ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月22日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。イギリスが香港との犯罪人引き渡し条約を停止する方針を発表したニュースについて解説した。
イギリス政府が香港との犯罪人引き渡し条約を停止
イギリス政府は7月20日、香港との犯罪人引き渡し条約を即日かつ恒久的に停止する方針を明らかにした。中国による香港国家安全維持法の施行を受けたもので、ラーブ外相は「条約の悪用を防ぐ明確な手段がない限りは停止したままにする」としている。
飯田)香港はもともとイギリスの植民地でした。法体系がコモン・ローということで、コモン・ロー諸国とは犯罪人引き渡し条約を結んでいました。
中国、香港と犯罪人引き渡し条約を結んでいると、国外にいても捕まってしまう
高橋)いろいろな解説をするときに、「なぜか」ということをきちんと説明する必要があります。そもそも、国家安全法の法体系をみると、普通は属地主義と言って、主権の及ぶ国内で罪を犯した人はすべて罰せられるのです。香港に行っている外国人でも、そこで罪を犯したら、主権の及ぶ範囲ですから罰せられます。「郷に入っては郷に従え」ということわざの通りです。しかし、香港の国家安全法は「域外適用」というもので、日本にいてもその法律に違反するという法体系です。私が例えば「香港の法律はけしからん。尖閣は日本のものだ」と言ったら、香港の国家安全法の分裂罪になります。ここで話すことも罪になります。ただし、日本と香港および中国の間には犯罪人引き渡し条約がないので、捕まることはない。香港の国家安全法の域外適用をそのまま認めると、犯罪人引き渡し条約を結んでいれば、そういう発言をしている人を逮捕しろと、香港政府および中国政府が言って来る可能性があります。論理的な話として。
飯田)言って来たら、受けざるを得ない。
「域外適用」することは通常の国ではあり得ない
高橋)域外適用などやってはいけません。普通の国ではあり得ないことです。域外適用をすると、犯罪人引き渡し条約を結んでいる国すべてに影響が出ます。だから、これを停止しないと自国民が危なくなるのです。「あなたの国の人は中国、香港を批判しましたね。それは国家安全法違反です。逮捕してください」と言われたときに困ります。だから香港、中国と引き渡し条約を結んでいる国は、みんな停止しないと危ないです。
飯田)こんな無茶苦茶な法律を、よく通しましたね。
高橋)恥ずかしくないのですかね。しかも中国に対しては「内政干渉をするな」と言うでしょう。域外適用なんて、猛烈な内政干渉ですよ。二枚舌も甚だしい。運用としてそういう考えを持っているということは知っていましたが、明文の規定があるとは正直思いませんでした。
飯田)そもそも明文規定もそうですが、草案が出ていません。
高橋)7月に中国語のものが出て、私はあまり中国語に詳しくありませんが、有志の人が訳しているものを読んだら、域外適用なので驚きました。香港の法律内容というよりは、域外適用すること自体に驚きました。
飯田)いろいろな国の法律がありますが、こういう適用はないですよね。
高橋)ないです。あり得ません。だってこれは、宇宙人も従わなければいけないというレベルになります。
アメリカを中心に今後、中国企業への制裁が強くなる~日本企業も引っかかる可能性が
飯田)中国との付き合い方の部分ですが、イギリスのBBCが中国大使をゲストに招いた形のトークショーが話題になっています。拘束された形で手錠もかけられていたと思いますが、目隠しされたウイグルの人たちが並ばされていて、ドローン映像ですが、列車に乗せられて行く様子が映っていました。
高橋)「どこの国の話ですか?」という反応を中国大使はしていました。でも、そういう国なのでしょうね。アメリカはウイグル問題もあって、中国企業へ輸出禁止や制裁をしています。日本の企業も中国進出する人は、対岸の火事ではありません。「あなたの企業もウイグルで何かやっていた」と言われる可能性があります。
飯田)オーストラリアのシンクタンクが、ウイグル人たちを強制労働した部品を使っている企業について指摘しています。
高橋)これは中国に進出している日本企業も、制裁に引っかかったら、アメリカ市場を失うかも知れません。そのくらい大きな問題なので、中国でビジネスをしている日本企業の人は、この辺りの動向に気を付けた方がいいと思います。
米中のどちらにつくのかを明確に突きつけられる
飯田)日本の感覚だと、米中の貿易摩擦というように報じられていますが、もはやそのレベルではないと。
高橋)全然違います。国家を分断するようになっているから、中国でビジネスをしている人は、逆にアメリカから制裁を食らう可能性があります。
飯田)それぞれの国が、どちらにつくのかを明確に突きつけられている。イギリス、オーストラリアは舵を切りました。
高橋)たぶんEUもファーウェイを締め出すかも知れません。中国はEUがファーウェイを排除したら、エリクソンに報復するぞと逆に言っています。
飯田)中国国内からエリクソンを締め出すようなことをやるぞと。
高橋)そういう状況になりつつあります。分断されることを想定してビジネスをやらないと危なくなります。エリクソンから見れば、中国から締め出されても、ヨーロッパでファーウェイの市場を取ればそれほど変わらないでしょう。
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