消費税減税という手段~ポストコロナの経済政策を考える
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月5日放送)にソシエテ・ジェネラル証券 経済分析担当の会田卓司が出演。ポストコロナにおける経済対策について解説した。
コロナ後、低迷した経済から脱するためにはどうするべきか
新型コロナウイルスの感染が収まらない状況にあり、首都圏1都3県の緊急事態宣言も延期される方向ではあるが、ここでは「ポストコロナ」と呼ばれるコロナが収まったあとの経済政策について、会田卓司に訊く。
飯田)ポストコロナと言いながら、緊急事態宣言が継続して行くなかでどうして行くのか、この先どうするべきかということですが。
経済低迷から脱するためには「お金を使う力を強くする」ことが重要~政府がお金を使いそれを補う
会田)まずデフレ、経済低迷を脱するためには、お金を使う力を強くして行くことが重要です。
飯田)お金を使う力。
会田)使う主体は企業、家計、政府なのですが、現状、企業と家計はお金を使う力が弱くなってしまっている。コロナによって体力を削がれている。将来に不安がありますから、政府がそれを補って、お金を使う力を出す、財政政策として、しっかりお金を使って行くということが、デフレ脱却には重要です。
飯田)よく経済政策提言のようなところで出るのは、「稼ぐ力」というところばかりですが、そうではなく「使う力」が重要だと。
会田)使う力が重要です。家計が賃金、所得としてもらうものは、政府と企業がお金を使うものが家計に回って来るわけですから、まず政府と企業がお金を使って家計に所得を回して、未来に対する明るい期待を持たせる。そして企業が新しい商品、サービスを提供すれば、家計がお金を使い、それがまた企業に回って、好循環が生まれて行きます。
飯田)ここでよく国家財政を家計に例えたりする人が陥りがちなのですが、「誰かの支出が誰かの所得につながる」ということは、忘れ去られてしまうことが多いのですよね。
会田)多いと思います。家計の賃金というのは、政府や企業が使ったものから出て来るというところが大事なのです。
この20年間の反省~企業が貯蓄をし、政府がお金を使わないために家計が疲弊してしまった
飯田)企業収益というものは、日本のGDPの6割が内需だと言われる通り、人々が使うことによって、企業の利潤も生まれて来ると。ここも忘れられて、「お金を貯め込めば生活が楽になる」と思い込んでしまっているところがありますが、そうすると、今度はお金が回らなくてどんどん経済が萎んでしまうということですか?
会田)そういうことだと思います。特にこの20年間に、企業が投資をしなくなってしまった。企業は通常、お金を借りて投資をする部門です。現状、日本の企業はお金を貯めています。儲けて得たお金よりも投資が少ないわけですので、企業が投資をする側ではなく、貯蓄をする側になってしまった。ということは、企業の支出をする力、お金を使う力が著しく弱くなっています。となると、もう一歩政府がしっかりとお金を使わないと、家計にはお金が回らなくなってしまう。こういう状況が20年間続いたことによって、家計がどんどん疲弊してしまったというのが、この20年の反省点だと思います。
企業が投資をしなくなったために起きた悪循環
飯田)何を先に立たせるかというのが、難しいのですけれども、かつて高度経済成長期やバブル期のあともそうだったかも知れませんが、「税金で取られるくらいだったら、働く人に還元するか、投資をして経費で計上した方がいいではないか」ということが企業経営者にもあったと聞きます。法人税が下がったことによって、かえってお金を貯め込むようになっていないかと指摘する人もいますが、どうでしょうか?
会田)悪循環に陥っているのだと思います。企業がお金を使わなくなり、当然、景気に下押し圧力がかかる。一方、政府は赤字が心配だということで、それを補って余りある支出を行わなかった。結局、しわ寄せが家計に来た。そうすると、家計が消費を増やせないという状況になる。それが回り回って、また企業の業績を悪化させる。そうすると企業はコストカット、「もっとお金を貯めなくてはいけない」という悪循環に陥ってしまったということだと思います。
政府と企業がお金を使わなければ家計も使えない~企業と政府が動かなければ経済は回らない
飯田)物価の話でデフレスパイラルという話をよくやりましたが、それだけではなくて、心理面の影響というものが全体を押すと、これも大きいのですね。
会田)大きいと思います。20年間、家計は虐げられて来ました。反応関数というものがあります。反応関数というのは、企業と政府が動けば家計は反応するというものです。普通は経済分析ですと、家計の心理として、気持ちが明るくなってお金を使い、景気がよくなって行くのです。家計から物事を分析すれば、経済は分析できるのですが、政府と企業がお金を使えば、その分だけ家計が使えます。しかし、政府と企業が使わなくなると、家計も使えません。とすると、やはり企業と政府がまず動き出さないと、経済が回らないのです。
飯田)そこはアメリカやヨーロッパとだいぶ違うところですよね。
会田)違うところです。アメリカは当然ながら、デフレに陥ったわけではありませんので、まだ家計に力があります。ということは、家計を直接刺激すれば経済は回ります。
飯田)では本末があべこべになってしまって、去年(2020年)、給付金を1人10万円出しましたが、経済が回らないではないかと。麻生財務大臣が「結局あれは貯蓄に回ってしまいますよ」というように批判したのですが、それも20年間の結果がこうなっているということなのですね。
会田)そういうことです。20年間、家計が虐げられて来たことによって、貯蓄ができない体質になってしまった。自分が望むべき貯蓄もない。とすれば、まず入って来たものは貯蓄に行くということです。当然ながら、給付金が貯蓄に回ってしまったということがありますが、私は貯蓄に回ってもいいと思います。理由は、貯蓄が減ることが不安だからです。ある一定のところまで貯蓄が戻って来れば、そこから先は使い出す。そういうところまでの給付がまだなされていないのだと思います。
飯田)そういう意味で、もう1回動き出すためにも、3つの経済主体のうちの政府がまずお金を使って行くことが大事になるということですね。
会田)大事だと思います。
「消費税減税」という手段
飯田)望ましい支出の規模は、難しいと思うのですが、どれくらい出すべきだと思われますか?
会田)規模感は、コロナ対策でどれくらい痛んでいるのかという計測が難しいのですが、いちばん大きなステップは消費税を下げることだと思います。消費税を下げれば、苦しんでいる方々がより救われるということです。消費税は、どちらかと言うと、所得の低い方の負担が大きいという税制ですから、消費税を引き下げることによって、そういう方々の支出を抑制できるということになります。そして裕福な方々の消費の刺激にもなります。さらに、将来に対するコストも引き下げるという見方が増えれば、将来、不安も減って来るということで、消費税減税というのも1つの手ではないかと思います。
飯田)消費税は1%引き下げるのに、2兆~3兆の財源が必要だとよく言われます。ところが、下げるとなると、「教育無償化をやめる」とか「年金を下げる」などの話になりますよね。
会田)消費税も税の一部ですので、国家財政の大枠で考えると、消費税を下げたからと言って、教育や福祉を下げるというのは問題があると思います。
飯田)消費税は「目的税として結びついているから、下げられない」と言う人がいますが、これはどうなのでしょうか?
会田)間違っていると思います。消費税は引き上げたとき、当然ながらその半分は社会保障に使われました。社会保障の充実に使うという目的で上げられましたが、他の半分は財政赤字の削減、借金を返すために上げています。いま借金を返す必要があるかというと、返す必要はない。世界的に財政を出してでも、経済を支えるという状況であれば、その半分は使うというのが筋ではないでしょうか。
飯田)そうしたら、半分下げられますね。
会田)下げられると思います。
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