ニッポン放送「ザ・フォーカス」(5月5日放送)に作家・元外務省主任分析官の佐藤優が出演。北朝鮮・金正恩委員長の動向について解説した。
深刻なことが起こっていた可能性は高い~さまざまな情報を流して流れを見ていた
金日成氏の生誕祭を欠席した北朝鮮の金正恩委員長について、国際社会では「死亡説」や「重体説」などさまざまな噂が飛び交った。しかし、金正恩氏が2日に工場竣工式へ出席したと北朝鮮メディアが報じた。
森田耕次解説委員)(番組リスナーの方からも)メールをいただいていまして、「先週、佐藤さんは北朝鮮の金正恩委員長について『かなり深刻な事態ではないか』とおっしゃっていましたね。しかし、元気な姿を見せたと報じられています。あの国のことですから影武者もあり得ますが、もしも健康に異常がなかったとするなら、一体なぜ重病説や危篤説が飛び出したのでしょうか」といただいています。
佐藤)私は今回完全に判断を間違えてしまったのですが、何もなかったということではないと思います。深刻なことが起きたのだと。4月15日に登場しないというのはいままでになかったことですから。
森田)金日成氏の生誕記念日ですね。
佐藤)ただし、その後持ち直したことは確かです。あと、情報の流れを見たのですね。いくつかのところに少しずつ違った情報を流してその情報がどう流れていくのかを見て、今後何かあったときの情報の流れを見たのだと思います。いずれにせよ前の(北朝鮮の)駐英公使で(脱北して)最近韓国の国会議員になった人がいますよね(※編集部注:太永浩氏)。あの人があるところでコメントしていて、「後ろに(ゴルフ用の)カートが見えるでしょう。あれは、金正日の体調が悪くなったときも使っていた」と。だから「短距離の移動もかなり難しい状況ではないか」と言っていたのですが、さすが北朝鮮出身のエリートだけあって見ているところが違いますよね。こういう細部が重要になってくると思います。
森田)なるほど。確かにさまざまな情報が流れて、韓国のネットメディアには「心臓の血管の手術を受けた」とか、CNNテレビは「重体に陥っているという情報をアメリカ当局が注視している」とか、永田町界隈でも「脳手術に失敗して危ない」というような噂が流れていたのですが、こういったものをわざと流して情報の流れを見ていたということですか。
北朝鮮の権力は金与正氏、金正恩氏の息子へ移りゆく
佐藤)そうです。それは、何とか持ちこたえられるという状況になった後の話です。ですから、何か非常に大変なことがあったのは間違いないと思います。いずれにせよこの状況のなかで北朝鮮の権力が少しずつ変わっていく可能性があります。やはり注目しなければいけないのは妹の金与正氏で、彼女のところへどういう風に権力が移っているのか。彼女で権力を完全に掌握することはできないと思うので、10数年くらいかかると思います。今度は金正恩の息子に権力を移す間の後見人に彼女がなるという仕組みも考えられます。
森田)そういう動きに入る可能性は十分にあるということですね。
佐藤)金正恩さんはこれからもあまり頻繁には登場してこないと思います。
森田)トランプ大統領も動画などが出たころには「コメントを控える」という慎重な言い方で、その後「元気な姿を見るのは個人的には嬉しい」とツイッターで話していました。アメリカも注視しているということですね。
佐藤)そうだと思います。アメリカも最終的には正確な情報は出てくるまで得られなかったのだと思います。アメリカも外交的な配慮から元気だという説を外に流していると。しかし裏の方ではかなり厳しいのではないかという保険をかける情報を流していたので、アメリカもきちんとした判断ができていなかったのだと思います。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。