海外から「新型コロナ対策はミステリーだ」と言われた最大の要因
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月29日放送)に北海道大学教授・国際政治経済学者の鈴木一人が出演。東京都小金井市、福岡県北九州市、北海道岩見沢市の各地で複数の感染症患者が発生し、クラスターの疑いが出ているというニュースについて解説した。
新型コロナウイルスの第2波か、各地でクラスターとみられる現象が発生
東京都では28日、新たに15人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、3日連続で感染者が2桁に達した。東京小金井市の武蔵野中央病院で、28日までに職員4人と患者5人の感染がわかっており、検査を進めている。緊急事態宣言の解除後、都内で初のクラスター発生とみられ、東京都は厚生労働省にクラスター対策班の派遣を要請した。また、福岡県の北九州市や北海道の岩見沢市などで集団感染、クラスターの疑いが出ている。
飯田)28日の新たな感染者は全国で65人ということで、緊急事態宣言解除後では最多となっております。岩見沢の件は現地でも大きく報道されていますか?
鈴木)北海道のなかでは懸念される問題として、クラスター発生の問題もありますが、感染が収束し、北海道の場合は第3波ということになりますけれども、第3波が来ることに警戒をしています。
海外から見直されている日本の対策
飯田)もともと外国人観光客の方から日本に入って来たのですが、北海道はその最前線で、2月くらいから関わって来ました。政府の対応などはどう思われますか?
鈴木)最初は中国から入って来て、「さっぽろ雪まつり」で拡がり、北海道の各地でクラスターが発生しました。当初は数が少なかったこともあり、クラスター対策はうまく行って収束しました。3月19日に北海道の緊急事態宣言が解除されたのですけれども、そのあとの3連休にたくさんの旅行客が北海道に入って来て、第2波が来ました。いまは感染が減って第2波は収束しつつありますが、また第3波が来ることはあり得ることです。しかし、このような流れでクラスター対策が上手く行っているのと、外出自粛というソフトなやり方ではあれ、それなりに効果が出て、結果として感染者が減り、死者も多く出ていません。外国からは、「日本は成功した得異な例」と見られています。たくさんの死者が出て、欧米の状況があまりにも酷すぎるので、「日本はどうやっていたのだろう」ということで見直されている状況にあるのだと思います。
飯田)日本からの英語での発信もあまりないので、海外からは「ミステリーだ」と言われました。鈴木さんはご自身で説明、注意書きをつくられて、それを寄稿されています。寄稿されたことで反応は変わりましたか?
鈴木)変わって来たと思います。最初は、ミステリーだとか陰謀論的な、「わけのわからない日本」というように受け止められていました。
飯田)隠しているのではないか、などと言われました。
鈴木)「そのようなことはない、日本は戦略を持ってやっているのだ」ということを雑誌に投稿したところ、それがかなり読まれたようです。外国特派員の会で話す機会があり、そのためか、その後も海外メディアから取材を受けるようになりました。一生懸命に説明したので、「日本もそれなりに考えてやっていたのだ」「最初から戦略を持ってやっていたから、このような結果が出た」ということが理解されるようになって来ました。
情報発信能力の弱い日本政府~総理の説明を聞いても、何をやっているのかわからない
鈴木)もう1つの問題は、日本政府のメッセージがあまりにも弱いということです。安倍総理の話を聞いても、「何をやっているのかわからない」というのがミステリーの1つだったと思います。日本政府は情報発信能力が弱いです。外国の人たちに「どのように受け取られるのか」という受け手目線がないまま、一方的に、わかりにくいメッセージを出していたということが、大きな問題だと思います。私は専門でもないのに、外国に向けて説明する役を引き受ける格好になってしまいました。
飯田)これは日本人の、緩い行動制限でもみんな言うことを聞くという気質の違いであるとか、保険医療の構造が強固であるというところに由来する部分が大きいのですか?
鈴木)いろいろな要素が考えられますが、早い段階から、専門家会議に副座長の尾身先生や押谷先生、西浦先生という感染症のエキスパート、経験者が多く参加して、彼らが戦略をつくったということが大きいと思います。日本は感染症に対するリスク、福島第1原発の事故のときもそうでしたが、見えないものに対するリスクを回避することへの向き合い方が慎重なのです。それが効いたのだと思います。できるだけ感染したくない、感染させたくないという気持ちが非常に強くて、「であれば我慢しよう」という気持ち。自分の利益や欲望よりも、みんなのことを大事にするという社会だということを感じます。
飯田)ここで油断せずに「次が来るぞ」ということで、いまのうちに備えておかないといけないところもあるわけですね。
鈴木)医療体制もそうですけれども、日本はPCR検査の量にしても、ICUの病床数にしても足りません。いまは感染者数が少ないので、何とかなっていますけれども、感染爆発が起こればまた足りなくなる、人も足りずに医療が逼迫(ひっぱく)することは大いにあり得るので、十分に備えておかなければならないと思います。
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