菅総理の真意が共有されていない~政府内にある「いくつかの問題」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月20日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。1月20日から各党の代表質問が始まる今回の国会について解説した。
通常国会~各党の代表質問がスタート
国会では1月20日から菅総理の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まる。今国会では新型コロナ対策が焦点である。政府・与党は本年度の第3次補正予算案や新年度予算案、そして特措法や感染症法改正案の早期成立を目指す。野党側は政府のコロナ対策の遅れや「政治とカネ」の問題を徹底追及する構えである。
飯田)代表質問は20日と21日に衆院が行い、参院は21日と22日に行うことになっています。
2020年の12月半ばから「経済」から「感染対策」にシフトした菅総理~それがメディアに伝わらない理由
鈴木)代表質問は一方通行で資料を見ながら行います。追及する側も答弁する側もそういう感じになります。ですので、本当の突っ込んだやり取りは予算委員会で行われることになります。今回はコロナ国会と言っていいと思います。最近一般のメディアでは、菅総理は経済を進めたいのだけれど、仕方なくGo To を中止したり、緊急事態宣言を出しているというように報じられています。しかし、私は菅政権を取材していて思うのですが、菅さんは去年(2020年)の12月半ばくらいから経済ではなく、感染対策にシフトしようと方向を変えて来ているのではないかと思うのです。
飯田)12月半ばと言うと、Go To を一時停止するくらいの時期から腹を括ったということですね。
鈴木)そう思います。それが政府や官邸のなかで、菅さんの考えていることや思いが共有できていない感じがします。そこから発信されるいろいろな情報から、「菅さんはかたくなだ」とか「緊急事態宣言には慎重だ」というものが記事になっているように感じます。
飯田)「関係者によると」という記事ですね。
官邸、自民党内でパイプ詰まりが起きていて菅さんの情報が共有できていない~「いきなり行く」のが菅流
鈴木)なぜそういうことが起きるのか取材してみると、官邸のなか、自民党などいろいろなところでパイプが詰まっている感じがします。それぞれが情報を共有できておらず、菅さんの考えていることがうまく伝わっていないのです。現場の人間は、菅さんに対してものを言えないでいるため、コミュニケーションが取れていない。
飯田)コミュニケーション不足。
鈴木)原因はいくつかあります。1つは菅さん自身にもあります。菅さんの政治手法を15年間見て来ていますが、前触れなしに「いきなり行く」のです。官房長官で危機管理をやって来たということもあり、政策を通すときに、事前に広げて話すと反対意見が出て議論になると時間がかかります。そこで必要最小限だけ話をして、一気に行くのです。秘話を言うと、75歳以上の高齢者の医療費負担を増やすときに、年収がいくらの人を入れるかということで、公明党は「240万以上」と対象を絞りました。逆に菅さんは170万以上で徴収する人を広げようとしていました。最後にトップ同士の菅さんと公明党の山口那津男さんの2人で話そうと会いましたよね。極端に言うと最初の何十秒かで決まったそうです。菅さんがいきなり「200万で行こう」と切り出した。これは菅流です。200万円は中間ですから、山口さんは「いいでしょう」と言うしかない。流れを一気につくってしまったのです。
飯田)「始め」と言われた瞬間に勝負をかけに行ったのですね。
鈴木)それが菅さんの政治手法なのです。それがいいときもありますが、いまはそれをやると……Go To をいきなり止めると、準備していないので世の中が混乱します。コロナ対策はいきなりやるのではなく、エビデンス含めて国民は情報公開をして欲しいのです。菅さんの手法は、いまは合わない気がします。
飯田)納得する時間がないですよね。
菅総理と各担当大臣とのコミュニケーションが取れていない~分科会の議事録もオープンにするべき
鈴木)そういう意味で、官邸のなか、政府内で混乱が起きます。その辺の菅さんの手法の問題もある。また、現場側からすると、菅さんにものを言えません。菅さんが安倍政権で人事権を持っていたこともあり、官僚が言いにくい状況があります。菅さんは無派閥でみんな距離感があり、なかなか言えない。菅さんにとって重要なのは、西村大臣と加藤官房長官、田村厚労大臣とのコミュニケーションです。この4人のコミュニケーションがどれだけ取れているのでしょうか。緊急事態宣言のときも、西村さんは「広島を対象の準地域と考えている」と言っていたのですが、その2日後に、「やはりダメだ」となりました。普通こんなことは起きません。西村さんはいま全国の知事さんの窓口になっています。例えば小池さんも西村さんは話をよく聞いてくれると言いますが、そこから先が詰まっているのです。だから2日後に「ノー」という話になってしまうのです。そういう詰まっているところを菅さんはきれいにオープンにして、分科会もオープンにするべきです。未だに分科会には議事録がありません。
飯田)緊急事態宣言が出るタイミングのときだけ、呼び込んでカメラで撮らせるというくらいですね。
鈴木)もっとオープンな会議を行い、発信して行くことが必要です。そういうことをやっていれば、菅さんが去年くらいに「経済からシフトして行く」と方向が変わったのだということも広がると思います。マスコミの理解も変わって来ます。詰まっているところが気になります。
飯田)「スパッ」と行きたいとなると、情報管理が徹底されることになるから共有はされない、という悪循環になっているということですか?
鈴木)そう思います。
菅総理はもっとオープンにするべき
飯田)前政権のときは、お昼ご飯を食べたあとにお茶だけは一緒に飲む時間を官房長官と総理と秘書官でつくっていたと話を聞きました。そういう雑談のようなものは意外と重要だったりしますよね。
鈴木)オープンにするべきだと思います。分科会での専門の人たちとの話でも、東京都と大阪府では、専門家が強く厳しいことを言っているのをオープンにしてマスコミに晒しているではないですか。
飯田)ネット中継を入れて生でも観られますね。
鈴木)あれはわかりやすいです。あれを分科会でもやればいいと思います。菅さんにオープンにすることがポイントだと言いたいです。
飯田)そうですよね。かつて経済財政諮問会議もオープンにして、侃々諤々とやっているところを国民に見せることで、「このように政策が決まって行くんだ」と国民がわかったというところがありましたよね。
鈴木)特にコロナは、不信感が募るのでそれが大事なのです。私は第4次補正の可能性もあると思います。菅さんのなかで方向を少し変えているような気がします。
飯田)河野大臣が外国メディアにちらっと言いましたよね。
鈴木)そこは実は大事なポイントです。オリンピックのことしか取り上げられていませんが。
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