世界制覇を宣言したような「香港国家安全法」の恐るべき条文

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月8日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。自民党が中国による香港国家安全維持法を非難し、習近平主席の国賓来日についても中止せざるを得ないと明記した決議文について解説した。

世界制覇を宣言したような「香港国家安全法」の恐るべき条文

香港のホテルに開設された中国の治安機関「国家安全維持公署」の看板(中国・香港)=2020年7月8日 写真提供:時事通信

自民党が習近平国家主席来日の中止要請を含む非難決議を了承

香港での国家安全維持法の施行を受け、自民党の外交部会は、中国の習近平国家主席の国賓としての日本訪問を中止せざるを得ないとする非難決議を決定した。自民党は近く政府にこの決議文を提出する。

飯田)7日の政調審議会で了承されたということです。各メディアは「親中派に配慮して表現を丸めた」と書いていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

高橋)「親中派に配慮して」ですか。

飯田)「中止を求める」は「中止を求めざるを得ない」という表現にすると、丸めたことになるようです。

高橋)中国は反発しているようですね。それならそれでいいのではないでしょうか。

飯田)中国政府はパフォーマンスだとして反発しているようです。

世界制覇を宣言したような「香港国家安全法」の恐るべき条文

習近平国家主席=2020年6月22日 写真提供:時事通信

驚く内容の「香港国家安全法」~香港独立、共産党批判をすればどこにいても違反となる

高橋)なかなかに面白いですね。コロナ、香港と来て、中国問題はフェーズが変わっています。香港国家安全維持法を読むと、驚きますよ。何が驚くかというと、中身以前に「域外適用」という概念でつくられていることです。普通はどこの法律も「属地主義」が一般的です。属地主義というのは、日本国内の主権が及ぶ範囲で犯したことは、日本人も外国人も同じく罰せられます。これは当たり前のことです。香港に行って変なことを言うと、捕まってしまうのは仕方がありません。域外適用というのは、日本以外で行ってもアウトだということです。ですので、香港以外で批判をしてもアウトなのです。条文も、中国語を日本語に訳したものを読んで驚きました。少し読んでみますと、「香港特別行政区の永住権を有さない者が、香港特別行政区以外で香港特別行政区が治する本法に規定する罪を犯した場合は、本法が適用される」。要するに、日本人が他の国や日本で、香港独立、共産党批判を行うと違反になります。私のいまの発言は、この法律違反です。

飯田)そういうことになってしまいますよね。

高橋)日本にいてもそうです。これで中国は、宇宙を支配したのと同じですね。

飯田)なるほど。域外ですので、全宇宙を含めて。

世界制覇を宣言したような「香港国家安全法」の恐るべき条文

沖縄県・尖閣諸島 手前から南小島、北小島、魚釣島 海上自衛隊の哨戒機「P-3C」 から=2011年10月13日 写真提供:産経新聞社

安倍総理が習近平氏の前で尖閣の話をすれば違反になる

高橋)主権などは関係ありません。習近平さんは日本に来ないとは思いますが、来たときに、安倍さんが少しでも尖閣の話をしたら、「違反です」ということになります。驚きますよね。尖閣の話は特に、この法律に規定する分裂という話です。

飯田)国家分裂の罪ですか。

高橋)罪になります。尖閣の話を安倍さんがしたら違反だと言われる。すごい法律です。これを許したら、もう主権はありません。尖閣の周りで海上保安庁が守ると言ったら、違反になるわけです。

飯田)そうですよね。実際に行動することも違反になる。これは法律なのでしょうか?

高橋)私は冗談だと思っていたのですが、条文をチェックして驚きました。先ほど言ったそのままなので信じられません。宇宙人も違反になってしまう。地球のみならず、宇宙も中国のものですね。

世界制覇を宣言したような「香港国家安全法」の恐るべき条文

香港安全法、最高終身刑 1日、香港で行われた返還記念式典の会場周辺をデモ行進する民主派活動家ら(共同)=2020年7月1日 写真提供:共同通信社

中国との犯罪人引渡し条約を結んでいる国は停止するべき

飯田)香港と犯罪人引渡し条約を結んでいる国々は、香港でやっていた民主活動家の人たちが国外に出て、そこから圧力をかけようとするとそれが違反となり、引き渡しなさいとなる。

高橋)中国との引渡し条約を結んでいるのは、フランス、イタリア、スペイン、韓国などです。そこは犯罪人引渡し条約を停止しなければ危ないです。自国民がやられてしまいます。域外適用する法律というのを、私は見たことがありません。

飯田)このところ中国は、インドとの間でも紛争めいたものがあったり、南シナ海、東シナ海でもあった。

高橋)イギリスの「エコノミスト」誌の風刺漫画で、中国が龍として描かれています。右手でインドを押さえつけ、右足で南シナ海を押さえつけて、左足で台湾を押さえつけています。そして左手が余っていて、それがどこに向くのか。おそらく日本でしょうね。あとは尻尾で香港を巻き付けています。

飯田)なるほど。その空いている手が日本に来るのか、オーストラリアに来るのか。

高橋)左手ですので、近い日本に来るのではないかと思います。

飯田)地理的には日本だと。でもこれは笑い事ではなく、すごい話ですね。

世界制覇を宣言したような「香港国家安全法」の恐るべき条文

28日、台北中心部にある香港政府の出先機関前で、国家安全法の香港導入に抗議する香港と台湾の学生ら=2020年5月28日 写真提供:時事通信

「香港国家安全法」は世界制覇を宣言したようなもの

高橋)そういう国と、どうやってお付き合いをするのか。節度を守ってくれれば、国賓として迎えるのもなくはないと思いますが、少し状況が変わり過ぎていて、世界中を制覇すると宣言したようなものが、香港国家安全法です。

飯田)そんな国に、これから先も投資しようとする企業が、日本にもあります。

高橋)投資してもそのうち没収されるでしょう。日本の国内でも、少し批判をしたら捕まるかも知れません。犯罪人引渡し条約を結んだらアウトというレベルです。

飯田)中国本土はもちろん、いままでは安全であった香港に出張に行っても、どうなのかということになります。

高橋)香港に行けば属地主義ですので、危ないですよ。

世界制覇を宣言したような「香港国家安全法」の恐るべき条文

27日、香港のデモで、取っ組み合いになる警官隊とデモ支援者(ゲッティ=共同)=2020年5月27日 写真提供:共同通信社

香港の金融センターとしての地位はさらに落ちる

飯田)そうなると、香港の金融ハブとしての機能維持はもう無理ですね。

高橋)香港の金融センターとしての地位はガタ落ちになっていますが、さらに落ちます。ある意味で、日本は香港の機能を奪うチャンスなのです。この間の都知事選では、そういうことを争点としてもらいたかったです。

飯田)その辺りは規制の緩和なども必要でしょうし、どうするのかというところですよね。

高橋)英語特区として、金融庁の行政を金融機関向けはすべて英語にするというのがいちばん簡単です。日本に来たら、日本語訳をつくって行わなければなりませんが、それがなくなるだけでも、香港の金融機関が日本に来る可能性は出て来ると思います。

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