今後中国経済が苦しくなる「根拠」~覇権争いを急ぐのはその「焦り」からか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月24日放送)に数量政策学者で内閣官房参与の高橋洋一が出演。ウイグルの人権問題について、「ファイブアイズ」の5ヵ国の外相が共同声明を発表したニュースについて解説した。

今後中国経済が苦しくなる「根拠」~覇権争いを急ぐのはその「焦り」からか

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕=2021年3月7日 写真提供:時事通信

ウイグルの人権問題~5ヵ国の外相が中国に対し共同声明を発表

新疆ウイグル自治区の人権問題について、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5ヵ国の外相が共同声明を発表した。5ヵ国は現地で人権侵害が行われているとし、圧倒的な証拠があると指摘している。

飯田)英国圏というか、英語圏のアングロサクソン系の5ヵ国で、「ファイブアイズ」と呼ばれる国々の共同声明です。それとは別に、日本以外のG7各国は制裁も発動するというようなことが出て来ています。

高橋)制裁はファイブアイズの国とEUですね。ブリンケン国務長官が最初に日本に来て、アラスカで米中外交トップ会談をやって、そのあとにベルギーでNATOの会議に行っています。今回はNATOの会議に合わせて、こういう共同声明を発表したのです。これは一連の流れです。日本がいちばん最初に非難決議をしています。その流れを汲んで、EUとファイブアイズまで行き、制裁というところまで来ました。各国、非難決議をしているのですが、そのなかで韓国は非難決議をしていません。日本は非難決議をしていますが、制裁はしていません。そこがファイブアイズやEUと違うところですが、制裁するかどうかは1つのカードなのでしょう。

今後中国経済が苦しくなる「根拠」~覇権争いを急ぐのはその「焦り」からか

新疆ウイグル再教育キャンプと思われる施設=2019年6月2日 写真提供:時事通信

日本には人権だけで制裁を科す国内法がない

飯田)日米2プラス2のあとの共同声明では、台湾の話まで詳密にしています。

高橋)今回はウイグルの話なので、ヨーロッパの人権の話が中心です。人権で制裁を科すということは、ヨーロッパやアメリカでは簡単にできます。日本の場合は、人権だけで制裁を科す法律が国内法のなかにありません。外為法などでは使うことはありますが、人権を表立ってはできません。人権で制裁するということで、ファイブアイズとEUに合わせるのであれば、国内法を直さなければいけないかも知れません。

飯田)アメリカの場合は、「マグニツキー法」と呼ばれる法律があります。

高橋)それでできます。あれはロシアの人がアメリカに来て獄死してしまったことがありました。日本の場合はそういうものがないからこの際、国会で人権のためだけに制裁できる法律をつくるという手はあるかも知れません。

今後中国経済が苦しくなる「根拠」~覇権争いを急ぐのはその「焦り」からか

2021年3月16日、表敬を受ける菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202103/16hyokei.html)

民主主義指数~今後苦しくなる中国経済

飯田)中国に対してどう向き合って行くのかということ、日本はまさにいま真正面です。

高橋)中国とアメリカの新冷戦は、体制間競争と一緒です。非民主主義がいいのか民主主義がいいのかということに帰着します。民主主義と経済成長は関係があります。「民主主義指数」というものがあり、民主主義の度合いは0から10までつけられます。6以上にならないと1人当たりGDP1万ドルを超えることはできません。

飯田)民主主義指数はイギリスのエコノミスト誌が毎年出しています。

高橋)日本は8以上です。6以上にならないと、1人当たりのGDPは1万ドルを超えません。産油国は例外です。あと小国と言って、シンガポールと香港は例外です。そういう意味では、確かな法則で、理論的根拠があります。これでソ連が崩壊するという予測ができたのです。

飯田)これ以上の経済成長はしないと。

高橋)どこかで行き詰まります。例えば軍拡競争ができなくなるとか。今回の米中の覇権争いでも、中国が経済成長しているからいろいろなことができますが、経済成長が止まればできなくなります。「20年以上、1万ドル以上を達成する」には、産油国や民主主義国でなければできません。中国はこれから苦しくなります。

飯田)1人当たりのGDPの1万ドルのラインは、「中所得国の罠」と言いますが。

今後中国経済が苦しくなる「根拠」~覇権争いを急ぐのはその「焦り」からか

中国は2020年10月14日午前、広東省深セン市で深セン経済特区〈SEZ〉設置40周年を祝う盛大な大会を開いた。習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席がこれに出席し、重要演説を行った。〔新華社=中国通信〕写真提供:時事通信社

このままだと将来、1人当たりのGDP1万ドルを超えられない~焦る中国

高橋)その理論的根拠とデータということです。ここから考えると、中国は胸突き八丁なのです。だから中国は焦っているとも言えます。

飯田)2049年には、共産中国の建国から100年になります。そこに向けての覇権争いなのではないかと言われていたのが、ここで25年以上も前に前倒しになったのは……。

高橋)待てないからです。中国の政治体制がいまのままであれば、2049年には、没落したあとの話になります。中国はいまのままだと1万ドルは超えません。

飯田)13億の人口を抱えながら、非民主主義体制でやっていると超えないのですね。

高橋)1万ドルまでは、どんな体制でも行くということはわかりますが、そろそろ1万ドルになって来ているから、これからは難しくなります。今後10年~15年くらいはその境目になります。中国が焦る気持ちがわかります。

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