いま観ても斬新! 押さえておきたいポン・ジュノ監督作品

By -  公開:  更新:

【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第836回】

ニッポン放送「Tokyo cinema cloud X」

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

第92回アカデミー賞で外国語映画として初めての作品賞を受賞。さらに監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4冠に輝いたポン・ジュノ監督。

受賞作の『パラサイト 半地下の家族』は、公開直後から日本でも大ヒット。アカデミー賞受賞を受け、その勢いはさらに増し、社会現象とも言える大きな盛り上がりを見せました。

そこで今回は、これだけは外せない! ポン・ジュノ監督初期の作品をご紹介します。

※写真はAmazonより

韓国が生んだ天才監督の思いは、「とにかく面白い映画をつくること」!

ポン・ジュノ監督の長編映画デビュー作『ほえる犬は噛まない』。連続小犬失踪事件をめぐる騒動を描いたコメディです。

中流家庭の人々が暮らす閑静なマンション。うだつの上がらない大学の非常勤講師ユンジュは、出産間近の妻に養われながら教授を目指している。しかし最近、マンションでは飼うことが禁止されているはずの犬の鳴き声が頻繁に聞こえ、なかなか出世できない彼をイラつかせていた。

あるとき、たまたま見かけた犬を地下室に閉じ込めてしまったユンジュ。一方、マンションの管理事務所で働くヒョンナムは、団地に住む少女の愛犬がいなくなったことを知り、迷い犬のビラ貼りを手伝うことになり…。

市井の人々のちょっとした“思い込み”が、日常の小さな事件を複雑にして行く様子をテンポよく描いたヒューマンドラマ。事件をめぐる登場人物のそれぞれの視点がとてもユーモラスで、ポン・ジュノ監督の緻密な演出力はこのころからすでに発揮されていたことが窺える1作です。

※写真はAmazonより

“ポン・ジュノ監督若き日の傑作”と名高い『殺人の追憶』。実際に起きた連続殺人事件をテーマにしたサスペンス映画で、韓国では560万人を越える動員数を記録。日本でもその名を轟かせた名作です。

1986年、ソウル近郊の農村で若い女性の死体が発見される。その後も、同じ手口の事件が連続して発生。地元の刑事パク・トゥマンとソウル市警から派遣されたエリート刑事ソ・テユンが捜査に当たることに。

しかし、捜査の手法も経歴も違う2人は対立。さらに、ずさんな捜査を続けるうちに事件は迷宮入りして行く…。

シュールな笑いを交えながら警察の内部事情を描く前半戦から、歯車が狂い袋小路へと入り込んで行く後味の悪さが尾を引く後半戦への導き方は、『パラサイト 半地下の家族』の演出を彷彿とさせるものも。

ちなみに本作のモチーフとなった事件は、犯人は捕まらず未解決の状態でしたが、2019年、33年の時を経て犯人が特定されたとのこと。「公開当時は未解決事件だった」ということを踏まえたうえでいま観ると、あのラストシーンはより一層印象深いものに映るでしょう。

※写真はAmazonより

ソウルの中心を南北に分けて流れる雄大な河・漢江(ハンガン)に、正体不明の巨大怪物“グエムル”が現れた! “韓国ジャンル映画の金字塔”とも呼ばれている、モンスターパニック・ムービー『グエムル 漢江の怪物』。

漢江の河川敷で小さな売店を営んでいるパク一家。ある日、店番をしていたカンドゥの目の前で、愛娘のヒョンソが巨大な怪物“グエムル”にさらわれてしまう。さらに、グエムルが保有するウイルスへの感染を疑われたパク一家は、政府に隔離されてしまうことに。

しかし携帯電話にヒョンソからの着信を受け、娘はまだ生きていると確信したカンドゥは、家族とともに病院を脱出。漢江へと向かう。果たして彼らは、ヒョンソを救い、グエムルを倒すことができるのか…。

怪獣映画の様相を呈しながらも、実は韓国社会の格差や暗部を風刺的に描いている本作。ジャンルムービーの面白さを堪能すると同時に、ポン・ジュノ監督作品の“ブレない精神性”を見出すことができる異色作です。

『パラサイト 半地下の家族』

新型コロナウイルス禍が終息し、映画館が再開された暁に是非とも観てほしいのが、『パラサイト 半地下の家族』。一大旋風を巻き起こした本作が、何とIMAX&モノクロVer.で上映されることが決定しました。

本作のIMAX上映は、北米ではオスカー獲得後の2月に1週間限定で行われ、映画ファンの間で話題になったとのこと。またモノクロVer.は、オリジナルのカラーVer.(通常版)がカンヌ国際映画祭でお披露目される前に作られた、ポン・ジュノ監督渾身のバージョンなのだとか。

すでに本作をご覧になった人も、映画館だからこそ味わえる“特別な映画体験”に触れてみて。

 

<作品情報>

ほえる犬は噛まない(写真はAmazonより)

■ほえる犬は噛まない(2003年日本公開)

DVDリリース デジタル配信中
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、ソン・テウン、ソン・ジホ
音楽:チェ・ソンウ
出演:ペ・ドゥナ、イ・ソンジェ、コ・スヒ、キム・ホジョン
原題:플란다스의 개(英題:Barking Dogs Never Bite)

殺人の追憶(写真はAmazonより)

■殺人の追憶(2004年日本公開)

Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、シム・ソンボ
音楽:岩代太郎
出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、キム・レハ、ソン・ジェホ、ピョン・ヒボン、パク・ノシク、パク・ヘイル、チョン・ミソン
原題:살인의 추억(英題:Memories of Murder)

グエムル 漢江の怪物(写真はAmazonより)

■グエムル 漢江の怪物(2006年日本公開)

Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
監督・オリジナルストーリー:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、ハ・ジョンウォン
音楽: イ・ビョンウ
出演:ソン・ガンホ、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ、コ・アソン
原題:괴물(英題:The Host)

パラサイト 半地下の家族

■パラサイト 半地下の家族

大ヒット公開中
監督・脚本:ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン、チョン・ジソ、チョン・ヒョンジュン、パク・ソジュン
原題:기생충(英題: Parasite)
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト http://www.parasite-mv.jp/
※IMAX&モノクロVer.での上映に関する詳細は、公式サイトをご確認ください。

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/


Page top