ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月4日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。新型コロナウイルス対策を強化する新型インフルエンザ等対策特別措置法などの改正案が参議院本会議で成立したニュースについて解説した。
新型コロナ対策特措法改正案が国会で成立~13日から施行へ
2月3日、新型コロナウイルス対策を強化する新型インフルエンザ等対策特別措置法などの改正案が参議院本会議で採決され、賛成多数で可決、成立した。改正法は3日に即日公布され、13日に施行される。
飯田)罰則規定等々というところが話題となっていまして、新聞各紙が1面トップで報じています。
やればできる「早期の成立」~なぜ、もっと早くやっておかなかったのか
鈴木)感想めいたことを言うと、「やればこんなに早くできるんだな」という話です。
飯田)国会召集が1月18日ですからね。
鈴木)普通、法律改正というのは時間がかかるのだけれど、こんなにスピード感を持ってやれるのであれば、なぜ、もっと早くやっておかなかったのか。去年(2020年)の緊急事態宣言が4月に出たあとにいろいろな問題点が出ていました。知事の権限について、お店に強制力を持って休業できないか、要請ではなく、命じることができるようにして欲しいと。でもその一方で、代わりにきちんとした補償をするべきだと。こういう経験、反省が出て来たのだけれども、結局それをやらなかった。最後のチャンスは、私は去年の臨時国会だったと思うのだけれど、ここも延長することもなくやらなかった。そして、感染者数が大きく増えた。菅さんも「いずれはやる」と言っていたのを、「やる」と言って、そうしたら、与野党が協議をしながら、こんなに短期間でできてしまった。
罰則が「刑事罰か行政罰か」~行政罰に
鈴木)中身について言うと、罰則の「刑事罰なのか、行政罰なのか」というところがポイントになります。簡単に言うと、刑事罰というのは、俗に言う前科者になってしまうわけです。それはちょっと厳しいだろうと。そして行政罰ということになりました。
飯田)過料ということですね。
鈴木)この「罰則付き」というのは去年の7月ごろから、都議会の都民ファーストの会が罰則付きの条例を、「国が動かないなら」ということで動き始めていました。それ以外の都道府県でも、例えば私が取材した福岡でも「罰則付き」という条例を国がやらないのならば、ということで動き始めていた。罰則というのは、地方の現場のニーズとしても早い段階からあったのです。金額など、罰則の効力を発揮させるために注意しなくてはいけませんが、これは方向としてはありなのかなと思います。
「補償、支援」について具体的に書き込むべき~曖昧な「効果的に講ずる」という文言
鈴木)ただ、今回の改正で「罰則、罰則」と言うけれど、罰則とセットで補償にも強制力を持たせるような、国に対して「絶対に補償しろよ」「セットでやれよ」という補償、支援のところをもっと書き込むべきだったと思いました。「当該影響を受けた事業者を支援するために必要な財政上の措置その他の必要な措置を効果的に講ずる」としか書いていないのです。
飯田)かなり曖昧模糊としていますね。
鈴木)曖昧でしょう。「効果的」というのは誰が評価するのか。
飯田)かなり主観的ですね。
事業規模の大きいところでは「1日6万円」では足りない
鈴木)いま、例えば6万円ですよね。
飯田)1日6万円の休業補償をやるということになっていますね。
鈴木)これは、「なぜ6万なのか」と聞くと、菅さんは「東京のいろいろな飲食店などの平均を取って6万」と言うけれど、そうではなく、事業規模によって飲食店も全然違うわけです。
飯田)同じ1日6万円だって、家族経営のお店なら「これで助かるね」となるけれども。
鈴木)「むしろ、いつもよりお金がたくさんあります」と正直に言ってくれる人もいます。しかし、事業規模の大きなところはそうではないのです。
飯田)人を多く雇っていたりすると。
「事業規模に応じて」と入れるべき~早期の再改正を
鈴木)全然足りませんよ。今回の改正で具体的に「何%」ということは書き込めないかも知れないけれども、例えば「平均利益を勘案して」、「収益に応じて」、「事業規模に応じて」など、具体的なことを書き込んで、本当は数字まで見えたらいいと思います。「70%」とか。
飯田)「粗利は補償します」とかね。
鈴木)それくらいのものが必要だったと思います。そこが曖昧な「効果的に」とだけ書かれている。私は今回の特措法で、そこがいちばん問題ではないかと思います。
飯田)「支援するために必要な措置」と考えると、給付か貸付かもわからない。ひょっとしたら無利子で貸し付けるだけで終わってしまうかも知れないし、そういう読み方もできる。
鈴木)できるし、そういう批判が出たとするではないですか。想像がつきませんか?「いや、法律にあるように、いちばん効果的な方法を考えました」で答弁してしまいますよ。何でもありではないですか。だから、一律の額ではなく、先ほども言ったように、事業規模に合わせてパーセンテージで補償するような、そういう仕組みをセットでつくらないといけないと思います。「事業規模に応じて」くらい書き込めるはずですよ。そして、政令でちゃんと定めるとか、そこを私は突っ込んで欲しい。罰則先行になって、セットでやらなければいけないものが遅れている感じがする。ここまで短い時間で、これをやれたではないですか。さらに私が言う部分の再改正も短い時間でやれませんか。やって欲しいですね。
逃げ出した患者への行政罰~病床問題とセットでのメッセージが欲しい
鈴木)あとは病院から逃げ出したら、「そこで行政罰」ということがありますが、病院問題も、いまはそもそも病院に入れないわけです。「入れないものをどうすればいいか」という問題よりも先に、「病院から逃げ出したら罰しますよ」ということが先行しているところも、国民からすると違和感を持つと思います。病床問題もどうするのか。これは、法律改正ではないけれど、病床に関してはセットでメッセージが欲しい。罰則つきの特措法だけがイメージとして先行し、それで「やった感」が出ているということに、私は違和感を持ちます。
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