ロシアにおける「反政府活動家取り締まり」の実態

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月4日放送)に元内閣官房参与で前駐スイス大使、現在はTMI総合法律事務所顧問の本田悦朗が出演。ドイツ政府が治療中のロシア反政府派活動家、アレクセイ・ナワリヌイ氏に、神経剤ノビチョク系の毒物が使用された証拠を確認したと発表したニュースについて解説した。

ロシアにおける「反政府活動家取り締まり」の実態

ロシアのプーチン大統領(ロシア・モスクワ)=2020年7月1日 写真提供:時事通信

ロシア反政府派活動家・ナワリヌイ氏から神経剤ノビチョク系の毒物が検出

ドイツ政府は9月2日、意識不明の重体となり、ドイツで治療中のロシア反政府派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏に、神経剤ノビチョク系の毒物が使用された証拠を確認したと発表した。ノビチョクは旧ソ連軍が1970年代から開発に取り組んだ軍用神経剤。神経伝達物質アセチルコリンの分解を妨げ、呼吸困難や心停止を引き起こして殺害する化学兵器と考えられている。1990年代にオウム真理教が用いたサリンや、マレーシアで2017年に北朝鮮の金正男氏殺害に使われたVXガスと同じく、コリンエステラーゼ阻害剤の一種と言われている。

飯田)呼吸困難、心停止を引き起こす神経性の毒物であったようですが、どうなのでしょうか?

ソ連時代はKGBに注目され、大使館員が国外追放されることも度々あった

本田)私自身、本籍は大蔵省、財務省にあったのですが、人生の半分近くは海外生活をしておりまして、ゴルバチョフが登場する直前の1985年から1987年まで、ソ連時代のモスクワの日本大使館に勤務していました。その当時からいろいろな噂がありまして、特にイギリスの大使館員が多かったのですが、マンションの最上階から転落して亡くなったというニュースが、ときどき流れるのです。自分のマンションから落ちる人はいないので、おそらく殺害されたのだろうということが、まことしやかに噂になっていました。当時の秘密警察、KGBに注目されると、いろいろな嫌がらせを受け、「ペルソナ・ノン・グラータ」と言って、外交官に相応しくないものとして否定され、国外追放ということが度々ありました。

飯田)そうなのですか。

本田)日本人でもたくさんありまして、特に防衛駐在官、あるいは政務班ですね。私は経済班だったので、それほど睨まれてはいませんでしたが、防衛駐在官や防衛省の方ですね。

飯田)駐在武官という。

本田)駐在武官です。例えば、ヤルタの軍港に行って写真を撮るとします。軍艦そのものを撮ったら、ペルソナ・ノン・グラータで追放されることがわかっているので、家族が前に立っているのです。家族に焦点を当てるフリをしながら、焦点を軍艦に当てて撮影するのです。しかし、尾行されていますから、後ろで見ています。そういうことが起こると、フィルムをすべて抜き取られてしまう。そして、ある日突然、国外追放となる。そういう例を何件か存じ上げています。

ソ連崩壊後はKGBの後継であるFSBが暗躍

本田)ソ連が崩壊した後も、そういうことが何回もありました。KGBはソ連崩壊とともに崩壊したのですが、その後継であるFSB(連邦保安庁)がありまして、このトップがもともとプーチンさんでした。そして、その職員であったリトビネンコ氏という人がいたのですが、彼はロンドンに亡命して、反政府活動をしていました。機密情報を漏洩したということで、ロシア当局から追放されてロンドンに亡命していたのです。ロンドンでも反ロシア運動をしていたのですが、とうとう2006年にポロニウムという放射線を出す物質を盛られたのです。ロンドン中心街のピカデリー・サーカスの近くの寿司屋で食事をしたら、そのポロニウムの症状が出て、亡くなりました。

飯田)あれはお寿司に仕込まれていたのですね。

本田)2006年に亡くなって、ロンドン警視庁のスコットランドヤードが捜査し、ロシアに対して犯罪人引き渡しを要求したのですが、引き渡しを拒否されました。

飯田)今回も、空港で飲んだ紅茶に毒が盛られたと言われていますし、事実をつなぎ合わせると、いろいろなことが見えて来ます。

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