山田内閣広報官は辞任する必要があったのだろうか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月2日放送)にジャーナリストの有本香が出演。山田真貴子内閣広報官の辞任について解説した。
山田内閣広報官が辞任
菅総理大臣の長男が勤務する放送関連会社から接待を受けた問題で、野党から批判を受けていた山田真貴子内閣広報官は3月1日、辞職願を提出し、辞任が認められた。菅総理大臣は「国会審議の極めて重大な時期にこうした事態に至り、大変申し訳なく思う」と陳謝している。
飯田)政府によると、山田氏は2月28日に体調不良で入院し、2週間程度の加療が必要と診断されたということで、3月1日に辞表を提出し、受理されたということであります。
単に「一業者から接待を受けた」というだけのこと~それによって東北新社に便宜が図られた形跡はない
有本)これは、公務員倫理規程というのでしょうか、これに反することがあれば、もちろん相応の処分は必要だと思います。だけど、この件は、総理の息子さんがそこにいたということを横に置いたとして、接待を受けたということによって、東北新社に特別な便宜が図られたというのであればこれは問題なのですが、そういう形跡がないとすると、単に「一業者から接待を受けた」というだけの話ですよね。それでここまで大騒ぎしますか?
飯田)接待そのものと考えると、特にコロナ前はいろいろなところでありました。
有本)そういうことをいま持ち出して来る。これも週刊誌報道が発端ですよね。ここまで騒いで、しかも、これは収賄ではないわけですよね。
飯田)かつてあったような大蔵省での接待汚職事件とは金額が違う。
有本)違いますよね。金額の問題もさることながら、その後、その特定の企業に対して何か便宜を図ったという形跡がないのであれば、単に過分な接待を受けてしまったという話でしかないわけでしょう。それでここまで大騒ぎをしますか。
飯田)そうですね。
ネットリンチのような山田元内閣広報官への攻撃
有本)それと、山田元内閣広報官の、個人的なことを相当晒してメディアが攻撃しましたよね。私はむしろこれが不適切だと思います。この人が個人として自宅をどう買ったかなど、そういうことまで晒す。また、これはメディアもネットも両方ですけれど、「この人は名誉男性なのだ」と。
飯田)職業の訓示の話を引っ張って来て、「私は飲み会に一切断らずに出ました」というような発言も。
有本)それは、昭和の時代から働いている人のガンバリズムみたいなものでしょう。それを言ったからと全人格を否定するようなことまで言うという、この種のリンチみたいなものですよね。
飯田)1984年に旧郵政省入省という山田さんのキャリアを考えると、男女雇用機会均等法の前ですよね。
有本)私より少し年上です。時代背景を考えれば、この人たちのそうした苦労というものがあったから、女性の地位が上がって来たという部分があるわけです。それをあのように侮辱するというのは、ついこの間まで「女の人を大事にしろ」と言っていた人たちから、なぜこの人への擁護の声が上がらないのかということに、矛盾のようなものを感じます。
飯田)名誉男性という言い方は。
有本)この名誉男性という言い方は、私も言われたことがあるのだけれど、これほど女性を侮辱した言い方はないですよ。
飯田)もともと「名誉~」という言い方は、南アフリカでアパルトヘイトがあったときに……。
有本)名誉白人とかね。
飯田)我々日本人のようなアジア人で、所得の高い人を白人に準ずる扱いにしたという、ある意味の人種差別を容認しながら、というなかで生まれて来た価値観の言葉です。
この問題を扱うことは、国民にとって何の益もない国会の独占
有本)それと、日本が多くの問題を抱えているなかで、ここまで国会の審議時間を独占するほど重要な問題なのかということです。菅総理のご長男が絡んでいたということを問題にしたいわけでしょう。ただ、これもなかなか難しいところで、結局、菅総理側もご長男が絡んでいるということで、山田さんを庇おうとしたのだけれども、庇いきれなかったということです。本来はそれほど大きな問題でもないのに、野党のここ数年の攻め口というのは、安倍政権のときもそうだったのですが、「夫人がどうのこうの」とか、「息子さんが」とか、確かに、あまり褒められた状況ではないということはあります。そういうところを攻め口にすることによって、総理の気持ちを折ろうとする、この戦法ですよね。だけど、これは国民にとって、ほとんど何の益もない国会の独占です。いまそんなことをしている場合なのかなという感じがします。
処分を受けたのは電波行政に絡んでいる人たち
飯田)放送関連会社、東北新社ということで、これは電波行政にも絡むところです。山田さんは旧郵政省の出身です。郵政省がかつては電波行政をやっていた。今回、接待された側というのも旧郵政関係が多いのですよね。
有本)そうなのです。私はこの件、あまり言うと憶測が過ぎると怒られてしまうかも知れませんが、山田さんが昨年(2020年)、NHKに対して、総理が出演されたときの状況がよくなかったということをクレームしたという報道がありました。放送内容に対して直接口を出すことが適切かどうかということには、疑問があります。しかし、行き過ぎたものに対して、特に公共放送である以上は、政治側、あるいは政府側が何かを言うという場面は、あっても然るべきではないでしょうか。それから、今回この一連のことで、局長や審議官たちも同じように処分対象になっているわけですけれども、みんなNHKに厳しい人ばかりなのですよね。むしろ、審議官や局長はいわゆる「NHK改革」に期待されていた方たちと聞いていましたけれども、軒並み、飯田さんがおっしゃったように、電波行政に絡んでいる人たちです。こういう人たちが一連のことで処分を受けるということなのです。何となく、そういう背景は、いろいろ今回のメディアと野党の連合軍で、山田さんをすごい勢いで責め立てたというところと関連しているのかなと、勘ぐったりもします。
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