GWを前に緊急事態宣言を全国へ拡大~重要性を増す各知事の動き
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月17日放送)に慶応義塾大学教授の神保謙が出演。緊急事態宣言の対象地域の拡大について解説した。
緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大へ
安倍総理大臣)都市部からの人の移動等によりクラスターが各地で発生し、感染拡大の傾向が見られることから地域での流行を抑制し、特にゴールデンウィークにおける人の移動を最小化する観点から、全都道府県を緊急事態措置の対象とすることといたしました。
安倍総理大臣は16日夜、新型コロナウイルスの感染拡大に対応する緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した。期間は5月6日までで、新たに対象となった地域の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となる。
全国的に蔓延する“病床数不足”~各知事がどこまできめ細い指示ができるか
飯田)4月7日に発令した東京、大阪などの7都府県から、対象地域を拡大しています。期間はいずれも前回出された5月6日までということですが、全国に拡大したとなると、それだけ危機感が強いのでしょうか?
神保)当初、緊急事態宣言が出されたときに総理が強調していたのは、最大の目的の1つに医療崩壊を防ぎ、重症患者の医療体制を確保しなければいけないということがありました。しかし、非常事態宣言が出された7都府県以外の地域でも、病床数が逼迫(ひっぱく)しているのが数字に表れているのだろうと思います。記者会見のなかでは北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都でも蔓延していると言っていましたが、それ以外の山梨、滋賀、高知、沖縄などでも、予定されていた病床数の8割にまで患者の数が増えているということです。ここでしっかりとした行動自粛や規制措置を入れないと、全国的な逼迫は避けられないという判断があったのだと思います。
飯田)緊急事態宣言が出されて、どこまで何ができるのか。出されたときにもいろいろと報道されましたが、諸外国と違って基本的には要請しかできないと。この辺が政府としても歯痒いところではあるのでしょうか?
神保)諸外国と比べると、日本の法律は国民の性善説というか、行動規律に強い信頼を置かざるを得ないシステムになっていると思います。ただよく見てみると、特別措置法で重要な役割を果たすのは都道府県知事であって、特に45条のなかでは大規模施設の使用制限や停止を要請したり、市民に対する行動自粛を勧告できる権限があります。当然、感染率は都道府県の状況や事業形態によって違うので、知事がきめ細かな指示をどこまで出せるのかが、今後の重要なポイントになると思います。
ゴールデンウィークでの感染拡大を抑えるための措置
飯田)新型インフルエンザ等対策特別措置法の45条の規定ということですが、一方で感染症法の33条では、地域を区切って72時間以内の人の移動を制限できるというものも、規定としてはあります。ただ、都道府県単位や全国単位でこの法律を使うことは、想定していないということでしょうか?
神保)事態がもっと深刻化すると、人の移動の制限に関しては検疫の範囲のなかで、例えば高速道路や長距離の電車をストップするようなことに発展する余地は、日本の法体系のなかでもあると思います。ただ、いまの特措法ではそこまで想定されていないので、特にゴールデンウィークの旅行や帰省などのインセンティブがある人に、もう1度自粛を呼びかける効果を狙ったものだと思います。
飯田)ある意味、社会の空気を変えるというところで、行動を変えさせる効果があるのですね。イタリアの例では、緊急事態宣言で行動も制限しました。しかし、制限の直前に帰省のような形で逃げ出す人が大量に出て、全国へ蔓延した例もありました。今回、全国に出したのは、それも怖いという点があったのでしょうか?
神保)あらかじめ7都府県には敷いていて、自由の制限という点では、自発的な行動なのだという理解が進めば、地方に拡大したときも大きなパニックが起こることはないでしょう。でも各国の例を見ると、できるだけ強制措置は直前に強い形で出さないと、人々に予備行動を取られてしまうことがあるらしいのです。予期しない形で出さないとロックダウンはできないという教訓が、外国のなかにはあるのです。日本は違うアプローチを取ったのだと思います。
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