米黒人男性死亡事件~アメリカの抱えている“宿痾”によるもの
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月1日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ミネアポリスで起きた黒人男性死亡事件について解説した。
黒人男性死亡事件、全米各地で抗議デモ
アメリカ中西部ミネソタ州のミネアポリスで25日、黒人男性が白人の警察官らに拘束された際、首を膝で押さえつけられて死亡し、全米各地で警察の対応に抗議するデモが1週間にわたって続いている。事件が起きたミネアポリスでは一部参加者が暴徒化し、スーパーで商品を略奪したり警察署に放火したりしたため、州知事は州内の騒乱がもはや男性殺害と「何の関係もないものになっている」と述べ、州兵の動員をするという異例の措置を発表している。
飯田)首都ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスなどでもデモが行われています。
黒人だけではなく、さまざまな人種から抗議の声があがる~結果的にフラストレーションの発露の場所になってしまっている
須田)これはいくつかの特徴がありまして、全米各地の映像を観ても、黒人の方々による抗議活動・抗議行動、デモだけではなく、アジア系や白人系からも声があがっている状況です。もう1つが、過去の事例からも言えるのですが、そもそものきっかけは黒人に対する強烈な差別です。これがトリガーを引くのですが、結果的に、「フラストレーションの発露の場所になってしまっている」というケースが往々にしてあるのです。
飯田)それに対しては、左右両派からの批判が出ていて、「この活動は黒人の権利に対して何も資するものがない」と。また、トランプ大統領は「左派の極端な人たちが先導して暴力を煽っているのではないか」というような指摘もしています。主張とは関係のないものになっているということです。
須田)そうですね。ただ、もともとのきっかけが、理不尽な形で黒人の方が亡くなられたということです。なぜそんなことが行われたのか。これはアメリカの宿痾のようなところがあります。特にミネソタ州というのはカナダとの国境に接している、北欧系、北ヨーロッパからの移民の方が多い地域です。この警官の方も、苗字を見るとそうではないのかと思います。そういう点で言うと、全米のどこでも起こり得ることなのです。通常、こういう事件は南部や黒人差別の強い西海岸の方で起こるのが一般なのだけれども、こういう地域でも起こる、どこでも起こるのだろうなと思います。
一方で「平等の精神」が草の根にあるアメリカ
須田)ただこのような差別に対して、かねてからアメリカは教育の現場でも、平等の精神ということを伝えて行こうとしています。イリノイ州の州都のスプリングフィールドという片田舎があります。静かな街なのですが、スプリングフィールドが全米で有名なのは、例のキング牧師が「私には夢がある」ということを演説した議会があることに加えて、もともとリンカーン大統領がここで弁護士をやっていたというところなのです。
飯田)奴隷解放の、あのリンカーン氏ですね。
須田)オバマ大統領が出馬する際、スプリングフィールドから列車に乗ってワシントンに向かうというデモンストレーションを行いました。
飯田)列車の後ろのバルコニーのところで演説したという。
須田)あれはリンカーン大統領を意識したのです。
飯田)そういうことだったのですね。
須田)そういう人権や差別に対して聖地になっている地域なのです。ですから、もちろんイリノイ州の小中学校を含めて、近隣の州の子供たちの社会科見学や修学旅行の地域に、スプリングフィールドはなっているわけです。そういうところで人権や人種差別に対して、徹底的に教育しているのがいまのアメリカです。何もやっていないわけではないのです。そういう意識が草の根にあるはずなのに、こういうことが起こってしまうというところに、アメリカの抱えている宿痾があるのではないかと思います。
飯田)コロナの影響で景気も下がって失業者が増えたり、社会不安が高まると、どうしてもこういうことが出て来てしまうのですね。
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