中国が香港を弾圧する「経済的な背景」~香港選挙制度変更案が可決
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月31日放送)に安全保障アナリストで慶応義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮が出演。全人代常務委員会で変更が決定された香港の選挙制度について解説した。
香港の選挙制度
中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は3月30日、香港政府トップの行政長官と立法会議員の選挙制度を見直す香港の選挙制度変更案を全会一致で可決した。立候補者が中国共産党や政府の方針に従う「愛国者」かどうかを事前に審査するなど、親中派を有利にし、民主派を抑え込む仕組みとなる。
飯田)中国国営の新華社などが報じていますが、前々から言われていた、愛国者という条件が付けられた。香港情勢はまずい方向に行っているように見えますが、どうでしょうか?
部谷)「悪化して、同時に米中関係も悪化する」という悪循環に入っています。アメリカ側が「香港はどうなのだ」と言うと、中国側は「香港をもっと弾圧する」という悪循環になっています。
深圳などの成長で香港の存在が変わって来た
飯田)1990年代に香港が中国に返還されました。そこにはイギリスとの間での共同声明が下敷きになっているということですが、いとも簡単にそれを反故にしましたね。
部谷)それだけ中国の工業が伸びて来たということですね。香港は日本から見ると金の卵を産む鶏で、「なぜフライドチキンにしてしまうのだ」という感じなのですが、隣には深圳などが育って来たので、香港から「民主化をしよう」というイデオロギーが入って来ることへのデメリットの方が大きくなって来たのでしょう。
飯田)「もうこの際一気に」ということになった。
部谷)一気に行けると。そうは言っても、香港の経済的パワーや対外的なものは大きいので、一気にはしないと思いますが、真綿で首を絞めるように、普通の中国の一地方都市にして行くのでしょう。
「経済成長すれば民主化する」ことにはならなかった中国~経済が悪化すれば逆転も
飯田)これに関して旧宗主国であるイギリスやヨーロッパ各国も反応をしています。
部谷)彼らにとってのシンボルですから。
飯田)シンボルですか。
部谷)もともと「中国は経済成長してみんなのなかに入って民主化する」という期待があったわけではないですか。しかし、このような結果になってしまった。
飯田)「寛容政策」と呼ばれたものですね。経済成長すれば、市民が目覚めて民主社会がやって来るはずだった。
部谷)でも逆だった。これは当たり前のことですが、経済成長をしても、初歩的な教育だけをして民主主義の教育をしなければ、逆に独裁主義が強くなるという研究もあります。社会保障はきちんと与えるけれど、高等教育は一部の人に限定するという。
飯田)そうすると、市民の権利などについても言わなくなり、「そこそこ暮らしがよくなったからいいではないか」となる。
部谷)だから習近平さんは一生懸命経済を維持しようとしているのです。それが崩壊してしまえば、逆回転してしまいますから。ですので、一帯一路に無理やり市場をつくっているのです。
飯田)逆に言うと、経済が弱点にもなり得るということですか?
部谷)なり得ます。衣食住を用意できない体制に意味はないですから。
欧米でつくろうとする規格や基準に日本は外されてはいけない
飯田)バイデンさんが26日にイギリスのジョンソンさんと電話会談をしたとき、対「一帯一路」をやるのだと。一帯一路にカウンターを当てて行くということを言ったようですが、この辺は、いいところを突いていますか?
部谷)いいところを突いていると思います。それはテクノロジーの面でもそうで、「大西洋貿易技術評議会をつくろう」という話をEUがバイデンさんに提案しているのです。
飯田)大西洋評議会?
部谷)通信・AI・グリーン技術などで、EUとアメリカだけで今後の新しい技術を変えつつ、規制や基準などの枠組みをつくろうと。
飯田)グローバルスタンダードを。
部谷)それをEUとアメリカの2人でつくってしまおうということです。そうすると日本も標的になるので、これについては気を付けた方がいいとは思います。
飯田)本当にそうですよね。ここに日本は噛んで行かないといけない。技術はあったのに、規格を取られてという。
部谷)日本のいつものパターンですよね。
飯田)そう考えると、中国にとっては急所になるけれども、日本が入って行けるルールのつくり方というのも、ないことはないのですか?
部谷)ないことはないです。日本が一緒に入って、一緒に新しい基準をつくり、共同開発をすることです。政府の方はやっているとは思いますが、もっと積極的に言った方がいいのでしょう。
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