元・大阪府知事で元・大阪市長の橋下徹氏が4月23日(木)、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!~激論Rock&Go!」に生出演。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて国会議員の歳費を2割削減することで各党が合意した(※法案として27日に衆参両院の本会議で採決され、成立する見通しだ)が、この「歳費2割削減」を起点に、政治家・官僚の考え方について橋下氏は疑問を呈した。
国会議員歳費2割削減のまやかし~全体ではたったの5%
橋下)(国会議員歳費2割削減は)ひどいですよ。全体で貰う金額が6000万から8000万円くらいですよ。文書通信交通滞在費なんてノータックスだから、1200万円のキャッシュを貰おうと思ったら税率を考えると2400万円の収入がないと1200万円は残らないわけです。それを全部トータルすると8000万円から9000万円くらいの収入のうち1200万円分の歳費のうちの2割。240万円。全体からするとたった5%の削減。何なのですかあの国会議員は。これも何度言っても国会議員は動きません。ああいう感じだから、いま国民がバタバタ倒れている状況にどうもピンときていないのではないかと怒りを感じます。
「お願い」という「強制」~補償をしっかりとすべき
飯田)ところが、その元となっているものは「要請」に過ぎないというところですよね。お店を閉めるのも「お願い」ベースで、法律上「強制」できない。でも、これは事実上空気でもって「閉めろ」と言っているようなものですよね。
橋下)「強制」ですよ、こんなもの。
飯田)「強制」だったらちゃんと補償しろ、というのが橋下さんのご意見なわけですよね。
橋下)営業の自由を強制的に奪ったら、憲法29条3項の損失補償を必ずやらなければいけません。営業権の自由、こんなもの、人権の最たるものですよ。これを損失補償したくないものだから「お願い」という形で官僚の悪知恵で法律をつくったのですが、見てくださいよ。あんなもの「お願い」でもなんでもないではないですか。パチンコ店に電話して「閉めなかったら公表する」と。それはそれで吉村さんの判断は支持しますが、そこまでやるのだったら補償をしっかりとすべきです。辛坊さんとは考え方が合うのですが、僕は基本的に自由市場が補償されているときには倒れる会社に税金を使うのは反対なのですよ。倒れる会社は申し訳ないけれど、違う業に転向してくださいと。ただ、今回は自由市場を政治が国家の安全のために止めたのだから、ある意味共産主義体制みたいなものなのだから全面的に支えないといけないというのが持論です。ここは辛坊さんとは違うかもしれませんが。
辛坊)1つ考えておかなければいけないのは、「お願い」ベースにしているのは官僚の悪知恵ではなくて、日本では「お願い」ベースにしかできないような法体系しか存在しないわけで、憲法上も強制的に人の外出をできないようにするというと人権侵害だという声は必ず出てきます。戦後の日本の人権意識。人権意識が高いのは素晴らしいことですが、こういう人の動きを止めなければ命に係わる緊急事態に、政府はそれをできずにいまでも「自粛」にしかしていない。私も昨日、近所の駅の回りを歩きに行ったら、駅前で若い人が3人ダンスの練習を密集してやっているわけですよ。イタリアやフランスだったら警官が来て怒られる話ですが、日本はそれをやると人権侵害になるという。おかしくないですか?
橋下)それは法律をつくればいいと思いますよ。
辛坊)法律で強制して何か生じた場合。これに関しては立ち退きみたいに行政によってそこは営業しないでくださいというのとは根本的違って、ベースは病気の蔓延や戦争が始まったときみたいのものが典型的な例かもしれません。それも外国からいきなり攻撃されたようなときで、日本が自ら戦争を始めたときには政治の責任になるかもしれませんが、今回の原因は病気です。病気を止めるために新地が営業を停止したときに新地のクラブの家賃から何から全額を行政が補償する、国が補償するのは無理でしょう。
橋下)それは全額でなくても固定費の何割かは補償する。
辛坊)何割というのは無理だと思います。いまやっている中堅、中小企業への一律200万。個人、フリーで100万円上限。あるいは大阪市がやろうとしている営業停止してくれたところにはいくらということでやらないと、企業や店舗のもともとの利益率も違えば収益率も違うし賃料も違うのに、そこの何割という形の補償は無理でしょう。
政治家の腹の括り方が足りない
橋下)そこまでの補償をするから活動も止められると思うし、補償しなければ。僕は今日ラジオに呼んでもらって、仕事をして収入を貰うわけですよ。収入を貰う人と収入を貰えない人が完全に分断されて、一部の人の営業を止めて僕らみたいな収入を貰っている人の安全も確保されるというのは違うと思っていて、もし僕らの安全を守るために一部の人が犠牲になるのだったら、政治家の覚悟として財政破綻の覚悟も持ちながら札を刷りまくっていくのか、それを避けるのだったら政治家が「経済を回すけれどある程度命の犠牲も出ますよ」というどちらかの方向性を示さなければいけないと思います。
辛坊)営業補償ということになると、儲かっている店いない店、ベースの金額がいくらなのかという話になるから、私が言いたいのは財政破綻の覚悟という話で、まさに同じ話です。実際にお札を刷り倒して国と地方の借金が仮に1000兆円だとすると、今回国民1人に100万円ずつ配ろうとすると130兆円。これをお札を刷って配ると、もしかすると急に物価が上がり始める可能性もあるし、通貨が暴落する可能性もある。何が起きるかわからない。金利だけは日銀が引き受けるから金利のコントロールは可能かもしれないけれど、物価や為替のコントロールがどこまでできるかわからないけれども、いっぺんやってみる。店舗によって利益率も賃料も違うのに、そこの何割という補償はできないのだから、今回の事態を受けて死なないように1人1人が生きていくために1人1人にお金を配る方向性の方が筋はいいと思います。
橋下)お金を配っても1回限りのお金ではないから、高額所得者は税金で解消すればいいわけだから。
辛坊)もう1つの方向性として、「本当に困っている人だけにお金を配りましょう」というのだったら、生活保護を含めた安全保障が社会の仕組みとしてあるわけだから、お金がなくて死にそうな人はとにかく生活保護を自動的に受給させるから言ってこいと。騒動が収まって緊急事態宣言が終わって3ヵ月経ったら全員打ち切るからもう1回申請しろ、という既存の社会保障も活用しようと思ったらできます。
橋下)準ベーシックインカムですね。
辛坊)いろいろなことが考えられるのに、なぜやらないのだという。
橋下)政治家の腹の括り方ですよ。それだけお金を刷ることに対して恐怖心を持っている。僕は日本銀行がある程度お札を刷ってもまだ耐えられると思っているのですがここは神学論争になるから置いておいたとしても、覚悟を持って国家の安全を守るために札を刷ってやるのだということを言えば、財務省も四の五の言いませんよ。僕も知事のときには財務局の方が「黒字が、赤字が」「お金が足りない」「このままいったら大阪が破綻する」とか言うのですが、「大混乱が起きたら俺が責任を取る」と言ったら最後は財務局も「そうですか、では責任は任せます」となるのです。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)