「貿易収支が3年ぶりに黒字」は「3年ぶりに景気が悪い」と読むべき

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月20日放送)に内閣官房参与で数量政策学者の高橋洋一が出演。3年ぶりに黒字となった日本の貿易収支について解説した。

「貿易収支が3年ぶりに黒字」は「3年ぶりに景気が悪い」と読むべき

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

2020年度の貿易収支、3年ぶりに黒字

財務省が4月19日に発表した2020年度の貿易統計(速報)によると、輸出額から輸入額を差し引いた全体の貿易収支は、1兆3070億円の黒字だった。黒字は3年ぶりとのこと。

飯田)全体の輸出額は前年度(2019年)と比べて減ったけれども、輸出も輸入も減り黒字になったということですね。

貿易収支が黒字になっても経済学としては意味がない

高橋)ニュースでは必ず収支の話を書くのですよね。「黒字になった、3年ぶり」と。しかし、貿易収支は差額だから、世界中で考えてみると、半分が黒字で半分が赤字なのです。

飯田)そうですね。

高橋)そうでないと、釣り合わない。相手がある話だから、世界中を全部合わせて見ると、ゼロになるわけです。

飯田)ゼロになる。

高橋)輸出額と輸入額は世界中で見れば一緒だから。ということは、必ずこの差額を見るとプラスとマイナスがあるのだけれど、そういう意味で考えたら、プラスとマイナスに大きな意味があるのかと言われると、あまりないのですよ。はっきり言うと、経済学としてはないわけです。

飯田)意味がない。

高橋)輸出の方が多い国がいい国だと言ったら、あと半分が困るではないですか。

飯田)確かにね。

「貿易収支が3年ぶりに黒字」は「3年ぶりに景気が悪い」と読むべき

【株価ボード】日経平均を示す株価ボード=2021年3月22日午後、東京都中央区 写真提供:産経新聞社

景気の実態を表すのは輸入~「輸入が11.6%減」はすごく悪かったということ

高橋)輸出というのは、「自分の国内で使わない」という意味でしょう。そうすると、国民の観点から見れば、「何で外に出してしまって、国内で使えないの?」という話になり、輸入の方に価値があるのですよ。輸入は消費だから。

飯田)輸入は消費。

高橋)先ほど飯田さんがおっしゃったように、全体の輸出額を見ると、前年度と比べて8.4%減。輸入額を見ると11.6%減で、より輸入の方が下がっているから黒字になるという話なのです。私がいま言ったように、輸入は消費でしょう?

飯田)そうですね。

高橋)国内品を買うと消費になるのです。みんな消費は重要だと言うではないですか。海外品を買うと輸入になるだけなのです。どこから買うかが違うだけ。そうすると、景気により敏感になるということは、消費が敏感だということです。輸入の方が景気に敏感というか、景気の実態を表すのです。そうすると、輸入が11.6%減ということは、すごく悪かったということになるわけです。

「3年ぶりに黒字」は「3年ぶりに景気が悪い」と読むべき

高橋)ニュースを読むと「3年ぶりに黒字」と喜ぶ感じなのだけれど、実は「3年ぶりに景気が悪いでしょう」と、そう読めるのです。これはそう読むべきなのです。黒字や赤字というと、そこだけは反応するのだけれど、この差額の話を全部足し算すると0だから、大した話ではないのです。

重商主義は間違い

高橋)黒字がいいという人は重商主義と言うのです。商業を重んじるという意味ですよね。

飯田)重商主義。

高橋)それはもう間違いであるということなのです。だから経済学の最初の講義で、「黒字? 別に関係ない。赤字? 関係ない」ということを教えます。

飯田)この「黒字、赤字」という言葉のイメージに引っ張られてしまうことがありますよね。

高橋)企業の収益と勘違いしているのですよね。関係ないですけれど。

飯田)関係ない。入りが超えているか、入超か出超かというところがありますよね。

「貿易収支が3年ぶりに黒字」は「3年ぶりに景気が悪い」と読むべき

【新型コロナ 上野公園の桜の花見自粛雑感】花見の宴会自粛を呼びかけている上野公園では、ロープなどが張られ、歩きながら桜を楽しむ人たちがみられた=2020年3月21日午後、東京都台東区 写真提供:産経新聞社

「黒字、赤字」に惑わされてはいけない

高橋)いろいろな国を長期的に見て、ずっと赤字の国もあります。だからといって経済発展しないかというと、関係ないのです。有名な国では、カナダやオーストラリア、デンマークなどは赤字が多いですね。だからといって悪い国ですか? 全然関係ないでしょう。

飯田)関係ない。

高橋)こういうもので惑わされてはいけないのです。「黒字になってよかった」と言う人は大間違いで、中身を見ると、「景気が悪いでしょう」としか言いようがないのです。このように見てください。

輸出が増えたらいいということではない~国内で消費できないので不況になる可能性がある

飯田)今回は2020年度の大筋が出た。3月の数字が出て来たのでそういうことになるのですが、その3月単月の方も「輸出16.1%プラス」と。それで前年同月比で……と書かれてあるのですね。

高橋)去年(2020年)の3月はああいう感じですからね。

飯田)コロナでね。

高橋)こういう数字を見るときに、輸出が増えたらいいと、日本は貿易立国だと言って、小中学校で教えるのだけれど、輸出が増えたらいいかという話ではなくて、輸出というのは経済的に不況になると増える可能性がいつもあるのです。国内で消費できないから。ですからある意味では、そういう全体の数字を見ながら、全体の話を理解した方がいいと思います。

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