それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
10円玉を握り締め、「ガチャガチャ」をやった日のことを覚えているでしょうか? 正式には「カプセルトイ」と言って、アメリカから日本にやって来たのが1965年(昭和40年)。今年(2020年)で55年が経ちます。
「カプセルトイ」のメーカーで業界2位なのが、株式会社「タカラトミーアーツ」です。この会社では「ガチャ」という名前で商標登録していて、社内には「ガチャ事業部」のなかに「ガチャ企画部」があり、企画1課の課長が、今回の主人公・加藤しずえさんです。
美大を卒業後、おもちゃメーカーでクレーンゲームの景品づくりに携わっていましたが、その後、いまの会社に転職。ガチャ歴13年、大人心をくすぐるガチャ商品を手掛けています。
加藤さんにとって、最初に話題となったヒット作が、2013年・佐川急便のお兄さんをフィギュアにした「佐川男子」のガチャでした。
この後も、加藤さんのヒット作が続きます。日本郵便とコラボした「歴代ポスト」などのガチャ。続いて、「信号機」のガチャ。そして、最大のヒットが「公衆電話」のガチャでした。
「スマホの普及で、公衆電話を使えない世代が多いんです。災害時、公衆電話はとても重宝されたという話を聞いたので、公衆電話のかけ方が擬似体験できるガチャをつくったんです」
公衆電話のガチャは、2020年12月に新たな機種が加わり、累計100万個の大ヒット商品となりました。
さて、売上が伸びる12月に向けて、加藤さんが満を持して企画したガチャとは何でしょうか? それは、誰もが必ず目にしたことのあるものでした。
「会議に出席した営業マンが、みんなポカーンとしていましたね」と笑う加藤さんが、ガチャにするために提案した商品とは……奈良県の老舗サンダルメーカー『株式会社ニシベケミカル』が、40年以上にわたって1000万足以上も製造販売している、通称“ベンサン”こと『便所サンダル』でした。
丈夫で滑りにくく、クッションもよく、工場や厨房、病院などでも活躍する抗菌衛生サンダルで、ロングセラー商品です。「たかが便所サンダルだろう」と言う周囲に、加藤さんは……。
「アパレル業界でいま、このベンサンが大注目されていることを、皆さんはご存知でしょうか? 可愛くアレンジされたベンサンが、8000円という高値で売られているんです。音楽業界でも、人気ロックバンドのメンバーが『ニシベケミカル』のベンサンを履いてステージに立っているのは、音楽ファンの間でも有名な話なんですよ。たかが便所サンダル、されど便所サンダルなんです!」
熱弁をふるう加藤さんですが、すんなりとは企画が通りません。そのうち、「加藤なら判断のつかないものを持って来ても、何とかするだろうから、やらせてみるか」という声が上がり、商品化が決定しました。
緊急事態宣言が解除された6月、30枚の企画書を持って、奈良の『ニシベケミカル』へ挨拶に伺いました。社長さんから商品化許諾を取り付け、工場を見学させてもらうと、改めてクオリティの高さに驚いた加藤さんは、「たとえミニチュアでも手は抜けない」と気を引き締めました。
ミニチュアは、本物を小さくつくればいいというわけではなく、穴の大きさやミシン目の幅を本物よりも大きく調整することで、よりリアルに表現することができるそうです。
「ガチャと関わって13年、数え切れないほど三振をして来ましたが、それだけ打席に立って、やっと変化球にもヒットが打てるようになって来ました」と言う加藤さん。
指の上に乗る小さな『便所サンダル』。カバンにぶら下げられるボールチェーン付きで300円です。果たして加藤しずえさんは、クリーンヒットが打てるでしょうか?
早いところでは12月2日から、全国で順次発売されます。
■株式会社タカラトミーアーツ
『ニシベケミカル ベンサン(便所サンダル)コレクション』
価格:1回300円(税込)/全5種+シークレット2種
発売日:2020年12月上旬
サイズ:本体 約50mm(個包装パック時 約80mm)
商品ホームページ
https://www.takaratomy-arts.co.jp/items/item.html?n=Y887802
番組情報
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