ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月12日放送)に数量政策学者・内閣官房参与の高橋洋一が出演。福島第1原発から出る処理水について、東電と政府が海底にパイプラインを敷設し、1キロ程度の沖合に放出する案を検討しているというニュースについて解説した。
海底パイプライン~1キロ先での放出も直接放出も科学的にはトリチウムの量は大差ない
東京電力福島第1原発から出る放射性物質トリチウムを含んだ処理水をめぐって、東京電力と政府が海底にパイプラインを敷設した上で、1キロ程度の沖合に放出する案を検討していることがわかった。並行して、原発直近の海中に排水する案も検討していて、原子力規制委員会も交えた本格的な協議が来月(6月)にも始まる見通しである。
飯田)5月11日の産経一面がこれを報じていて、各社が追随したというような形ですが、パイプライン。
高橋)1キロ先の沖合ということで、あまり大差ないですけれどね。「やっている感」があるような感じがします。海に放出すると、すぐ希釈されてしまいます。分子レベルで見ると、「どのくらい出せば、どこに行くか」ということは計算できるのです。早いのですよ。だから1キロ先であればどうか、分子レベルで検出するときには、ほとんど大差ないと思います。
飯田)その広がり方というのは。
高橋)早いから。科学的に見ればわかるのですけれど、コストをかけてやることに、どこまで意味があるのだろうかと思ってしまいます。政治的な意味や、いろいろなメッセージなのでしょう。
飯田)そもそも、トリチウム以外は取り除いて、かつ基準値の40分の1まで希釈した上で放出される。
高橋)どこで流しても実は同じですよね。
飯田)科学的に。
高橋)科学的に言えば。だから、これは科学ではない話なのだと推測しますけれどね。
飯田)そうすると、地元、特に漁業者の方々の風評被害の心配などを払拭するため。
風評被害を防ぐには正しい報道をすること~感情論ではなく科学的な説明が必要
高橋)本当は風評被害の話は、別の観点でやった方がコスパはいいと思うのですけれどね。
飯田)別の観点。
高橋)報道をきちんとすれば、風評被害は少なくなると思います。
飯田)これに関して、現場の方々は安全の部分、科学的な証明というところは厳しくチェックしていて、モニタリングもやっていると。
高橋)トリチウム水は自然界にあるものなのです。よしんば放射性物質ということで、影響も少ないというのを説得するということではないですか。やはり感情論になりがちですから、余計、科学的な話できちんと詰めて説明した方がいいと思います。
飯田)数字やエビデンスで。
高橋)理科を勉強しないとわかりにくいのですけれどね。この際、親子一緒に理科を勉強するという感じでやったらいいのではないでしょうか。そこに報道機関も協力して。そうでないとヘイトの原因にもなると思います。ある意味でヘイト、差別なのですよね。言われなき話で。
飯田)言われのないところで忌避されたり。
高橋)科学の話を持って来ないと、差別の話にもつながると思います。これはある意味で福島を差別しているということです。言われのないことですよね。私は科学を信仰する方だから、福島の沖で捕れた魚は食べます。全然平気です。
イオンが一部店舗で「福島鮮魚便」で福島の魚を販売~科学的知識を普及させるのも報道の役目
飯田)大手物流のイオンが、一部の大きな店舗で「福島鮮魚便」というものをやっていて、この海域で捕れた美味しい魚を持って来ています。これが売れるだけではなく、クレームも少ないということです。「皆さん、うまいうまいと買って行きます」ということを聞きました。
高橋)そういうことは、前提に科学知識があった方が楽でしょう。科学知識がありつつ、美味しいとわかったら、「いい」と思うではないですか。報道は「科学知識を普及させる」という意味もあると思います。私は理科の教材のようにして話しています。
飯田)海に出た放射性物質がどういう動きをするか、魚のなかでどういう動きをするかというのも、今回かなりわかったところが多くあります。
高橋)報道されないとわからないでしょう。そういうことを報道するのはいいのですよ。研究結果はたくさんあるから。
飯田)東大の農学部で魚を研究している先生に話を伺ったことがあるのですが、例えばセシウムは、カリウムと同じような動きをする。カリウムは海の魚は溜め込まずに出す。実は食物連鎖のようなもので濃縮が起こるということは、海のなかでは起こらないなど、いろいろな知見があるのですよね。
高橋)そういう知識があると、理解が違うでしょう。大体は「思い込み」が発端なのですよ。
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