アフターコロナ~世界経済はどのような状況になるのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月25日放送)に第一生命経済研究所 首席エコノミストの永濱利廣が出演。イギリスが5Gの通信網構築で中国のファーウェイの参入を制限するというニュースについて解説した。
イギリスの5G、ファーウェイ参入撤回~コロナによって信頼を失った中国
イギリスのジョンソン首相は次世代通信規格5Gの通信網構築で、中国通信機器王手ファーウェイの参入を制限する方針だと、イギリスのデイリー・テレグラフが伝えた。2020年1月、イギリス政府はファーウェイの5Gネットワーク参入を部分的に認めると発表していた。
飯田)これはコロナの影響もあるのでしょうか?
永濱)大きいと思いますね。コロナがイギリスに蔓延した辺りから、ジョンソン首相もこのことをかなり取り上げていました。取引ごとというのは信頼関係が重要なわけですが、コロナ後の中国の動きを見ると、感染者数の数字を隠したりして、かなり信頼感を落としたのではないでしょうか。一部報道では、アメリカに配慮という話もありましたけれど、中国の情報通信系の動きを考えますと、危険だというところは明らかだと思います。
飯田)ジョンソンさんご自身もコロナウイルスにかかりましたからね。
日本は中国に対してどうするのか
永濱)これは究極的なところから言うと、安全保障的な面と経済効率をどう考えるかというところに行き着くと思います。医療の話もそうなのですが、今回のコロナで、それまでは経済効率一本槍で来ていたのが、ある程度は社会保障や安全保障というところを重視せざるを得なくなって来ています。となると、こういう情報通信面やサプライチェーンも含めて、各国は考え直さなければいけません。そのなかで、イギリスはこういう動きを取りましたが、私は個人的に、日本がどういう動きを取るのかというところに注目しています。中国とあまり敵対的な関係にはなりたくないでしょうし、ポジショニングが難しい。
飯田)安全保障や経済、コストに対する見方のようなものが、これから先は変わって来る。そうなると、日本だけが、そこで経済一辺倒にやっていると取り残されてしまうということがあるわけですか?
今後は世界的にデフレ状況になりやすくなる~財政政策をどれだけ出せるかが重要に
永濱)こうなった以上、経済効率で考えたら、これまでのグローバル化の流れも一旦止めざるを得ないでしょう。ただ、そこで私が懸念しているのが、いままで経済効率重視でやって来たのを、ある程度、安全保障や社会保障を重視するとなると、経済成長面では、過去程は期待できなくなる可能性もあります。需要不足になり、世界的にデフレ的な状況になりやすいのではないかと思います。それこそ各国の財政政策的な部分が非常に重要で、それだけ潜在成長・経済成長が下がって来ると、いわゆる中立金利的な部分も下がってしまうため、金融政策にも限界が出て来ます。そうなると、財政政策が非常に重要になります。そこで財政政策をどれだけ出せるか出せないかによって、成長度合いが変わって来ます。いまの状況を見ると、アメリカは相当やっているので、あまり問題はないのですが、ヨーロッパや日本は大丈夫かなと。より経済のコントラストが出て来てしまう可能性もあるので、そういう面にも波及する話なのではないかと思います。
飯田)なるほど。民衆としては、どんどん財政支出をして欲しい。では、その余力があるのかというところ。そうなると今度は財政制約というか、いままでであれば、インフレである程度返せるというところが、難しくなって来る可能性もありますか?
永濱)でも、逆に言うと、これまでインフレになる前に財政を締めたところが問題だったわけで。
飯田)日本はそればかりでしたものね。
永濱)結局、これだけ経済がシュリンクするということは、日本の企業ほどではないにしろ、世界の企業も内部留保や、そういう部分をより重視するようになってしまうということになり、民間部門でかなり過剰な貯蓄が世界的に拡大するということになると、裏を返せば、それだけ金余りな状況ですから、インフレになりにくいわけです。
飯田)逆に言えば、政府が使わないと、本当にデフレになってしまいますよと。
永濱)はい。経済学的に考えても、完全雇用というか、経済が正常化しないと財政制約などはありません。経済の最先端の部分では、そういう議論が広まって来ていますから、何とか日本もそういう考え方の転換が進んで欲しいと思います。
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