バイデン政権が抱える“2つの不安要素”~米大統領が施政方針演説

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月30日放送)に中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が出演。現地4月28日に行われた米バイデン大統領の施政方針演説について解説した。

バイデン政権が抱える“2つの不安要素”~米大統領が施政方針演説

米上下両院合同会議で演説するバイデン大統領(中央)(アメリカ・ワシントン)=2021年4月28日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカのバイデン大統領が施政方針演説

アメリカのバイデン大統領は現地4月28日、上下両院合同会議で施政方針演説に臨み、「21世紀を勝ち抜くために、中国や他の国々と競争している」と述べ、中国への対抗姿勢を鮮明にした。バイデン氏は「専制主義が未来を勝ち取ることはない」と批判し、アメリカが勝利すると強調した上で、「アメリカは再び動き出している」と国家再生を宣言している。

飯田)一般紙は、東京新聞をのぞいて各紙、このバイデン演説を1面で書いておりますが、野村さんはどうご覧になりましたか?

明確に打ち出した中国に対する政策~予想以上に進んでいるワクチン接種

野村)見出しがそれぞれ少し違っていますけれども、中国に対する政策がはっきりと打ち出されたことは、やはり注目点だと思います。さらに、バイデン大統領がここへ来て支持を受けているのは、「ワクチン接種が予想以上の回数を達成できた」ということです。これが追い風になっているのかなという感じはします。

飯田)「政権発足から100日ハネムーン」と俗に言われて、「ここはあまり批判せずに見守ろう」というようなところがありましたが、ここから先ですか?

民主党左派が議会提出した「最高裁の判事を9人から13人に増やす」という法案~バイデン大統領はどこまで抑え込めるか

野村)「この100日間はそれなりのスタートを切った」という評価だと思いますが、今後の政権運営については、厳しい目線も向けられています。1つは、左派の人たちへの対応です。民主党のなかにはバイデンさんたち中道路線の他に、いわゆる左派の人たちがいます。この左派の人たちは、大統領選挙でもかなり力を果たしたので、「私たちをもっと中心に据えろ」という強い声があるわけです。ここをバイデンさんは抑え込んではいるのですが、「我慢ならない」ということなのかも知れませんけれど、今回、議会に対して法案を提出しているのです。その左派の人たちが出した法案というのは、最高裁の判事の数をいまの9人から13人に増やそうという案なのです。

飯田)一気に4人増やそうと。

野村)いまは保守系の判事が3人多いという状態になっているので、ここで一気に4人増やして全員を左派系の人たちにすると、自分たちのいろいろな政策が通りやすくなるということで、相当の力を注ごうとしているわけです。ところが、これは民主党のなかからも批判がありますし、もちろん共和党は反対です。ある意味では、せっかく融和路線へ向かっているのに、分断の新しい火の粉を投げ込んでいるという状況なのです。「これをバイデンさんはどこまで抑え込めるのか」ということがアメリカでは注目されています。

飯田)アメリカ国内の妊娠中絶をめぐる問題や銃規制。これが最高裁マターになって来て、それが保守かリベラルかというところで、最高裁の判事の構成で変わって来るのですよね。

野村)変わって来ます。アメリカの大統領選挙は、ある意味では最高裁判事の取り合いのようなところもあるのです。

飯田)この最高裁判事だけは終身ですよね。

野村)そうなのです。だからいまは、任期をつくろうという意見もあって、「任期をつくって、いま終身になっている保守系の人を辞めさせろ」という過激な意見もあります。

飯田)それはただ、いきなりのルール変更はさすがにまずいだろうと。

野村)「新たに選ばれた人は」ということになると思うのですが、そのような議論のなかで、とにかく最高裁をひっくり返そうという強い動きがあるのです。

バイデン政権が抱える“2つの不安要素”~米大統領が施政方針演説

就任式で宣誓後、手を振るバイデン米新大統領=2021年1月20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

銃規制に踏み込まざるを得ないバイデン政権~ここからまた分断が起こる可能性も

野村)そしてもう1つは、銃の乱射事件が頻発しているので、バイデンさんは銃規制に踏み込まざるを得ない状況なのです。

飯田)28日の演説のなかでもその話が出ていましたね。

野村)しかし、銃規制はご案内の通り、共和党にとってはなかなか認めがたい部分がある。さらに憲法に書かれているという問題もあるので、そう簡単には行かない問題なのです。ただ、結局は融和路線で、どちらかというと共和党の中道の方々と比較的政策がすり寄って来ている状況のなかで、ここにまた分断のくさびが入るということになります。いま封じ込めている、トランプ政権下における分断の状況が吹き出して来る可能性があるのです。ここを見ると、決して「バイデンさんは安泰ではない」という感じがあります。

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