ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月26日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。厚生労働省が新型コロナに関連する解雇や雇い止めが4万8206人だと発表したニュースについて解説した。
コロナ関連の解雇4万8000人
厚生労働省は8月25日、新型コロナウイルス感染症に関連する解雇や雇い止めが、21日時点で見込みを含めて4万8206人だったと発表した。前週よりも2556人増え、パートなど非正規労働者が1863人を占めている。
飯田)厚労省が全国の労働局やハローワークに相談した事業所の、解雇や雇い止めの人数を集計したものだそうです。
実際の失業者は100万人以上
高橋)これは数字が違いますね。ヒアリングで行っているので対象が狭く、このような数字になっているのです。こういう計算をするときは、「オークンの法則」というものがあります。GDPの落ち込みがわかれば、その法則によって、どのくらい失業率が高まるかということが計算できるのです。GDPがあれだけ落ちているので、失業率は2~3%上がるということです。そうすると、100万人以上が失業するということが予測できます。それに比べたら、4万8000人という数字は桁が違うでしょう。ハローワークでやると、目に見えるところだけでカウントするからですが、実際の失業率はもっと多くなると思います。
飯田)4~6月期のGDPは、緊急事態宣言で経済が止まっていたということもありますが、年率換算では27%減の予測が出ています。
高橋)すごく落ちました。かなりの失業率になります。失業者は後から出て来るのがオークンの法則です。この統計は「4万人しか出ていないからと、安心してはいけません」というものです。
飯田)氷山の一角にもならないですね。
高橋)限界は、厚生労働省の人がわかっていると思います。国全体で見るときに、オークンの法則でどのくらい失業者が出て、どのように救うかということを考えます。そのために有効需要を付けて、少なくしてあげるという対策になります。私は「GDPの落ち込みに匹敵する真水を出せば、失業者が少なくなる」という言い方をしています。
2020年度のGDPは年間8%のマイナス
飯田)今年度(2020年)のGDPの落ち込みを予測するのは難しいかも知れませんが、どうですか?
高橋)1~3月期と4~6月期の半分が出ているので、あとどれだけ上がるかということです。V字回復はせず、ゆっくりだと思うので、年間8%くらいのマイナスでしょう。強烈ですよ。
飯田)ざっくり40~50兆の価値がなくなる。
高橋)なくなります。でも、日本は他の国に比べればいい方です。
飯田)イギリスは5割以上落ちていますよね。
他の国と比べればまだいい日本の落ち込み具合~復活する確率は日本が高い
高橋)ユーロ圏は4割以上も下がっています。ユーロ圏は財政出動を出しにくかったり、中央銀行に国債を買わせるということができませんから。中央銀行に国債を買わせるという手が取れるのは、日本とアメリカなので、日本とアメリカの方が財政出動は多いのです。
飯田)各々が、自国の通貨建てで国債を出すと。
高橋)国債を出して、中央銀行が買えばいいでしょう。簡単に財源づくりができます。日本はリーマンショックのときにうまくできませんでしたが、今回はやっています。そういう意味で、先進国のなかで比べると、落ち込みの程度が少ない方です。復活する確率は日本がいちばん高いです。
あと5億円出して休業補償を進めるべき
飯田)あとは経済を回すということと、感染との見合いです。
高橋)ある程度は休業補償をしないといけません。知事会でお金は出ないと言われていますが、3兆円では足りないので、あと5兆円くらい出してあげて、休業補償を進めるべきです。休業要請をして、休業補償するかどうかは首長さんに任せる形でやるのがベストだと思います。
飯田)特措法を改正して罰則まで付けると、構えが大きすぎる。
高橋)罰則を付けてもいいのですが、それならば特措法のなかに「休業補償のための財源は国が用意する」と書いた方がいいですね。地方は中央銀行を持っていないので、地方債を出して中央銀行に買わせるという手段ができません。国はそれができるので、財源手当ての部分は国が持つ。臨時交付金か何かを配れるような仕組みをつくるために、という法的根拠で特措法を直すのは賛成です。
ITシステムを整備することが急務
飯田)どういう形で給付、休業補償のお金を出すのか、いろいろな政策はあると思いますが。
高橋)今回のことで、定額給付金があまりにも滞るということがわかってしまいました。ITがうまくできていないからです。申請させて、プリントアウトして目でチェックするなどということは、理解できません。今後はマイナンバーに銀行口座を紐づけるなど、ITを整備して、スムーズで間違いが少ないようなシステムづくりをしないといけないでしょうね。
飯田)ようやく98%まで配り終えつつあるということです。
高橋)地方自治体の業務にしました。麻生さんが総理のときの定額給付金と同じやり方です。これは遅くなり、間違いが多くなると私は指摘しましたが、そうなりました。ITをもう少し早く整備しておけば、違う手を打つことができたと思います。
飯田)それこそ、最初は小切手の形にして。
高橋)違う人が銀行に行っても換金できませんので、小切手の方がまともです。ITの前は、小切手を使うやり方が世界でも普通でした。それもやらないし、給付に時間がかかり過ぎました。それならば消費税減税や社会保険料の減免の方が簡単です。
飯田)消費税を何とかね。
高橋)やればいいのに。社会保険料の減免でも、どちらでもいいですが。
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