ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月15日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。米アトランタで起きた警察官による黒人男性射殺事件から、アメリカにおける人種差別の問題について解説した。
アメリカ・アトランタで黒人男性射殺
アメリカで黒人に対する警察官の過剰な暴行などが問題視されるなか、12日、南部ジョージア州で警察官が黒人男性を射殺する事件が起き、地元の警察署長が辞任に追い込まれた。
飯田)死亡した黒人男性が、ドライブスルーエリアに停めた車のなかで寝ていて邪魔だということで通報があった。アルコールが検出されたので、警官は男性を拘束しようとして格闘となり、男性が警官の持っていたスタンガンの一種、テーザー銃を奪って逃走しながら、そのテーザー銃を警官に向けたところで警官が発砲したという流れです。
須田)過去のアメリカであれば警官が発砲する、場合によってはそのために命が奪われてしまうということは、往々にしてあったケースです。ただ、いまは時期が時期だからということで、さすがに南部とは言え、警察署長が引責辞任することになった。警官は免職に追い込まれました。いまのタイミングだからこそ、なのだろうと思います。
毎年100人以上の丸腰の黒人が白人警官に殺されている~アメリカに深くある土壌
須田)過去にミネアポリスで起きたような事件、丸腰の黒人が白人警官に殺されるというケースがどのくらいアメリカで起こっているのかを、いろいろなメディアの報道ベースに調べてみました。そうすると、毎年平均して100人以上の丸腰の黒人が警官に殺されているのです。丸腰ですよ、今回のケースは警官から奪ったテーザー銃を向けたということですが。場合によっては、黒人だから殺されたのではないだろうかということが窺えるようなケースが毎年発生していて、それが土壌になっているのです。そこにミネアポリスの一件があった。動画がSNSで拡散されたから、ということが前提になっているのですけれども、あれで火がついてしまった。通常はこのような土壌がなければ、いかにアメリカでもあの一件だけで暴動が起きることはなかったのだろうと思います。日常的に全米でそういうことが繰り返されていたからこそ、発火してしまったのではないかと思います。
飯田)この種の事件によって起こる抗議活動が、数年に1回繰り返されるのは、そういう事情があるのですね。
須田)ただその一方で、警官が理不尽に命を失ってしまうというケースも多々あります。だからそのバランスですよね。警察官の命を守るというところと、市民、特に黒人の人権をいかに守るのかというところのバランス。非常に難しい問題が突き付けられているのだと思います。
飯田)そこには銃社会というものが1つ絡んで来ることもありますよね。
須田)それと差別という問題でしょうね。1950~1960年代の公民権運動から始まって、黒人の差別問題について、アメリカ社会は相当な努力をして来ました。イリノイ州の州都であるスプリングフィールドは、もともとリンカーン大統領が弁護士時代にその活動をしていて、そこから大統領選挙に出馬したという、黒人差別にアメリカ社会がきちんと向き合って行こうという原点になった都市です。そこには全米から子供たちが修学旅行や社会科見学で訪れて、差別という問題について勉強して行こうという場になっています。そういう努力が繰り返されていても、なお残る差別という問題。アメリカ社会が抱えている病巣と言えるでしょう。人種差別という問題について、今後どう乗り越えて行くのかというところが問われているのだと思います。
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