ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月23日に放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。22日にスタートした「Go To トラベル」キャンペーンについて解説した。
22日、国内感染者最多のなか「Go To トラベル」スタート
安倍総理大臣は22日、政府の観光支援事業「Go To トラベル」キャンペーンについて総理官邸で記者団に答え、感染予防策を徹底しながら慎重に経済活動を再開していく方針に変わりはないと強調した。
飯田)22日は国内では、最多795人の新規感染者が確認されました。
鈴木)しかし、「除外」という言葉がいつも政治センスを私は疑います。「東京を除外する」という言葉を政治家、行政はなぜ使うのでしょうか。「様子を見ながら、少しずつ段階的に進めていきます」という言い方ができないのか。議論のなかでは大阪も、もしかしたら延期の対象にという話はあったようですが、そうしたところは「延期します」といえばよいですよね。
飯田)そうですね。「延期」だとか「待機」だとか。
鈴木)そうです。「除外」だなんて。
飯田)疎外されたイメージが少しありますね。
3月からこのプランが練られていた
鈴木)毎日のように「Go To トラベル」のニュースがありますね。いろいろな賛否両論の意見はあると思います。社会活動・経済活動とのこのコロナが共存して行っていかなければならないという状況の下、このキャンペーンはアクセルとブレーキの両方を踏み分けながら実施していくなかで、この現在の感染状況をみると一部除外をしてよいのではないか。安心な地域同士でまずスタートをする。増えている東京や大阪はスタートを遅らせる。こういったことを、先週、ある番組のようなものがあり、そこで私は提案していました。
私はこの判断は間違っていなかったと思います。むしろもっと早くこうした判断をしてほしかったですね。ぎりぎりまである人は「やる」、ある人は「やらない」と言っていた。そして、世論調査をすれば国民のほうが「待つべきではないか」という意見が多くなりました。スピード感はありませんでしたが、結果として判断は正しかったのではないかなと思います。
ただ、この「Go To トラベル」の政策の立て付け、予算の使い方自体を考えた方がよいと思います。
飯田)これは第一次予算に乗っかってきている。第一次予算は4月の半ば、緊急事態宣言のなかで審議をされてきたものです。ここに旅行かというのは、あの当時からありましたよね。
鈴木)取材をしますと、「Go To」キャンペーンのようなものをぜひやってくれという業界団体はいます。これはもちろんそうですよね。
飯田)観光業界は打撃を受けたのが早かったですからね。
鈴木)これは3月からこのプランが練られて、経産省や自民党の族議員などが関わっていた。管轄の国交省の大臣はずっと公明党がやっていますよね。こうしたところに観光に関する、大変になるぞという意見が、いろいろなところからおそらく来ますよね。そして、「Go To」のようなものがおぼろげながら形になってきた。しかし、3月ですから「少し待て」と。3月は「他にやることがあるだろう」と。
飯田)そうでしたよね。
「Go To」を「Welcome To」に変えるべき
鈴木)私は1回くらいカンフル剤として、みなさんコロナが落ち着いたら旅行に行ってください。補助します、というのはありだと思います。私はむしろ「Go To」を「Welcome To」に変えるべきだと思います。
飯田)行くのではなく迎えるほうですか?
鈴木)迎える側にお金を投下するべきだと思います。つまり、観光地にお金を政府が落とします。それで観光地が独自に工夫をします。たとえば、クーポンや旅館やホテルの割引制度をつくる。なんといっても、感染対策。そうしたものにお金を使う。ここまで安全ですという部分まで観光資源をしっかりもう一度整備する。その上で皆さん来てください、割引もありますという状況にする。そして、私たちが行く。私はコロナ対策ということを考えれば、むしろ観光地のほうにお金を落として、そこでリピーターも含めてきてくれるような、しっかりとした感染対策を含めた準備をするべきだと思います。「Welcome To」キャンペーンです。同じお金を使うにもそのほうが地域の活性化にもなります。またコロナ対策というのもしっかりととれる。行く側にお金をつけたという立て付けをもう一度根本的に考え直した方がよいと思います。1回くらいは勢いづけでいいですが。そのようなことも議論するきっかけになるかもしれませんね。経済的な視点ではなく、地方を中心にした考え方にシフトをして、そこにお金を回していく。
飯田)たしかにいちばん打撃を受けている観光地だとか、宿泊施設などに行くと、そのお金の回り方として今回、おそらく代理店を利用してという方が多いと思います。そうなると結構、入金が遅れるという話があります。代理店のほうは、基本的に現金商売なので、旅行にいくよりももっと前にお金が入ってくる。ここのタイムラグがなんとかならないのか。自分のところのサイトで本当は予約してほしいと言っている観光業の方もいらっしゃいます。
鈴木)鋭い指摘だと思います。そうなると、間の旅行代理店といったところはなんとか今回の「Go To」はよいのかもしれません。しかし、実際の観光地はどうなのかということです。
飯田)少しラグが出てしまうかもしれません。
鈴木)そうですよね。観光地に「Go To」を使い旅行客の方が来たとしても、そこで何倍もお金を取るわけではありません。宿泊費は決まっていますし、ホテルによっては安全上2部屋でお客さんをひとつという。ですので、決して観光地は儲かりません。いままでの損失をカバーできるほどの制度ではありません。そうした点では、有効にお金をどこに使うのかというコロナ全般の問題です。これをきっかけに、「Go To」から「Welcome To」キャンペーンに政策をシフトすることを提案したいです。そうしたことを議論するためにも、国会を閉じてはいけないという話になります。