ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月3日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。新型コロナウイルスのワクチン接種における、独自の接種体制「練馬区モデル」について、一般社団法人練馬区医師会・会長の伊藤大介を電話ゲストに招き解説した。
ワクチン接種~練馬区モデルとは何か
新型コロナウイルスのワクチン接種について、東京・練馬区が独自の接種体制「練馬区モデル」を発表した。区の医師会と協力して小分けしたワクチンを区内250ヵ所の診療所に運び、個別接種を中心に集団接種も行う体制である。
飯田)全国各地でワクチン接種に向けた体制づくりが進んでいるわけですが、この練馬区モデルについて、一般社団法人練馬区医師会・会長の伊藤大介さんにお話を伺ってまいります。よろしくお願いいたします。
伊藤)よろしくお願いいたします。
飯田)「練馬区モデル」とは、どういう接種体制なのか教えてください。
伊藤)「練馬区モデル」という名前が、1月30日に拡散してしまいました。もともとは我々のなかで、「どのようにすれば、効率よく実効性のあるワクチンを打てるか」ということを検討していました。昨年(2020年)12月の時点で、だいたい2月からワクチン接種が始まり、3月には皆さんに打つ体制を整えなければいけないということでした。
飯田)2月からということは言われていました。
伊藤)当初は、集団接種を念頭に置いてやっていました。しかし、集団接種だけで試算すると、とんでもない数のドクターが参集しなければいけません。また看護師さんや事務も集まる必要があります。しかも、寒い体育館で高齢者の方が待たなければならない状況が想定されました。議論としては膠着しましたが、12月の会議のときに東京都医師会の尾崎先生から、東京都医師会では、「個別接種を主体に考える」という議論が始まっているということをお聞きしました。私たちの考える集団接種と個別接種が逆でした。
飯田)個別接種を主体に。
かかりつけ医の患者さんたちは、かかりつけ医がやるべきだ~デリバリーをどうするか
伊藤)年末年始で各開業医の先生たちがPCRの体制を整えましたので、それに対しての議論はそこで中断しました。お正月が明けてから、練馬区のワクチン担当課長の方たちと再び議論を重ねて行ったときに、「何が問題か」ということを抽出しました。そこで、「個別接種と集団接種を両方やるのがいいのではないか」と考えました。集団接種、個別接種に参加できる先生のアンケートを1週間おきに取り、話を煮詰めて行きました。そのなかで見えて来たことは、「かかりつけ医の患者さんたちは、かかりつけ医がやるべきだ」ということです。30分の待ち時間があっても、待合室でテレビを見ながら待っていただけますし、自宅が近いので、「何かあったら電話をもらう」という関係が築けています。そのように個別接種の考え方を煮詰めて行きました。そのなかでいちばんの問題はデリバリーです。
飯田)どうやって行きわたらせるか。
小分けができることによって、かかりつけ医による個別の接種が可能に~その12時間後にはネットニュースの1面トップに
伊藤)当初案では、デリバリーは1000人単位でないといけませんでした。1本が6人分ですから、それは各先生のところでは無理です。それをどのように分ければいいのか、個別の最小単位がどのくらいか、ということを厚労省に聞いてみなければわからないという話になり、伺いました。そこで厚労省の担当の方が、「小分けができる可能性があるかどうか」をファイザー社と検討することになりました。その結果、温度管理ができれば、小分けは可能だということが判明しました。それが1月29日のことです。その12時間後にはネットの1面に出てしまったという流れです。
温度管理をしながら小分けして各クリニックへ運ぶ
飯田)ポイントになるのは、「どのくらいまで小分けできて温度管理をしながら各クリニックに運べるかどうか」、そこの目処がついた段階で、こういう報道が出たということですね。
伊藤)これは行政との信頼関係で、ワクチンを打つのは、我々開業医の出番ですので、接種することに躊躇はありません。副反応と言っても、多少腫れたり、微熱が出たりすることがありますが、ワクチンは元来そういうものだと認識しています。「デリバリーのことだけを行政の人にお願いする」という議論の役割分担をしたということです。
通常もきめ細かく行われている日本のワクチン接種~これまでの経験が新型コロナワクチンにも活かされる
佐々木)アメリカ、イギリスの報道を見ると、解凍してしまったワクチンの期限が来ても、打つ人がいなくて余ってしまっているケースがあります。その場合、付き添いで来た人にも接種するなどしているようですが、この辺の対応はどうされる予定でしょうか?
伊藤)いまのところ考えていません。250の医療機関のなかで、6人のロットで予約を受け付けます。6人、12人、18人、24人という形で予約してもらうように組みますが、いずれにしても1月29日の段階で、まだ1回しかやっていません。そこで全国にこの話が行き渡ってしまったのです。医師会のなかでも、「練馬区モデルが何か」わかっていない先生もいらっしゃると思います。ワクチンが余るかどうかは、やってみないとわかりません。開業医の方がやっている通常のワクチン接種の状態はきめ細かく、予約を取って人数分のものを1つずつ行って、絶対に間違いがないようにやっています。例えば小児のワクチンで間違いがあった場合、そこでワクチンを接種することができなくなるくらい厳しいルールのなかでやっているので、各先生は慣れていると思います。
飯田)ご高齢の方の肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなど、さまざまなものを間違いなく打つというスキーム全体は、新型コロナウイルスのワクチン接種に対して使える財産がたくさんあるということですね?
伊藤)その通りです。
平行して集団接種も行う
飯田)最終的にはお医者さんたち個人のネットワークのなかで、かかりつけのお医者さんと関係性のある人は、それでフォローできます。そうでない若い人たちは、集団接種を使っていただくか、かかりつけ医を新たにつくるということになりますか?
伊藤)かかりつけ医のところに来ている方たちは、すでにカルテがあります。その方たちが痛がり屋さんなのかアレルギーがあるのか、心配性なのか、だいたいのことはわかっています。そのなかで、ご健康で医療機関にかかられていない方、そして仕事も忙しい方たちには、水曜日、木曜日、土曜日の午後、日曜日。その辺りなら医師の方も集団接種に協力してくれることがアンケートでわかっています。日曜日はすでに100人の先生がエントリーしてくれています。日曜日の午前中4時間、午後4時間を手分けしてやれば、打ちに来てくれる方もいらっしゃるのではないかということで、集団接種も並行してやって行くことを考えています。
佐々木)集団接種の場合、体育館などを使うと思いますが、1日にどのくらいの人数だとお考えですか?
伊藤)1日のうちに1000人くらいの人が来る可能性があります。
佐々木)これは事前に問診はするのですよね?
伊藤)そのスキームはこれからです。いろいろな意味で「安心安全である」ということが議論されていますが、もともとワクチンは安心で安全なもので、将来の健康のためになるものなので、「そこは科学者の人たちに任せましょう」ということです。私たちの使うワクチンは安心安全なもので、ワクチンとしての反応は、打ったところは痛いし、熱が出たり、だるくなることがあるかも知れません。それは「そういうものだということで行きましょう」ということを話しています。問診というよりは、「打つ意思があるか、ないか」の2択に近いかも知れません。
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