感染症予防は「退却戦」~緩和と抑制の繰り返しを覚悟するべき

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月6日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。新型コロナウイルス感染症対策における緊急事態宣言の解除の今後について解説した。

感染症予防は「退却戦」~緩和と抑制の繰り返しを覚悟するべき

テレビ会議で全国知事会と新型コロナウイルスに関する意見交換をする西村康稔経済再生担当相=2020年5月5日、東京都千代田区 写真提供:時事通信社

緊急事態宣言の解除の判断、14日に加え21日も検討

西村経済再生担当大臣は5日、全国知事会とテレビ会議を行い、緊急事態宣言の解除について、安倍総理が示した14日を目処とした検討に加えて21日を目処に解除の検討を行う考えを示した。今後1週間ごとに解除の可能性を探る方向である。

飯田)4日に総理が緊急事態宣言の31日までの延長を決定し会見を行いました。引き続き対象は全国となっていますけれども、これは、部分的解除を様々な形で模索ということになるのでしょうか。

佐々木)そうですね。14日・21日にそれぞれ解除を検討する。この基準をわかりやすく示しているのが大阪独自の水準です。これが「1日当たりの感染経路が分からない患者数が10人未満」など。「患者が10人未満」ではなく「感染経路が分からない患者が10人未満」というのがポイントで、国も大阪も何をやっているのかが(世の中に)伝わっていませんが、これは要するに「ハンマーアンドダンス戦略」と「クラスター対策」の組み合わせです。

感染症予防は「退却戦」~緩和と抑制の繰り返しを覚悟するべき

テレビ会議で全国知事会と新型コロナウイルスに関する意見交換をする西村康稔経済再生担当相(右下)=2020年5月5日、東京都千代田区 写真提供:時事通信社

対新型コロナ戦略「ハンマーアンドダンス」とは

佐々木)「ハンマーアンドダンス」は自粛と行動抑制をしてハンマーを打ちます。そこで経路の分からない市中感染を減らしていきます。経路が分かっているものは増えてもしょうがない。例えば病院内の院内感染など、それはいったん置いておいて、どこから感染したか分からない人を減らしていき、それがある程度減ったら、ハンマーを止めてしばらくダンス、みんな踊っていいですよという状況に変更します。そうなったときに一部で院内感染、公的機関の中、キャバクラ、スポーツクラブなどいろいろな場所で感染経路が分かっている感染が少しずつ増えたりしていきます。そこは1人1人PCR検査をしてつぶしていきます。また増えてきてクラスターが追えなくなる、どこから感染したのか分からない人が増えてきたら、もう一度ハンマーを打って行動抑制、自粛を要請します。その繰り返しをずっと続けるという話です。

そのハンマーとダンスの境目をどうするかは大阪が出している独自の基準でおそらく国も明快な基準を示していなくて「その都度専門家会議で検討しますよ」と言っていますが、おそらく大阪の基準などに基づき判断することになると思います。これは僕も有効だと思いますし。日本は感染者数、死者数、重症者数も抑えていて、うまくやっていると思います。ただ、なかなか出口がどこなのかわかりません。要するにこのこれをやることによって緩やかに抑え込んでいって医療崩壊さえしなければ入院もできるし軽症者はホテルで治療できるから大丈夫でしょうと。やっていればいずれ1年後、2年後にワクチンや治療薬もできるし集団免疫も獲得できるかもしれない、という流れなんです。これは強権的に命令を出してヨーロッパや中国のようなやり方はとらないのは日本的だと感じます。一方で個人の自粛に頼っていますよね。政府、自治体の命令でないから個人で判断するしかありませんが。

飯田)そうですよね。自粛警察というような国が強権的にやらない分だけ世の中の空気みたいなもので縛っていくというような。悪くするとそれこそ隣組みたいな相互監視の社会になってしまわないかというようなことも最近言われるようになりました。

佐々木)5日も千葉の松戸のパチンコ店が開いているというので怒っている人が押しかけて怒鳴りあいになったと。怒鳴りあうので3密ですが。日本は国の強権は受け入れないのですが、隣組的な面倒な世間の圧力が増えてきてしまいます。ただ世間の圧力が増えるために感染が抑えられているメリットというような。ここをどう我々は引き受けるかが難しいところです。

感染症予防は「退却戦」~緩和と抑制の繰り返しを覚悟するべき

テレビ会議で全国知事会と新型コロナウイルスに関する意見交換をする西村康稔経済再生担当相(右)=2020年5月5日、東京都千代田区 写真提供:時事通信社

感染症予防というのは「退却戦」。覚悟を持つべき。

飯田)先ほど「ハンマーアンドダンス」の話がありました。もし少し緩めて経路を追えない感染者の数が増えてきたらもう1度緊急事態宣言が出るという、これを繰り返すこともあるわけですよね。

佐々木)これを何度も行い感染の波が穏やかになっていくのを期待するのが厚労省、専門家会議の考え方です。これが普通の人にとってはわかりにくいです。「緊急事態宣言が出てもなんで解決しないんだ」と怒っている人もたくさんいます。感染症予防というのは戦争で言うと退却戦みたいなもので「勝った」「万歳」と言えず、少しずつ退却しなるべく被害減らしながら逃げましょうということをやっているので、楽しくもないですし、勝っている感もないのでイライラが溜まるのもわかります。そこは退却戦であることをみんなが認識して専門家会議を非難したり罵倒するのではなく、きちんと意見を聞いて少しずつ退却していく覚悟を持つべきだと思います。

飯田)退却していてここで時間を稼ぐことにより戦局を決するワクチン、特効薬が出てくれば一気に「勝った」とできるわけですよね。

佐々木)そうですね。そこまで持ちこたえなければなりません。ただし大事なのはロジスティクスで補給です。補給なしでは死んでしまうので後方から物資や食料を送り込まなければなりません。これが政府に求められていると思います。

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飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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