ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月16日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。79億円の赤字に陥ったHISについて解説した。
HISが79億円の赤字
大手旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS)が3月15日に発表した2020年11月~2021年1月期の連結決算は、売上高が前年同期比80.5%マイナスの388億円、純損益は79億円の赤字だった。
飯田)四半期で79億円の赤字が出るということは、非常に厳しいところです。
アメリカの旅行関連株式の株価指数はコロナ前よりも上昇~日本ではワクチン接種の遅れから期待感がない
クラフト)厳しいですね。緊急事態宣言で制限されていますから、ワクチンが普及するまでは、しばらく厳しい情勢が続くのではないでしょうか。ここで日米の違いが浮き彫りになっています。HISの株価はいまコロナ前の半分になっていますが、アメリカの旅行関連株式の株価指数はコロナ前よりも高いのです。
飯田)そうなのですか。
クラフト)このアメリカの状況は少しおかしいのではないかという感じもありますが、アメリカではワクチンの普及が進み、「出口が少し見えて来た」という期待感から、株価がこの数ヵ月上がっています。しかし、日本ではそんな感じがまったく見受けられない。関係者から聞いたのは、一般のワクチン接種が8月以降、下手をしたら9月までは始まらないかも知れないということですから、日米で比べると、日本はワクチン供給、接種の遅れが出ているという印象があります。
ドル箱だったビジネスクラスの出張~コロナ後も企業は出張しなくなる傾向に
飯田)今回、旅行業や航空サービスは相当痛手を受けていますよね。
クラフト)そうですね。個人的には、旅行観光業界はやがて戻ると思いますが、危惧しているのは、航空会社のビジネス事業、いわゆる「出張」です。ドル箱であるビジネスクラスでの出張が、コロナ禍で出張しなくてもリモートでできるようになり、なくなってしまった。そして、それがスタンダードになりつつあり、出張はコロナが収束してもあまり戻らないのではないかと思います。そうすると、観光業は回復できてもビジネス出張関連の事業はしばらく無理です。そこは再編が必要になるかも知れません。
飯田)そこまで話が行きますか。航空会社のホームページで戯れに料金を見ても、正規で取る料金と割引運賃とではまったく金額が違う。ビジネスユースだと正規料金で取ってくれる。
クラフト)そこのドル箱の収益を糧に、一般の割引をやって集客を増やして行くビジネスモデルが今後は難しくなって来ると思います。企業もコスト削減で、いままで出張していたのがリモートで済むということがわかったので、ビジネス業界のやり方が根本的に変わって来るだろうと思います。
出張がリモートによって今後もなくなる~航空業界は新たなビジネスモデルを構築しなければならない
飯田)航空業界をとってみても、9・11同時多発テロやSARSの流行などで一部、アメリカの「チャプター11」という日本の会社更生法に相当する制度の適用で再編が起こって、デルタとコンチネンタルが一緒になるということもありました。あのような大型合併が今後も起こるということでしょうか?
クラフト)起こると思いますけれども、いままでの「経営難からの合併」とは構造が変わって来る。いままでは同じ構造のなかでよし悪しがあったのが、今回はリモートという社会的な構造が変わるなかで、航空会社等がどうやってビジネスモデルを構築して行くかが問われるのではないかと思います。
飯田)いままではLCCと一般の航空会社(レガシーキャリア)は分かれていて、LCCはどちらかと言うと旅行メインで安く、レガシーキャリアのほうはラウンジをつくったりビジネスクラスを豪華にしたりとお金をかけていた。このレガシーキャリアが厳しくなるということですか?
クラフト)ファーストクラスは富裕層も増えているので残ると思いますが、真ん中のビジネスクラス、ミドルのところでの再編があるのではないでしょうか。そこをどう埋めて行くか。このミドルの収益があったからこそ、低予算LCCの事業にも参入できましたが、今後は厳しい状況が続くだろうと思います。
飯田)日本の航空会社で考えると、国内線で稼ぎ、それを国際線維持に持って行くビジネスモデルもありますが、そこも含めてですよね。
クラフト)それももちろんありますね。それに1週間かけてニューヨークまで出張しなくても、リモートで打ち合わせができてしまうということは、「かなりビジネスの構造が変わったな」という印象を強く受けますね。
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