倍一強”
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月20日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。政府がこれまで難色を示していた地方創生臨時交付金の協力金への財源活用を認めたことについて解説した。
協力金の財源に地方創生臨時交付金活用を政府が認める
新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、都道府県などが休業要請に応じた飲食店などに協力金を支給する動きが相次いでおり、政府にその財政措置を求める声が出ている。協力金について西村経済再生担当大臣は、新たな「地方創生臨時交付金」を協力金の財源として活用することを認める考えを、19日に明らかにした。
飯田)もともと地方創生臨時交付金を協力金に充てることは、政府側が難色を示していたところもありましたが、折れた形になりますか?
東京都以外の自治体からの突き上げに応じざるを得なかった
須田)かなり折れましたね。緊急経済対策のなかで交付金については、このような使い方は認められないと枠組みが決まっていましたから、180度の転換です。背景としては、東京都がいち早く独自の財政力で、1店舗50万円、複数店舗を持っているところは100万円という協力金を決めました。しかし、近隣の県は財源がなくて追随することができなかった。もちろん近畿においても、大阪府がやりたくてもできないというところで、東京都以外の自治体から強い突き上げが来たのだと思います。それに応じざるを得なかった、というのが実態でしょう。
飯田)休業してもらうと経済に打撃があるため、緊急事態宣言についても政府側は、どちらかというと及び腰だった部分があります。最近はいろいろな声によって、一律10万円の給付も含め、方針が変わって来ている感じがしますね。
須田)これまでは大きな枠組みで言うと、自民党内においても国会の権力構造においても、安倍一強という体制で進んで来ました。ここでとうとう、その安部一強体制に風穴が空いたのかなと見ています。緊急事態宣言にしても、緊急経済対策にしても、完全に官邸主導で進んで来ました。官邸と言っても、安倍さんと周辺のスタッフだけで決めて来た。安倍さんが盤石の体制を築いているので、これまでは党や連立与党の公明党も従わざるを得なかったのですが、ここへ来て地盤沈下が進んだのです。自民党のなかにも、給付金30万円では有権者の支持が得られない、もちろん公明党の支援者からも理解を得られていないので、その辺りの不満が一気に出て来て、官邸サイドが押し切られたという形です。また地方においては、ある意味で東京都の反乱のようなことが起こり、各都道府県が追随する形となって、交付金についても折れざるを得なかった。ですから当初に思い描いた緊急経済対策とは、まったく違うものになってしまったのだと思います。
公明党の意向で補正予算も組み換えることに~岸田政調会長のメンツは丸つぶれ
飯田)補正予算についても組み換えではなく、一律10万円も最初は別で出そうという案もありましたが、結局は公明党の意向を受け入れて組み替えることになった。それで1週間、提出が遅くなるということも起こっています。
須田)最初から組み替えるというのは前代未聞の出来事です。しかし1週間の遅れよりも、第1次補正で組んでおいて第2次、第3次補正でやるよりは、よほど時間的にはスピーディーな対応になっているのではないかと思います。もちろん安倍首相の全面的なバックアップを得てですが、108兆円の緊急経済対策案をまとめあげた岸田政調会長のメンツは、丸つぶれになったのではないかなと思います。
飯田)最初に手を挙げたのは二階幹事長でしたよね。所得制限はつけるけれど、10万円でどうだと。その辺りは、党内でも主導権争いが変わって来ているところがあるのですか?
自民党内での「安倍一強」が崩れ始めた
須田)官邸と一口に言っても、そのなかにはさまざまな思惑が渦巻いています。限定的に言うと安倍首相と周辺のスタッフが、財務省の協力を得つつ108兆円、そして所得制限付きの30万円という案をまとめあげたのです。これが主導して、党や公明党の了解を得ないままやってしまった。岸田さんに対しては、「次はお前だから」というような形で協力させた。二階幹事長は蚊帳の外に置かれていたわけですから、その不満が爆発した。まったく議論に参加できなかった公明党もそうです。今後はこういうことを決めるなかで、これまでのように安倍一強で決めて行くことができなくなるのではないでしょうか。公明党や自民党、二階さんに対しても十分に配慮しつつやって行かなくてはならない。逆に考えると、これまで安倍さんとその周辺をうまく言いくるめて来た財務省にとっても、大きな誤算だと思います。
今後「消費税減税」がポイントに~ポスト安倍の行方に左右
飯田)この先の経済対策なども、党内では議論しているというようなことが出ています。政調或いは総務会で、自由に意見を言い合えるような場では「消費税を下げたらどうだ」ということがかなり出ているけれども、最終的に政調トップの岸田さんなどが「それはやらない」とした。そこにねじれがあったのですが、これも正常化されるということですか?
須田)そうですね。いま飯田さんがいちばん重要なポイントを突いたのですけれども、消費税の減税です。これについては自民党内、公明党もそうですが、要求する声の数は多いのです。それを安倍・岸田ラインで抑え込んで来た。ここが今後の大きな注目ポイントです。果たしてこれをひっくり返すことができるのか? 当然、財務省も全力を傾けて逆進に転じて来るでしょう。それはとりもなおさず、ポスト安倍の行方を大きく左右することになりますので、非常に激しい権力闘争になって行く可能性が高いと思います。
飯田)ポスト安倍と言えば、岸田さん、菅さん、石破さんなどの名前が出ていました。消費税に対してどういう発言をするのかが、1つのポイントになりそうですね。
須田)そこはぜひ見ておいていただきたい。消費税減税をポスト安倍と言われている人たちが旗として掲げ始めたら、ある意味での反乱と考えていいと思います。いずれにしても過去の自民党政権で、こういうことは度々起こっていたことです。そのなかで政策を磨き、切磋琢磨して来たのが自民党の歴史ですから、あるべき姿に戻りつつあるのかなと思います。
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